大興製紙の完全子会社化(2021年・レンゴーの決断)

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レンゴー:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)

何をなぜ決めたか:更生会社の再建引受とクラフトパルプ・クラフト紙の製造への進出

概要
概要

2021年8月3日、レンゴーは取締役会で、更生手続中の大興製紙が実施する第三者割当の募集株式を全数引き受け、9月1日に完全子会社とすることを決議した。7月31日に更生計画の認可決定が確定したことを受けた判断である。これにより、製紙事業と重包装事業の原料にあたるクラフトパルプとクラフト紙の製造に進出した。

取得は再建の完了を意味しなかった。子会社化から5年を経た2026年11月5日、レンゴーは大興製紙を2027年10月1日に吸収合併すると決議した。合併の目的には、パルプ・紙事業の業績改善と第二世代バイオエタノールの実証を進める経営再建の途上であることを記し、一体化による経営資源の集約と収益力の強化を掲げている。効力発生は予定の段階にある。

背景
背景

大興製紙は静岡県富士市の製紙会社で、クラフトパルプ、クラフト紙、金属合紙などの特殊紙の製造販売とリサイクル事業を営み、2020年3月期の売上高は約120億円、従業員は210名だった。原材料高と販売競争で業績が低迷し、2020年には感染症の拡大に伴う需要の減退で資金繰りが逼迫した。2021年1月15日に東京地方裁判所へ更生手続開始を申し立て、レンゴーは同日に再生支援を検討する基本合意書を締結した。

レンゴーは原料側へ順に事業を広げてきた。1936年4月に製紙工場を開設して原紙から段ボールまでの一貫生産を開始し、2000年7月に丸三製紙を子会社化している。支援の目的には、対象事業の収益改善に加え、製紙と重包装の原料の製造に進出し、供給網の上流の付加価値を取り込むことを挙げた。支援を決める前の2021年3月期、大興製紙が加わる板紙・紙加工関連事業の売上高は4,327億1,100万円、セグメント利益は283億8,000万円であった。

内容
内容

支援は三段階で進めた。2021年1月の基本合意は支援を検討するものにとどめ、3月26日に管財人と事業再生支援の合意書を締結した。合意書では、更生計画案の認可を条件に9月1日に完全子会社とし、それまでの事業継続に必要な資金を貸し付けることを定めた。認可の確定後、8月に決議した完全子会社化で、資本金は100百万円から450百万円となり、従業員は191名となった。

経営はレンゴーの人材と既存の経営陣で組んだ。会長にレンゴー顧問の平野公一氏が就任し、社長は塩川好久氏が続投し、非常勤取締役に大坪清会長兼CEOが入った。一方、第三者割当の引受額は3本のリリースに記載がなく、第154回定時株主総会の関連当事者注記に載るのは貸付だけである。2022年3月期の貸付は平均残高で65億5,800万円、期末残高は65億2,000万円であった。

沿革:意思決定前後の出来事12件
考察:川上の取得に続く再建の拠出
考察

考察:川上の取得に続く再建の拠出

この決断は、原料の工程へ進むときに設備を自ら新設するか、経営破綻した会社を引き受けるかという問いへの答えである。レンゴーは後者を選び、売上高約120億円の製紙会社を更生計画の認可を条件に完全子会社とした。川上への進出と再建の負担を一体で引き受ける、救済型の垂直統合といえる。結末はまだ出ていない。大興製紙の営業損失は2026年3月期に54億9,700万円まで拡大しており、再建が収益に表れたとはいえない。

原料へ広げる判断自体は、レンゴーの経路の延長にある。1920年5月に設立した聯合紙器は、1936年4月に製紙工場を開設して原紙から段ボールまでの一貫生産を開始し、2000年7月には丸三製紙を子会社化した。大興製紙の取得は、この流れを原紙の原料であるパルプへ伸ばしたものである。ただ、取得後の判断は生産の集約だけでは閉じなかった。2024年にはバイオエタノールの実証を始め、2026年11月には吸収合併を決議した。子会社のままでは再建を進めにくいと判断したとみられる。

比べる相手は、2022年1月に第三者割当の引受を含めて議決権75.0%を取得した飯田グループホールディングスの買収である。同じ上流への進出でも、飯田は取得の対価18,578百万円を開示し、理由は木材の安定調達であった。レンゴーは引受額を開示資料に示さず、負担は取得後の拠出に表れた。2026年3月期の増資が90億円、期末の貸付残高が132億5,000万円である。違いを生んだのは相手の状態であり、更生会社の取得では価格より再建の拠出が負担の中心になる。

Yutaka Sugiura, 2026年11月

数字で見る

数値:意思決定前後の事業数値3件

レンゴー:大興製紙の売上高と損益の推移

売上高(百万円)営業利益率(%)

営業損失は2026年3月期に5,497百万円まで拡大した

レンゴー:大興製紙の売上高と損益の推移
(百万円)売上高営業利益経常利益当期純利益備考
2020年3月期12,000−−−売上高は約12,000の概数。更生手続の申立て前
2024年3月期12,488△1,959△1,935△2,082
2025年3月期11,275△3,319△3,416△4,619
2026年3月期10,661△5,497△5,898△5,275期末の純資産5,603、総資産24,713
出所:レンゴー ニュースリリース「大興製紙株式会社の支援に関する基本合意書の締結について」(2021年1月15日) / レンゴー 臨時報告書(2026年11月5日提出)【本合併の相手会社についての事項】
出所:レンゴー ニュースリリース「大興製紙株式会社の支援に関する基本合意書の締結について」(2021年1月15日) / レンゴー 臨時報告書(2026年11月5日提出)【本合併の相手会社についての事項】

