国際石油開発と帝国石油の統合(2005年・INPEXの決断)

更新:
論点 体力差のある2社をどう統合するか
INPEX:業績の推移
売上高(億円)親会社株主に帰属する当期純利益率(%)
石油開発2社の一体化と、共同持ち株会社の設立

何をなぜ決めたか:石油開発2社の一体化と、共同持ち株会社の設立

概要

2005年11月、国内石油・天然ガス生産量首位の国際石油開発と同4位の帝国石油が共同株式移転契約を締結し、2006年4月3日に共同持ち株会社・国際石油開発帝石ホールディングスが設立された経営判断。両社はその完全子会社となり、持ち株会社は東京証券取引所市場第一部に上場した。2008年10月1日には持ち株会社が傘下2社を吸収合併して事業会社となり、商号を国際石油開発帝石に改めている。

背景

国内の南長岡ガス田と関東甲信越に広がる天然ガスパイプライン網を持つ帝国石油と、インドネシアなど海外の開発権益を持つ国際石油開発は役割を分担してきたが、規模の差は大きかった。株式移転で帝国石油の株主に交付されたのは設立時の発行済株式1,919,831.31株のうち438,577.82株で、会計処理でも議決権比率から国際石油開発が取得企業、帝国石油が被取得企業とされてパーチェス法が適用された。石油公団の解散に伴う総合資源エネルギー調査会の答申は、国際石油開発を中核的企業と位置づけていた。

内容

共同株式移転で持ち株会社を設立し、国際石油開発の会長だった松尾邦彦氏(旧通商産業省出身)が会長に、社長だった黒田直樹氏(住友商事出身)が社長に就任した。株式移転比率は国際石油開発1に対し帝国石油0.00144で、両社の財務アドバイザーによる株価動向の調査とDCF分析・NAV分析・貢献度分析を踏まえた協議で決められている。設立にあたっては、国際石油開発が経済産業大臣に発行していた種類株式と同等の内容を持つ甲種類株式1株を、持ち株会社が改めて交付した。

含意

統合初年度の連結売上高は9,697億円で、内訳は原油6,074億円、天然ガス3,329億円、その他の石油・天然ガス関連事業257億円だった。企業結合で計上したのれん1,390億58百万円は20年の定額法で償却し、初年度の償却額は69億77百万円を一般管理費に含めている。豪州イクシスはまだ生産前で、収益は既存の生産権益から出ていた。統合で得た規模と信用力が、2012年12月のイクシスLNGプロジェクトの最終投資決定につながっていく。

いつ何が起きたか 9件
考察:官と民の論理が重なった統合の射程
考察

考察:官と民の論理が重なった統合の射程

この統合が示すのは、資源開発という国の安全保障にかかわる領域で、民間の経営判断と国の政策がどこまで重なり合えるかという問いであったとみられる。規模で見劣りする帝国石油との統合は、市場の論理だけで見れば国際石油開発にとって必ずしも有利とは言い切れない選択だったが、石油公団の解散を受けた答申が国際石油開発を中核的企業と位置づけた文脈に置くことで、初めて合理性を帯びた判断になったといえる。

もっとも、経済産業大臣の甲種類株式を伴う半官半民の統治構造は、資金調達での信用補完という利点と同時に、純民間企業とは異なる意思決定の制約を抱え続けることも意味した。統合から7年後にイクシスの最終投資決定へ踏み切れたのは、この統合で得た規模と交渉力があったからこそだが、国策と企業経営の距離をどう保つかという課題は、統合発足時からこの会社に刻まれたまま残ったと推察される。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
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図と表

INPEX:のれんと無形固定資産、総資産の推移

のれん(百万円)のれん以外の無形固定資産(百万円)
INPEX:のれんと無形固定資産、総資産の推移
(百万円) のれん無形固定資産総資産 備考
2007年3月期 132,105265,8211,608,106 企業結合でのれん139,058百万円を計上し、当期の償却額は6,977百万円
2008年3月期 121,644265,4801,807,900
2009年3月期 114,883253,6801,768,044 2008年10月1日に持株会社が両社を吸収合併し、事業持株会社へ移行した
2010年3月期 108,122239,2052,013,778
2011年3月期 101,362249,1102,680,379
2012年3月期 94,601233,3173,066,397
出所:国際石油開発帝石ホールディングス 有価証券報告書 第1期〜第2期(連結貸借対照表) / 国際石油開発帝石 有価証券報告書 第3期〜第6期(連結貸借対照表、主要な経営指標等の推移)
出所:国際石油開発帝石ホールディングス 有価証券報告書 第1期〜第2期(連結貸借対照表) / 国際石油開発帝石 有価証券報告書 第3期〜第6期(連結貸借対照表、主要な経営指標等の推移)

