積水ハウス鴻池組を連結子会社化:持分法の関連会社から議決権の過半を取り、建築・土木を報告セグメントに立てるまで

更新:

時期 2019年3月
当時の社長 仲井嘉浩
論点 建設事業の取り込み方
概要

2019年3月7日の取締役会で、持分法適用関連会社である鳳ホールディングス(鴻池組の発行済株式すべてを所有する持株会社)を連結子会社化することを決議した。同年10月1日、所有していたA種優先株式の転換請求権をすべて行使して普通株式に転換し、議決権比率は40.82%から51.84%となった。

取得原価は475億17百万円で、企業結合の直前に所有していた普通株式の時価304億50百万円と優先株式の時価170億67百万円からなる。取得原価と取引ごとの取得原価の合計額との差額として、段階取得に係る差益85億98百万円を計上した。

背景

鴻池組とは2015年11月に業務提携を開始した。“住”に関する経営資源と“建築・土木”に関する経営資源を融合させ、マンションやホテル開発等の開発型ビジネスにおける協業や、情報連携による建築請負の受注獲得で成果を積んでいる。

第4次中期経営計画の基本方針「BEYOND2020に向けた“住”関連ビジネスの基盤づくり」が進むなか、協業の範囲を企業・公的不動産の資産価値向上に寄与するCRE・PRE戦略ソリューション事業分野など請負型ビジネスへ広げるには、より強固な関係性の構築が必要と判断した。鳳ホールディングスの規模は2018年9月期で連結純資産806億69百万円、連結総資産2,100億61百万円である。

内容

企業結合日は2019年10月1日、みなし取得日は同年9月30日。法的形式は持分法適用関連会社の優先株式を普通株式に転換することによる議決権比率の変動で、取得企業を決定した根拠も議決権の過半数の取得に置かれた。受け入れた資産は2,294億22百万円、引き受けた負債は1,377億3百万円である。

連結財務諸表に含めた業績は2019年10月1日から12月31日までで、企業結合が連結会計年度の開始の日に完了したと仮定した影響額は売上高1,896億74百万円、営業利益135億77百万円と概算された。同年11月29日から12月27日にかけては非支配株主から株式を取得し、対価90億30百万円に対して資本剰余金が75億27百万円増えている。

含意

建築・土木事業は報告セグメントとして立ち、通年で寄与した2021年1月期は売上高3,028億37百万円、セグメント利益160億51百万円となった。連結総資産は2019年1月期の2兆4,130億35百万円から2020年1月期に2兆6,347億48百万円へ増えている。

2020年10月1日、鴻池組を存続会社、鳳ホールディングスを消滅会社とする吸収合併により持株会社は消滅した。グループの建設事業は鴻池組そのものへ一本化され、積水ハウスと事業会社の間に挟まっていた一層が外れている。

筆者の見解

優先株式が開いた過半

この子会社化で新たな現金がほとんど動いていない点に、案件の性格が表れているとみられる。取得原価475億17百万円の中身は、企業結合の直前に所有していた普通株式と優先株式の時価であり、過半を取るために払った買収代金ではない。持分法で積み上げてきた投資の含みが、段階取得に係る差益85億98百万円として一度に表へ出ただけである。2015年の業務提携から4年、優先株式の転換請求権が行使可能になる日を待って議決権の過半へ踏み出した形で、交渉の相手も価格も当初から手の内にあったことになる。

もっとも、連結で何が変わったのかは慎重に読む必要がある。通期換算した売上高1,896億74百万円は当時の連結売上高の1割に届く規模だが、建築・土木事業のセグメント利益率は5%前後で、住宅事業の水準には遠い。数字の上では、規模を足したぶん採算が薄まる取り込みである。それでも請負型ビジネスへ協業を広げる狙いを掲げた以上、問われるのは利益率ではなく受注の入口が増えたかどうかなのだろう。2020年10月に持株会社を合併で外したのは、その距離を詰める手当てだったと読める。