レンゴー:大興製紙への貸付と増資の引受の推移

貸付の期末残高(百万円)

2026年3月期の期末貸付残高は13,250百万円

レンゴー:大興製紙への貸付と増資の引受の推移
(百万円)貸付の平均残高貸付の期末残高増資の引受備考
2022年3月期6,5586,520−第三者割当の引受額は開示なし
2024年3月期7,82511,080−期末は流動7,016と長期4,064の計
2025年3月期13,31713,114−期末は流動3,714と長期9,400の計
2026年3月期16,67413,2509,000期末は流動2,720と長期10,530の計
出所:レンゴー 第154回・第156回・第157回・第158回定時株主総会招集ご通知【関連当事者との取引に関する注記】
出所:レンゴー 第154回・第156回・第157回・第158回定時株主総会招集ご通知【関連当事者との取引に関する注記】

レンゴー:板紙・紙加工関連事業セグメントの推移

売上高(百万円)セグメント利益率(%)
レンゴー:板紙・紙加工関連事業セグメントの推移
(百万円)売上高セグメント利益セグメント資産備考
2017年3月期382,14613,308545,267
2018年3月期397,1187,156567,871
2019年3月期431,92715,591584,300
2020年3月期449,69530,208627,755
2021年3月期432,71128,380649,680
2022年3月期448,83822,657672,007大興製紙を連結の範囲に含めた期
2023年3月期483,85114,314740,638
2024年3月期510,94534,966815,618
2025年3月期514,72023,443781,227
2026年3月期521,86925,676829,833同期の大興製紙の営業損失は5,497
出所:レンゴー 有価証券報告書 第149期〜第158期(セグメント情報、外部顧客への売上高・セグメント利益・セグメント資産)
出所:レンゴー 有価証券報告書 第149期〜第158期(セグメント情報、外部顧客への売上高・セグメント利益・セグメント資産)
人物:意思決定前後の取締役10名

取締役10名(2021年6月株主総会決議)

役員名役職
取締役業務執行担当領域
川本洋祐取締役:代表取締役業務執行:社長・COO担当:
前田盛明取締役:取締役業務執行:担当:特命事項担当
大坪清商社取締役:代表取締役業務執行:会長・CEO担当:
石田重親取締役:取締役業務執行:副社長執行役員担当:パッケージング部門、海外関連事業部門統轄
長谷川一郎商社取締役:取締役業務執行:副社長執行役員担当:製紙部門、資材部門統轄、レンゴーペーパービジネス(株)取締役会長
馬場泰博取締役:取締役業務執行:担当:特命事項担当
佐藤義雄金融取締役:取締役業務執行:担当:
奥正之金融取締役:取締役業務執行:担当:
坂井信也取締役:取締役業務執行:担当:
玉岡かおる学者取締役:取締役業務執行:担当:
この一覧は2021年6月の定時株主総会の直後に提出された有価証券報告書の【役員の状況】による。
参考文献

参考文献

参考

  • レンゴー ニュースリリース「大興製紙株式会社の完全子会社化について」(2021年8月3日)
  • レンゴー 有価証券報告書 第158期(2026年3月期)【沿革】
  • レンゴー ニュースリリース「大興製紙株式会社の支援に関する基本合意書の締結について」(2021年1月15日)
  • レンゴー 有価証券報告書 第153期(2021年3月期)【セグメント情報】
  • レンゴー ニュースリリース「大興製紙株式会社の事業再生支援に関する合意書の締結について」(2021年3月26日)
  • レンゴー 第154回定時株主総会招集ご通知 2022年3月期【関連当事者との取引に関する注記】
  • レンゴー 有価証券報告書 第158期(2026年3月期)【沿革】【事業の内容】
  • レンゴー 有価証券報告書 第154期(2022年3月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】/レンゴー ニュースリリース「大興製紙株式会社の完全子会社化について」(2021年8月3日)
  • レンゴー 経営説明会資料「レンゴーグループの取組み」(2024年11月22日)
  • レンゴー 経営説明会での主な質疑応答(2025年5月16日)/レンゴー 経営説明会資料「レンゴーグループの取組み」(2024年11月22日)
  • レンゴー 経営説明会資料「レンゴーグループの取組み」(2025年11月21日)
  • レンゴー 第158回定時株主総会招集ご通知【事業の経過および成果】
  • レンゴー 第154回・第156回・第157回・第158回定時株主総会招集ご通知【関連当事者との取引に関する注記】
  • レンゴー 有価証券報告書 第149期〜第158期(セグメント情報、外部顧客への売上高・セグメント利益・セグメント資産)
  • レンゴー 適時開示「大興製紙株式会社の支援に関する基本合意書の締結について」
  • レンゴー 適時開示「大興製紙株式会社の事業再生支援に関する合意書の締結について」
  • レンゴー 適時開示「大興製紙株式会社の完全子会社化について」
  • レンゴー 臨時報告書「大興製紙株式会社の吸収合併(EDINET 書類番号 S100ZBPM)」
  • レンゴー 決算説明会資料「経営説明会資料「レンゴーグループの取組み」」
  • レンゴー 決算説明会の質疑応答「経営説明会での主な質疑応答」
  • レンゴー 招集通知「第154回・第156回・第157回・第158回定時株主総会招集ご通知【関連当事者との取引に関する注記】」
  • レンゴー 有価証券報告書「第149期〜第158期【セグメント情報】【沿革】【関係会社の状況】」

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