不正手形取引と社内カンパニー制の導入(1999年・ニチメンの決断)

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ニチメン:業績の推移
売上高(億円)経常利益率(%)
最大100億円の回収不能懸念を機に進めた、撤退基準の統一と営業組織の集約1999年4月28日、ニチメンが自社の振り出した約束手形を使う複雑な金融取引に巻き込まれていたことが判明した一件と、その後の立て直し。6月25日時点の債権残高は約100億円にのぼり、渡利陽社長はこれを最大100億円の回収不能のおそれがある債権と認めて、回収と社内管理の厳格化を約した。中期経営計画で掲げていた事業の仕分けは、撤退基準の統一と営業組織の集約を経て、2000年4月の社内カンパニー制に行き着いた。

何をなぜ決めたか:最大100億円の回収不能懸念を機に進めた、撤退基準の統一と営業組織の集約

概要

1999年4月28日、ニチメンが自社の振り出した約束手形を使う複雑な金融取引に巻き込まれていたことが判明した一件と、その後の立て直し。6月25日時点の債権残高は約100億円にのぼり、渡利陽社長はこれを最大100億円の回収不能のおそれがある債権と認めて、回収と社内管理の厳格化を約した。中期経営計画で掲げていた事業の仕分けは、撤退基準の統一と営業組織の集約を経て、2000年4月の社内カンパニー制に行き着いた。

背景

ニチメンは1998年4月から3か年の中期経営計画NEW CREATE 2000(NC 2000)を進めていた。事業部門ごとに育てる・移す・やめるの三択を迫り、本社人員を2,100人から1,800人へ、連結有利子負債を1兆5,200億円から1兆3,000億円へ減らす目標を掲げた。与信の面でも1998年11月に独自の格付け制度と格付け別の貸出金利の指針を入れ、関係会社の定期監査の仕組みを設けていた。1999年3月期は株式の含み損を処理する売却・評価損273億円などで、218億円の連結純損失となった。手形取引が明るみに出たのは、この決算期の締めの直後である。

内容

1999年6月、事業から撤退する基準を全社で統一し、複数のリスクに上乗せの利率を課す事業投資の指針を適用した。10月には営業本部を14から12へ、部を59から36へ、課を123から73へ集約した。

2000年4月には社内カンパニー制を導入し、営業の社内カンパニー3社と投資・マーチャントバンキングセンターを開設し、管理部門を仮想本社とした。資本を各カンパニーに割り当て、業績の評価を損益から経済付加価値(EVA)の基準へ移し、各カンパニーに自らの事業を育成・維持・撤退へ仕分けさせる。渡利陽社長は総合商社のこれまでを『全体で収益が上がっていれば、各部門の収支管理が甘くなるところもあった』と認めている。

いつ何が起きたか8件
筆者考察
考察

考察:減らすことで管理する

手形の一件は、独自の格付け制度を入れ、関係会社の定期監査を設けてから半年足らずで発覚した。仕組みを足しても止まらなかった以上、渡利陽社長の答えが点検の上乗せではなく、商いの数と組織の段を減らす方向へ向かったのは筋が通っていたと思われる。部と課を4割ほど削減し、カンパニーごとに資本を背負わせて、採算の合わない商いを自ら仕分けさせる。どこまで信用を出せるかを判断できるのは商いの中身を分かっている者だけであり、分からない商いを抱えたまま権限の線を引き直しても、同じことが起きたのではないか。

もっとも、この立て直しでニチメンの弱さが直ったとは言い切れない。2000年3月期にいったん黒字を回復した純損益は、翌期に有価証券の評価損で再び赤字となり、情報通信子会社の売却益がその穴の一部を埋めた。2000年10月に社長を承継した半林亨氏に託されたのは、関係会社の整理を終えた会社を攻めへ転じさせる役回りであった。商いを与信の届く範囲まで縮める判断は、縮めたあとの収益をどこから得るかまでは答えていなかったのだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年8月
参考文献

参考文献

参考

  • ニチメン アニュアルレポート1999(1999年3月期)【連結財務諸表の注記 15.後発事象】
  • ニチメン アニュアルレポート1999(1999年3月期)【社長メッセージ】
  • ニチメン アニュアルレポート2000(2000年3月期)【社内カンパニー制】
  • ニチメン アニュアルレポート2000(2000年3月期)【社長メッセージ】
  • ニチメン アニュアルレポート1999(1999年3月期)【社長メッセージ・中期経営計画】
  • ニチメン アニュアルレポート2000(2000年3月期)【経営戦略の進捗】
  • 日経ビジネス 2000年5月29日号(日経BP社)
  • ニチメン アニュアルレポート2001(2001年3月期)【財務概況】
  • ニチメン アニュアルレポート「Annual Report 1999(1999年3月期)」
  • ニチメン アニュアルレポート「Annual Report 2000(2000年3月期)」
  • ニチメン ニュースリリース「代表取締役社長の異動に関するお知らせ」
  • ニチメン アニュアルレポート「Annual Report 2001(2001年3月期)」

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