この譲渡の目的は資金の回収ではなく、事業ポートフォリオの境界を確定させることにあったとみられる。受け取った対価は1,276百万円で、これに対し関係会社株式売却損2,159百万円を特別損失へ計上している。対価より移転損失のほうが大きく、譲渡そのものは連結の損益を押し下げた。譲渡の翌月に始まる中期経営計画「Yamaha Management Plan 125」は事業領域を再定義し、楽器・音楽・音響をコア事業と定めている。住宅設備は、その定義の外側に置かれた最初の事業だった。同じ年度にマグネシウム成形部品事業からも撤退しており、選択と集中は1事業の処分にとどまっていない。
もっとも、分離の設計には割り切れない部分が残る。譲渡したのは議決権の85.1%で、14.9%は譲渡後も保有し、投資有価証券として計上している。譲渡先が事業会社ではなく日本産業パートナーズの管理・運営する投資事業有限責任組合であった以上、この持分は事業上の結びつきを保つためのものではなく、譲渡先での再建の成否に対する持分としてしか説明できない。加えてリビング事業は譲渡直前の2010年3月期に営業利益365百万円を計上し、前期の営業損失305百万円から黒字化している。損益が改善した期に売却を決めており、値がつくうちに事業領域の線を引いたと推察される。