第一三共 アストラゼネカと提携 提携相手と組んだエンハーツの世界展開と、がん事業への転換

更新:

時期 2019年3月
当時の社長 眞鍋淳
論点 がん事業への転換と提携の設計
何をなぜ決めたか
背景

2005年の三共・第一製薬の統合で生まれた第一三共は、次の収益源を探していた。自社のADC技術から創製したDS-8201はHER2を標的とし、がん細胞に薬物を直接届ける仕組みで高い有効性が期待された。ただ全世界での大規模な開発・商業化には巨額の投資とリスクを伴った。

内容

提携では、日本を除く全世界でエンハーツを共同開発・商業化し、利益と開発・販売費用を両社で折半、第一三共が製造・供給を担う。アストラゼネカのがん領域の開発・販売基盤を得る一方、単独保有なら総取りだった利益の半分を渡す設計で、リスクとリターンを分け合った。

含意

エンハーツは乳がんなどで適応を広げ、第一三共の業績を牽引した。2025年3月期は前期比17.8%の増収、当期純利益は47.3%の増益と好調だった。もっとも利益折半ゆえ成長の果実はアストラゼネカと分け合う構造で、続くADC群の育成が次の課題となる。

いつ何が起きたか 7件
筆者の見解
筆者の見解

自社の技術を、速さと引き換えに世界へ

この提携の核心は、第一三共が自社で創り出したエンハーツを、あえて単独で世界展開せず、利益を折半してでもアストラゼネカと組んだ点にある。がん領域での世界規模の開発と販売には、巨額の資金と、各国の当局対応や販売網が要る。経営統合の後に次の収益源を探していた第一三共にとって、その負担とリスクを一社で抱えることは重かった。利益の半分と引き換えに、開発の速さと世界での到達範囲を買った判断だったといえる。

もっとも、リスクを分け合う設計は、成長の果実も同じように分け合う。エンハーツが世界で伸びるほど、その利益の半分はアストラゼネカへ渡り、販売の拡大に伴う費用の折半も第一三共の利益率を抑える。次の課題は、エンハーツに続くダトロウェイなどのADC群を、より自社の取り分が大きい形で育てられるかにある。自社の技術を世界へ届ける速さと、その果実をどれだけ手元に残せるか——エンハーツの提携は、その二つの間で交わした取り引きだった。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
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参考文献
出典・参考
  • 第一三共 プレスリリース(2019年3月29日)「トラスツズマブ デルクステカン(DS-8201)に関するアストラゼネカとのグローバル開発及び販売提携のお知らせ」

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