燃費・完成検査不正(2018年・スズキの決断)

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二度の検査不正の発覚と、外部調査・リコール・1,700億円規模の再発防止投資2016年5月に四輪車の燃費・排出ガス試験で国の定める規定と異なる不正な取扱いを公表し、2018年8月には燃費・排出ガスの抜取検査でも不適切な取扱いが判明したスズキが、完成検査業務の全体を外部専門家に調べさせ、再発防止へ投資を振り向けた経営判断。

何をなぜ決めたか:二度の検査不正の発覚と、外部調査・リコール・1,700億円規模の再発防止投資

概要

2016年5月に四輪車の燃費・排出ガス試験で国の定める規定と異なる不正な取扱いを公表し、2018年8月には燃費・排出ガスの抜取検査でも不適切な取扱いが判明したスズキが、完成検査業務の全体を外部専門家に調べさせ、再発防止へ投資を振り向けた経営判断。

2019年4月12日に外部調査報告書と自社の再発防止策を国土交通省へ提出し、保安基準への適合性の確認が適切に行われていなかったおそれのある四輪車のうち、初回車検を受けていないものをリコールすると決めた。再発防止策の総責任者は社長とし、今後5年間で1,700億円規模の投資を行う。

背景

最初の不正は、燃費試験で国土交通省へ申請する走行抵抗の値をめぐるものだった。2016年5月の報告とともに掲げた再発防止策は7項目で、走行抵抗申請値の決定責任の明確化と社内チェック体制の強化、惰行法で測るための試験設備の整備、四輪技術本部の閉鎖的な体質の解消を含む。

経営責任の明確化として、鈴木修会長は2016年6月29日の定時株主総会の終了時をもってCEOを辞退し、本田治副社長は代表取締役を退任した。2015年度の取締役賞与210百万円は支給せず、公表から1年後の2017年5月18日以降は毎年5月に「リメンバー5.18」として1日通常業務を止め、業務にコンプライアンス違反が潜んでいないかを総点検している。

内容

外部調査で明らかになった四輪車の不適切行為は、ブレーキの制動力、走行・速度計、前照灯主光軸など多くの検査項目に及び、他の検査員が記入した不合格の数値を合格範囲内に書き換える行為もあった。検査補助者の登用試験では学科試験の問題と解答を事前に知らせたり、採点を調整して合格させたりしており、登用前の検査補助者に単独で完成検査を行わせて他人の検査印を使わせていた。

2017年9月の国土交通省の調査要請に対し、同年10月19日に不適切な事案は見つからなかったと報告していた。その前の10月に3工場で数百枚から800枚程の完成車チェックシートが画像データごと書き換えられ、隠ぺいが図られていた。不適切行為の時期について、供述は古いもので1981年6月頃、新しいもので2019年1月頃に及ぶ。

含意

原因には検査員の人員不足と検査工程の時間的余裕の乏しさが挙がり、その背景に「少人」と呼ばれる人員削減の取組みや工数削減の取組みがあった。生産の基本である"小少軽短美"の活動は、完成検査自体が不要だと誤って受け止められていた可能性がある。再発防止では検査部門を生産本部から切り離して検査本部を新設し、燃費・排出ガスの検査員を4工場で13人から29人に増やす。

リコールの費用として約800億円の特別損失を見込み、2019年3月期に813億円を計上した。親会社株主に帰属する当期純利益は1,788億円と前期から369億円減少した。

いつ何が起きたか7件
筆者考察
考察

考察:二度目で問われた生産方式

2016年の燃費試験の不正は、走行抵抗の申請という技術部門の手続きの問題として扱われ、再発防止策も四輪技術本部の体質と申請値のチェックに向けられた。2年後に露見した完成検査の不正は、それが開発部門だけの問題ではなかったことを示したといえる。根にあったのは、「少人」と工数削減を進めるなかで検査が数をこなす工程になり、無駄を省く"小少軽短美"が検査そのものを省く理屈にまで読み替えられた現場だったと思われる。隠ぺいが国の調査に答える直前に行われた点は、最初の不正の教訓が工場まで届いていなかったことを物語る。

もっとも、会社が二度目に選んだ処方は、一度目とは質が違う。調査を外部の法律事務所に委ね、供述者に責任免除を与えて事実を引き出し、検査部門を生産本部から独立させた。5年間で1,700億円規模という投資は、効率を誇ってきた会社が検査の余力にお金を払うという方針の転換でもある。ただ、規程と人員は整えられても、生産台数より品質を重く見る意識が根づいたかどうかは、次に不具合が見つかったとき現場がラインを止められるかで測られるのだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年8月
参考文献

参考文献

参考

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