焼肉のたれという商品を自ら作り出した会社が、その成功の資金で次の柱を探した経緯そのものは、成長の作法として珍しいものではない。ただエバラ食品工業の場合、選ばれた先が冷凍食品・広告・外食・米国と広く散り、いずれも精肉店と食品問屋という自社の販路や、たれの味を作る技術と直接には結びついていなかった。大手スーパーが指摘した、たれ以外ではマーケティング力が劣るという評価は、商品の力ではなく、届け方の力が特定の商品と結びついていたことを指していたようにも読める。
撤退の判断そのものは早い。米国は8年、外食は11年、冷凍食品も損失の累積を待たずに他社へ渡している。長く抱えて傷を広げるより、収益貢献を見通せない段階で手放す運びが繰り返された。一方で、広げるより絞る選択を続けた結果、連結売上高は20年にわたり500億円前後にとどまっている。稼ぐ力のある狭い市場を持つ会社が、その外側へどこまで出るべきか——2020年代の東南アジア展開や業務用周辺の買収にも、同じ問いが引き継がれているのだろう。