統合の条件

統合の条件
科目 概要 備考
企業結合の法的形式 株式移転による共同持株会社の設立 国際石油開発と帝国石油がともに完全子会社となる共同株式移転
企業結合日 2006年4月3日 2005年11月に共同株式移転契約を締結し、2006年1月の臨時株主総会で承認
会計上の取得企業 国際石油開発 議決権比率から取得企業と判定し、帝国石油を被取得企業とするパーチェス法を適用
被取得企業 帝国石油 事業の内容は石油・天然ガスの探鉱、開発、生産、販売
株式移転比率 国際石油開発1:帝国石油0.00144 両社の財務アドバイザーによる株価動向の調査、DCF分析、NAV分析、貢献度分析に基づく
帝国石油株主への交付株式数 438,577.82株 設立時の発行済株式総数1,919,831.31株のうちの交付分
交付株式の評価額 1株809,200円 持株会社株式が未発生のため、主要条件の合意公表日前5日間の取得企業平均株価による
取得した議決権比率 100%
取得原価 355,756百万円 交付したとみなした取得企業株式の時価354,897百万円と取得に要した支出859百万円
受け入れた資産 463,750百万円 流動資産65,864百万円、固定資産397,885百万円
引き受けた負債 105,675百万円 流動負債28,156百万円、固定負債77,519百万円。ほかに少数株主持分2,318百万円
のれん 139,058百万円 鉱業権・生産用資産、開発操業の技術力、パイプライン網等を一体評価した超過収益力
のれんの償却 20年の定額法 第1期の償却額は6,977百万円、期末残高は132,105百万円
経済産業大臣への甲種類株式 1株を交付 国際石油開発が発行していた種類株式と同等の内容を持株会社が改めて発行した
甲種類株式の拒否権 取締役の選解任など6事項 ほかに重要資産の処分、定款変更、統合、資本の減少、解散。株主総会の議決権はない
経済産業大臣の普通株式保有 発行済普通株式の29.35% 第1期有価証券報告書の提出日現在。国との間に役員派遣による支配関係はない
事業会社化(第2段階) 2008年10月1日 2008年4月28日の取締役会で決議し、同日に吸収合併契約を締結した
第2段階の会計処理 共通支配下の取引 完全子会社との簡易合併のため新株の発行、資本金の増加、合併交付金はない
出所:国際石油開発帝石ホールディングス 有価証券報告書 第1期(2007年3月期)【企業結合等関係】・国際石油開発帝石 有価証券報告書 第3期(2009年3月期)【経営上の重要な契約等】【企業結合等関係】
出所:国際石油開発帝石ホールディングス 有価証券報告書 第1期(2007年3月期)【企業結合等関係】・国際石油開発帝石 有価証券報告書 第3期(2009年3月期)【経営上の重要な契約等】【企業結合等関係】
参考文献

参考文献

参考
  • 株式会社INPEX 有価証券報告書【沿革】
  • 株式会社INPEX 有価証券報告書(連結損益計算書)
  • 国際石油開発帝石ホールディングス 有価証券報告書「第1期(2007年3月期)【企業結合等関係】」
  • 国際石油開発帝石ホールディングス 有価証券報告書「第1期(2007年3月期)【株式の総数等】【事業等のリスク】」
  • 国際石油開発帝石ホールディングス 有価証券報告書「第1期(2007年3月期)【業績等の概要】【関係会社の状況】」
  • 国際石油開発帝石 有価証券報告書「第3期(2009年3月期)【経営上の重要な契約等】【企業結合等関係】」
  • 国際石油開発帝石 有価証券報告書「第6期(2012年3月期)【主要な経営指標等の推移】【連結貸借対照表】」

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