USEN-NEXT HOLDINGSU-NEXTがUSENを吸収合併し持株会社体制へ移行した経営統合
7年前に売った側と買われた側を、ひとつの持株会社の下へ組み直す
- 概要
- 2017年12月1日、U-NEXTを吸収合併存続会社、USENを消滅会社とする吸収合併を行い、商号を㈱USEN-NEXT HOLDINGSへ変更した。同日、両社の事業を6つの承継会社へ吸収分割し、持株会社体制へ移った。
- 背景
- 2010年の連続子会社売却でUSENとU-NEXTは同じ人物が率いる別法人となっていた。USENは約75万事業者の店舗顧客を抱え、U-NEXTは2015年12月に東証一部へ市場を変えた定額制動画配信の事業者であった。
- 内容
- USENの普通株式に対しU-NEXTの普通株式43,572,011株が割り当てられ、発行済株式は16,425,600株から60,057,011株へ増えた。同日付の減資で資本金は16億86百万円減少(減資割合94.7%)し、9,445万円となった。
- 含意
- 統合後の報告セグメントは店舗サービス・通信・業務用システム・コンテンツ配信・エネルギー・メディアの6区分に組み替えられた。決算期も12月から8月へ移り、統合後最初の第11期は8か月の変則決算となった。
存続会社になったのは、売れ残った側であった
数字の並びだけを見ると、この統合は上下が逆に見える。2017年12月期の売上でU-NEXTは1,143億円、店舗顧客約75万事業者を抱えるUSENのほうが古く、大きく、名前も通っていた。それでも吸収合併の存続会社になったのはU-NEXTで、消滅したのはUSENであった。割当交付された43,572,011株が示すとおり、統合後の持株会社の株式の多くは旧USENの株主が持ち、存続する法人格だけがU-NEXTの側に残った形になる。
一方で、束ね直された中身は解体前とよく似ている。店舗へ複数の商材を売る営業と、個人へ月額で配信する事業を同じグループに置く構図は、2008年に人材・映画配給・動画配信・有線放送を並べていた頃と重なる。違うのは、事業の関連を店舗顧客という具体的な接点で縛った点と、7年かけて別会社として実績を積んだ側が存続会社になった点であった。2024年4月、持株会社の名前からUSENの5文字が消え、U-NEXT HOLDINGSになった。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
背景
別法人として並んだ7年
2010年12月、USENはテレビ向け有料映像配信と個人向け光回線の販売代理店事業を会社分割でU-NEXTへ承継させ、そのU-NEXT株式200株を宇野康秀氏へ譲渡した。以後の7年間、有線音楽放送を担うUSENと、定額制動画配信を担うU-NEXTは、同じ人物が率いる別々の会社として並んだ。U-NEXTは2014年12月に東証マザーズへ上場し、2015年12月には東京証券取引所市場第一部へ市場を変えている[1][2]。
二社の顧客は種類が違った。USENは店舗向けの音楽配信を軸に、通信回線、業務用の精算機、2016年4月の電力小売自由化を機に始めた新電力までを売る会社で、月額契約の店舗顧客は約75万事業者にのぼった。U-NEXTは家庭と個人に月額1,990円で映画・ドラマ・アニメを配信する会社で、2015年12月時点の連結売上高は339.6億円、そのうちコンテンツ配信を担う事業の売上は120億円であった。片方は法人の店、片方は個人の世帯を相手にしていた[3][4]。
束ねる相手を選ぶ理由
動画配信の側から見れば、外資の参入が進んでいた。Netflixは2015年9月に日本でサービスを始め、Amazon Prime Videoも同時期に配信を広げた。U-NEXTは国内のテレビ局・映画配給会社・出版社と直接交渉して番組と書籍を集める調達網を持ち、和製の作品をまとめて配信できる位置にいたが、単独で会員を積み増すには宣伝と調達の両方に資金が要る。売上339.6億円の規模では、投資の速度に限りがあった[5]。
店舗の側から見れば、売る商材を増やすほど1店舗あたりの月額が積み上がる関係にあった。USENは音楽配信の営業網で店舗の開店に立ち会える会社で、そこへ通信回線、POS、電力を重ねて売る形をとっていた。二社を一つのグループにすれば、店舗の営業と個人向け配信の会員基盤を同じ勘定のなかに置ける。宇野康秀氏は2009年からの解体期を経て、この二つを別々に持ち続ける形をやめる側へ動いた[6]。
決断
2017年12月1日の吸収合併
