ボーダフォン(現ソフトバンク)(旧)日本テレコムの吸収合併:二社体制を解き、国鉄の通信網を継いだ鉄道通信を器に残して名だけを相手から受け継いだ一本化

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時期 1989年5月
論点 二つの第一種電気通信事業者の並立と、事業を担う法人の一本化
概要

1989年5月1日、鉄道通信は(旧)日本テレコムを吸収合併し、同日付で商号を日本テレコムへ変更した。存続したのは、日本国有鉄道の分割民営化に伴い1986年12月に資本金32億円で設立され、1987年4月に国鉄の基幹通信網を承継した鉄道通信のほうである。

消滅したのは、1984年10月に設立され1985年6月に第一種電気通信事業許可を得ていた(旧)日本テレコムで、社名だけが存続会社へ引き継がれた。器は通信網を持つ側に残し、名は先に立った側から受け取る形をとっている。

背景

(旧)日本テレコムは1984年10月に設立され、翌1985年6月に第一種電気通信事業許可を取得していた。遅れて1986年12月、日本国有鉄道の分割民営化に伴い、電話サービスと専用サービスの提供を目的として鉄道通信が資本金32億円で設立される。

鉄道通信は1987年3月に第一種電気通信事業許可を取得し、翌4月に国鉄から基幹通信網を承継して営業を開始した。免許を先に持つ会社と、全国に張られた物理網を持つ会社が、同じ事業許可のもとに並び立った。

内容

合併期日は1989年5月1日。合併会社は鉄道通信、被合併会社は(旧)日本テレコムで、存続会社である鉄道通信が同日付で商号を日本テレコムへ変更した。合併前後の同名の会社を区別するため、以後の会社の記録では合併前の会社名に「(旧)」の文字を冠している。法人としては鉄道通信が続き、期の数え方も同社の設立から途切れずに続く。2025年3月期が第40期にあたり、第1期は国鉄の網を継いだ1987年3月期である。合併比率・合併交付金・承継した資産負債の額は、会社の公表資料に記載がない。

含意

一本化の2年後、1991年7月に携帯・自動車電話事業への参入を目的として東京デジタルホン(関連会社)が設立され、固定と移動の二本立てが始まる。1994年9月に東京証券取引所市場第二部・大阪証券取引所市場第二部へ上場、1996年9月に両取引所の第一部へ指定替え、1997年10月には日本国際通信を吸収合併した。

国鉄由来の物理網を持つ法人が日本テレコムの名で固定通信の一極となり、その資産の形が、のちに外資が支配権を取りにくる器となった。

筆者の見解

残ったのは、名ではなく網だった

この合併で残ったのは、名ではなく網だったとみることができる。先に免許を得たのは(旧)日本テレコムで、設立も2年早い。それでも法人として生き延びたのは、国鉄の分割民営化に合わせて作られ、線路沿いの基幹通信網をそのまま承継した鉄道通信のほうであった。通信事業で新規参入者が最も金と時間を要するのは全国の伝送路を敷くことで、それを国有財産の承継という形で手にしていた会社を消す理由はない。器は網を持つ側に残し、市場で通る名は相手から受け取る。二社を並立させたまま役割を分ける道を捨て、資産の側から法人を選んだ判断だった。

もっとも、会社が残しているのはこの骨格だけである。合併比率も交付金も、承継した資産負債の額も、公表資料に残るのは日付と商号の変更だけで、条件の数字は残っていない。判断の当否を当時の財務で検証する材料はない。代わりに残ったのは、鉄道通信の設立から数えた期が一度も途切れていないことである。2025年3月期は第40期にあたり、その第1期は国鉄の網を継いで営業を始めた1987年3月期になる。商号はその後も幾度となく変わったが、法人としての起点は、いまも網を継いだ年度に置かれている。

Yutaka Sugiura, 2026年9月

合併の条件

科目 概要 備考
合併会社(存続会社) 鉄道通信 1986年12月に資本金3,200百万円で設立。国鉄の基幹通信網を承継した会社
被合併会社 (旧)日本テレコム 1984年10月設立。1985年6月に第一種電気通信事業許可を取得していた
合併の法的形式 吸収合併 鉄道通信を存続会社とし、(旧)日本テレコムは合併により消滅した
合併期日 1989年5月1日
合併後の商号 日本テレコム 存続会社が合併期日と同じ日付で鉄道通信から商号を変更した
商号の区別 合併前の会社名に「(旧)」を付す 合併前後の同名の会社を明確に区別するための表記として続いている
存続会社の設立時資本金 3,200百万円 1986年12月の設立時の額。合併後の資本金は公表資料に記載がない
期の連続性 鉄道通信の設立から連続 2025年3月期が第40期。第1期は営業を開始した1987年3月期にあたる
合併比率・合併交付金 記載なし 会社の公表資料に、合併の対価に関する記載がない
承継した資産・負債の額 記載なし 会社の公表資料に、承継した資産負債の額に関する記載がない

出所:ソフトバンク 有価証券報告書 第40期(2025年3月期)【沿革】・ボーダフォン 有価証券報告書 第20期(2006年3月期)【沿革】

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出典・参考
  • ソフトバンク 有価証券報告書「第40期(2025年3月期)【沿革】」
  • ボーダフォン 有価証券報告書「第20期(2006年3月期)【沿革】」
  • ボーダフォン 有価証券報告書「第20期(2006年3月期)【主要な経営指標等の推移】」

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