Yutaka Sugiura, 2026年9月

子会社化の条件

科目 概要 備考
決議 2019年3月7日の取締役会 持分法適用関連会社である鳳ホールディングスの連結子会社化を決議した
被取得企業 鳳ホールディングス株式会社 鴻池組の発行済株式すべてを所有する持株会社。鴻池組は建設工事の請負等を営む
被取得企業の規模 連結総資産2,100億61百万円 2018年9月期。連結純資産は806億69百万円
企業結合を行った主な理由 協業関係の深化・拡大 2015年11月の業務提携以降のシナジーを踏まえ、より強固な関係性が必要と判断した
企業結合日 2019年10月1日 みなし取得日は2019年9月30日
企業結合の法的形式 優先株式の普通株式への転換 A種優先株式の転換請求権をすべて行使し、議決権比率を動かした
取得した議決権比率 51.84% 企業結合前に所有していた比率は40.82%、企業結合日の追加取得は11.02%
取得原価 47,517百万円 直前に所有していた普通株式の時価30,450と優先株式の時価17,067の合計
段階取得に係る差益 8,598百万円 取得原価と、取得するに至った取引ごとの取得原価の合計額との差額
受け入れた資産 229,422百万円 流動資産187,268百万円、固定資産42,154百万円
引き受けた負債 137,703百万円 流動負債117,827百万円、固定負債19,876百万円
連結に含めた業績の期間 2019年10月1日〜12月31日 鴻池組は決算日を9月30日から12月31日へ変更した
通期換算した影響額 売上高189,674百万円・営業利益13,577百万円 期首に完了したと仮定した概算額。この注記は監査証明を受けていない
非支配株主からの追加取得 9,030百万円 2019年11月29日・12月4日・12月27日。資本剰余金が7,527百万円増加した
持株会社の解消 2020年10月1日 鴻池組を存続会社、鳳ホールディングスを消滅会社とする吸収合併

出所:積水ハウス 有価証券報告書 第68期(2019年1月期)【重要な後発事象】・第69期(2020年1月期)【企業結合等関係】・第70期(2021年1月期)【関係会社の状況】

積水ハウス:建築・土木事業のセグメント業績

(百万円) 売上高セグメント利益セグメント資産 備考
2015年1月期 連結前。鳳ホールディングスは持分法適用関連会社で、報告セグメントに区分がない
2016年1月期
2017年1月期
2018年1月期
2019年1月期
2020年1月期 120,9863,730218,571 連結は2019年10月から。売上高は3か月分にあたる
2021年1月期 302,83716,051226,536 通年で寄与した最初の期
2022年1月期 261,93015,146239,315 前期の複数の大型物件売上の反動が出た
2023年1月期 255,02411,826238,410
2024年1月期 269,45612,904267,865
2025年1月期 322,45615,218277,069
建築・土木事業の売上高と利益率
売上高(百万円)セグメント利益率(%)

出所:積水ハウス 有価証券報告書 第69〜74期(セグメント情報)

積水ハウス:連結総資産と有利子負債の推移

(百万円) 総資産有利子負債 備考
2015年1月期 1,929,409174,701
2016年1月期 2,029,794174,038
2017年1月期 2,184,895259,218
2018年1月期 2,419,012363,908
2019年1月期 2,413,035333,478
2020年1月期 2,634,748345,414 受け入れた資産229,422百万円と引き受けた負債137,703百万円を取り込んだ
2021年1月期 2,625,861298,684
2022年1月期 2,801,189355,774
2023年1月期 3,007,537462,875
2024年1月期 3,352,798679,164
2025年1月期 4,808,848934,161 2024年4月に米国のM.D.C. Holdingsを子会社化した影響を含む
総資産と有利子負債比率
総資産(百万円)有利子負債率(%)

出所:積水ハウス 有価証券報告書 第64〜74期(連結貸借対照表)

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出典・参考
  • 積水ハウス 有価証券報告書「第68期(2019年1月期)【重要な後発事象】」
  • 積水ハウス 有価証券報告書「第69期(2020年1月期)【企業結合等関係】」
  • 積水ハウス 有価証券報告書「第70期(2021年1月期)【関係会社の状況】【セグメント情報】」

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