統合の形式は、規模の小さい側を存続会社とする吸収合併であった。2017年12月1日、U-NEXTを吸収合併存続会社、USENを吸収合併消滅会社とする吸収合併が効力を生じ、存続会社の商号は㈱USEN-NEXT HOLDINGSへ改められた。USENの普通株式に対して割当交付されたU-NEXTの普通株式は43,572,011株で、発行済株式総数は期首の16,425,600株から60,057,011株へ増えた。新しい持株会社の株式の7割超は、旧USENの株主が持つ計算になる[7]。
同日、資本金の側でも処理が行われた。減資の効力が発生して資本金と資本準備金を減らし、その他資本剰余金へ振り替えたうえで、その一部を繰越利益剰余金へ移して欠損を埋めた。資本金は16億86百万円減り、減資割合は94.7%、統合後の資本金は9,445万円となった。資本剰余金も15億86百万円減っている。統合と同時に、過去の累積損失を貸借対照表から落とす作業が済まされた[8]。
6社へ分けたうえで持株会社に置く
合併は事業を一つの法人へ集める操作ではなかった。同じ日に、旧U-NEXTの事業は㈱U-NEXT分割準備会社(現㈱U-NEXT)、㈱USEN NETWORKS、㈱USEN-NEXT LIVING PARTNERSへ、旧USENの事業は㈱USEN分割準備会社(現㈱USEN)、㈱USEN Media、㈱USEN ICT Solutionsへ、それぞれ吸収分割で承継された。合併存続会社は事業を持たない持株会社となり、その直下に6社が並ぶ構成へ移った[9]。
経営陣の配置も統合に合わせて組み直された。宇野康秀氏が持株会社の代表取締役社長CEOに就き、楽天野球団社長を経て2017年1月にU-NEXT特別顧問となっていた島田亨氏が取締役副社長COOへ、2009年から旧USENで財務再建にあたった馬淵将平氏が常務取締役CFOへ配された。島田氏は宇野氏が1989年にインテリジェンスを設立したときの共同創業者の一人であり、2010年に手放した会社の関係者が持株会社の役員として戻った形になる[10][11]。
結果
6セグメントと8か月の決算
統合の翌期から、報告セグメントは店舗サービス・通信・業務用システム・コンテンツ配信・エネルギー・メディアの6区分になった。従来のコンテンツプラットフォーム、コミュニケーションネットワーク、音楽配信、業務用システム、ICTなどの区分は置き換えられている。あわせて決算期が12月から8月へ移されたため、統合後最初の第11期は2018年1月1日から8月31日までの8か月となり、この期の連結売上高1,079億円・営業利益60億円は12か月分の数字ではない[12][13]。
12か月をそろえた最初の期は2019年8月期であった。連結売上高は1,758億円、営業利益は82億円で、8か月の前期からは規模が一段上がっている。負債の水準も統合前とは異なり、2018年8月期末の長期借入金は715億34百万円、短期借入金と1年内返済分を合わせた借入金等の合計は793億50百万円であった。返済期限は2019年から2024年に置かれ、平均利率は長期借入金で1.5%であった[14][15]。
店舗と会員を同じ表に載せる
統合後の営業は、店舗1件あたりに売る商材の数を増やす方向へ動いた。契約商材数を1.4から2へ引き上げる目標が掲げられ、音楽配信の顧客へ通信回線、POS、電力、監視カメラ、決済が重ねられた。2018年6月にラカラジャパン、同年8月にリクルートと業務提携し、同年10月には音楽配信のキャンシステムの全株式を取得している。キャンシステムの取得原価は50億70百万円で、現金及び預金15億円と貸付金35億70百万円で構成された[16][17]。
配信の側は、統合後にコンテンツの調達をさらに広げた。2023年3月にParaviを運営するプレミアム・プラットフォーム・ジャパンを完全子会社化し、同年6月にU-NEXTがTBSホールディングスと資本業務提携を結んで両サービスを統合、会員は400万人規模に達した。2024年4月には持株会社の商号がU-NEXT HOLDINGSへ改められ、1961年の創業以来62年使ってきたUSENの名が持株会社名から外れている。2025年8月期の連結売上高は3,904億円、営業利益は316億円であった[18][19]。
- USEN-NEXT HOLDINGS 有価証券報告書(2018年8月期)
- USEN-NEXT HOLDINGS 有価証券報告書【沿革】
- USEN-NEXT HOLDINGS 経営統合プレスリリース(2017年6月19日)
- USEN-NEXT HOLDINGS 2025年8月期 決算説明会 質疑応答(2025年10月12日)
- U-NEXT HOLDINGS「商号変更に関するお知らせ」(2024年)