ソシオネクスト富士通セミコンダクターとパナソニックのSoC事業の会社分割による統合とソシオネクストの発足
親会社が抱えきれなくなったシステムLSI事業を、統合新会社は独立したファブレスとして自立させられるか
- 概要
- 2014年9月、富士通とパナソニックはSoC事業を統合する受け皿としてソシオネクストを設立し、2015年3月に会社分割で両社のシステムLSI事業を承継、日本政策投資銀行の出資も受けて事業を開始した。二つの電機大手が半導体設計部門を切り出して合流させた再編であった。
- 背景
- 1986年に世界シェア約4割を占めた日本の半導体は2010年代に1割を下回り、水平分業が進んでいた。最先端SoCの開発費を単独で支えにくくなった富士通・パナソニックのシステムLSI部門は、垂直統合のままでの存続が難しくなっていた。
- 内容
- 発足時の従業員は約2600人、中期経営計画の売上目標は1500億円であった。工場を持たないファブレスとして製造をTSMC等へ委託する体制を敷いた。両親会社の製品と顧客を引き継いだ受け皿の色合いが濃く、独立企業としての自立が課題として残った。
- 含意
- 発足後の数年は業績が伸び悩んだが、2018年にCEOへ就いた肥塚雅博氏のもとで海外顧客向けカスタムSoCへ事業モデルを転換し、2022年10月に東証プライムへ上場して資本の上でも独立した。統合そのものより、引き継いだ汎用品モデルを作り替えた判断が成長を分けたとみられる。
受け皿が独立企業になるということ
富士通とパナソニックのSoC事業統合を、衰える国内半導体を寄せ集めた延命策とだけ読むと、その後の歩みを取り違える。発足時のソシオネクストは、両社の民生機器向け製品と顧客を引き継いだ受け皿にすぎず、独立企業として立てるかは市場から懐疑的に見られていた。二社を合わせて規模を得たこと自体が競争力を生んだのではなく、引き継いだ汎用品モデルを2018年に捨て、海外顧客向けの特注設計へ作り替えた判断が、この会社を成長軌道に乗せたとみることができる。
もっとも、統合という土台がなければ、その作り替えに要する体力も時間も生まれにくかった。二社ぶんの設計人材と最先端ノードの開発ノウハウ、日本政策投資銀行を含む出資が一つの会社に集まったからこそ、数十億円規模の先端投資を要するカスタムSoCへ踏み込めた面は大きい。ただ、その成長は特定顧客への集中と表裏にあり、2025年3月期の初の減収減益が示すように、統合が用意した規模は、事業モデルの偏りまで解いたわけではないとみられる。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
背景
日本の半導体の後退と水平分業の進展
1986年に世界シェアの約4割を占めた日本の半導体は、2010年代には1割を下回るまで後退していた。最先端品の製造には巨額の設備投資が要り、一社では資金を賄いきれなくなった半導体産業では、設計に特化するファブレスと製造を担うファウンドリとに役割を分ける水平分業が広がっていた。富士通とパナソニックのシステムLSI部門も、垂直統合のまま単独で先端投資を続けることが難しくなっていた[1]。
両社のシステムLSI事業は、テレビやカメラといった民生機器向けが中心で、用途をあらかじめ定めた製品を国内顧客へ供給する設計であった。最終製品の販売量で開発費を回収するモデルは、家電の国内市場が縮むなかで先細りに向かい、最先端ノードのSoC設計に要する数十億円規模の開発費を単独で支える体力は、どちらの部門にも残りにくくなっていた[2][3]。
決断
会社分割による受け皿会社の発足
2014年9月、富士通とパナソニックはSoC事業を統合する受け皿として、準備会社ソシオネクストを神奈川県横浜市に設立した。翌2015年3月、両社は会社分割によってそれぞれのシステムLSI事業を新会社へ承継させ、日本政策投資銀行の出資も受けて事業を開始した。二つの電機大手が、自前で抱えてきた半導体設計部門を切り出し、一つの独立会社へ合流させる再編であった[4]。
発足時のソシオネクストは従業員約2600人を擁し、中期経営計画で1500億円の売上を目標に掲げた。工場を持たず設計に特化するファブレスとして、製造は台湾積体電路製造(TSMC)などのファウンドリへ委託する体制を敷いた。両親会社から製品と顧客を引き継いだ受け皿の色合いは濃く、統合の経済合理性を独立企業として示すことが、当初の課題として残った[5]。
引き継いだ事業モデルという足枷
新会社が引き継いだのは、用途を特定した製品を最終製品の販売量で回収する、独立前からのビジネススタイルの延長であった。半導体の設計だけを担い、微細化が進む先端品を扱う点に独自性はあったが、国内の家電向けを主戦場とする構図のままでは成長軌道に乗りにくく、二社を統合して規模を確保したことが、そのまま競争力へ結びつくわけではなかった[6]。
結果
カスタムSoCへの転換と資本の独立
発足からの数年は業績が伸び悩んだ。転機は2018年で、同年にCEOへ就いた肥塚雅博氏のもと、ソシオネクストは用途特定型の汎用品から、顧客の求めに応じて最先端品を設計するカスタムSoC(Solution SoC)へと事業モデルを転換した。国内の家電向けから、米国や中国の自動車メーカーといった海外顧客へ主な取引先を移し、量を追わず特注の付加価値で稼ぐ形へ組み替えた[7]。
転換は数字に表れた。2022年3月期に1170億円だった売上高は、2023年3月期に1927億円、2024年3月期に2212億円へと伸び、営業利益も355億円まで拡大した。2022年10月12日には東京証券取引所プライム市場へ上場し、富士通・パナソニックホールディングス・日本政策投資銀行の三者が保有株式の一部を売り出した。親会社の受け皿として発足した会社は、統合から7年余りで資本の上でも独立した[8][9]。
もっとも、成長は特定顧客への依存と隣り合わせであった。2025年3月期は中国の通信機器向け需要の減少と顧客の在庫調整が重なり、売上高1885億円、営業利益250億円と、統合以来はじめて減収減益に転じた。カスタムSoCの受託は大口顧客の量産時期に業績が左右されやすく、統合が用意した規模が、事業構成の偏りまで解いたわけではないことがうかがえた[10][11]。
- ソシオネクスト 有価証券報告書 第11期(2025年3月期)【沿革】【連結損益計算書】【事業の内容】
- EE Times Japan 2015年3月2日「新会社“ソシオネクスト”発足――富士通とパナのLSI事業統合が完了」
- 週刊東洋経済 2023年10月7日号「発見!成長企業 【6526】ソシオネクスト 躍進もたらした事業変革 市況調整でも安定成長続く」
- 週刊東洋経済 2024年2月24日号「特集 もうけの仕組み2024 水平分業進む半導体業界 ソシオネクストの独自色」
- 日本経済新聞(2022年9月6日)「富士通・パナ半導体統合のソシオネクスト、プライム上場へ」
- ソシオネクスト 2025年度第1四半期決算説明会(2025年7月31日)質疑応答