この判断の核にあるのは、雇用を守るという約束を事業の設計で裏づけようとした点にある。稼動しない技術者を抱えたまま景気の谷を越えるには、谷でこそ稼ぐ商売が要る——理屈としては筋が通っており、再就職支援は逆相関の候補として自然な選択であった。ただ、逆相関を成立させるには、買った事業が独立して黒字を計上し続ける必要がある。日本DBMがキャリアサポート事業として計上したのは営業損失であり、好況期にはその赤字が本業の利益を削る側に回った。景気の谷に備える資産が、平時には負債のように振る舞っただろう。
結果として、メイテックの景気耐性は多角化ではなく本業の内部で組み直された。リーマンショック後に非稼動社員が2300名へ膨らんだときも人員削減は選ばれず、その後は稼動率と対価の管理、そして厚い手元資金によって危機への備えが積み上げられた。買収から譲渡までの5年は、事業を買い足す方向での解決が、少なくともこの会社では続かなかった経過を示している。守りたいものが雇用であるとき、守り方は事業の数を増やすことなのか、それとも本業の値付けと財務の厚みなのか——後年の総還元性向100%という利益配分の方針まで含めて、この問いは同社の判断のなかで繰り返し現れているようにみえる。