スズキフォルクスワーゲンとの資本提携と、一年九カ月での解消
2011年解消GMの離脱後に選んだ相手と、自主独立をめぐる齟齬
- 概要
- 2009年12月、スズキが独フォルクスワーゲン(VW)と資本提携および業務提携についての包括契約に調印した経営判断。2006年にGMから買い戻していた金庫株19.9%を第三者割当でVWへ譲渡し、環境技術の供与を期待した。しかし経営の自主独立をめぐる齟齬が埋まらず、2011年9月に解消を表明、同年11月に契約を解除した。提携期間は1年9カ月にとどまる。
- 背景
- 長年の提携相手だったGMが経営危機から2008年にスズキ株を売却し、資本関係が解消された。スズキが望んだ結末ではない。販売台数230万台は独立独歩を保てる水準にあり、自動車危機のさなかも在庫圧縮で赤字転落を免れていたが、環境技術の開発で後れをとるという不安が残っていた。VWはハイブリッド車や電気自動車の実用化が目前にあり、小型車のダウンサイジング競争でスズキの低コスト技術を欲していた。
- 内容
- 出資比率を19.9%に抑えることでVWへの連結を避け、役員派遣も伴わない形とした。スズキ側もVW株を最大2.5%持つ計画で、鈴木修会長は「ヴィーとはイコールパートナー」の立場を強調している。だが技術の利用には制約が付き、機構や設計思想の違いから技術自体を使うことも難しかった。スズキが1.6リットルのディーゼルエンジンを伊フィアットから調達すると決めると、VWは競合他社との提携にあたると反発し、溝が決定的になった。
- 含意
- VWは暗に出資比率の引き上げを求めており、世界販売1000万台へ覇権主義を掲げる同社と、自主独立にこだわるスズキは当初からボタンを掛け違えていた。スズキはVW保有株(時価約1700億円)の買い戻しを求めて国際仲裁裁判所へ申し立て、2015年に決着する。この経験は、2019年のトヨタとの資本提携で役員派遣も拒否権も置かない設計を選ぶ前提になったとみられる。
判断
GMの離脱が空けた席
長年の提携相手だったGMは経営危機に陥り、2008年にスズキ株を売却して資本提携は解消された[1]。スズキが望んだ結末ではない。2009年12月、スズキはVolkswagen Aktiengesellschaftと資本提携および業務提携についての包括契約に調印[2]し、2006年にGMから買い戻していた金庫株19.9%を第三者割当の形でそっくりVWへ譲渡[3]した。当時の販売台数は230万台で、自動車危機のさなかも他社に先駆けて在庫を圧縮し赤字転落を免れている[4]。
連結されない一九・九%
出資比率を19.9%に置いたのは、VWに連結されず、役員派遣も伴わない水準[5]にあたる。スズキ側もVW株を最大2.5%持つ計画[6]とし、鈴木修会長は対等の関係を強調した。期待したのはVWのハイブリッド車や電気自動車、車体軽量化の技術で、会長は「車体軽量化でも力を借りたい[7]」と語っている。両社とも小型車を得意とし、部品共通化による大量生産の利点が大きいという判断[8]もあった。
経過
一年九カ月で開いた溝
2011年9月12日、スズキは会見を開いて提携解消を発表[9]した。鈴木修会長は理由を経営哲学の違いに求め、「大人の付き合いができなかった。笑って別れるのが一番[10]」と述べている。VWは暗に出資比率の引き上げを求めており、世界販売1000万台へ覇権主義を掲げる同社と、自主独立にこだわるスズキは当初からボタンを掛け違え[11]ていた。期待した環境技術の利用にも制約が付き、機構や設計思想の違いから技術自体を使うことも難しかった[12]。
決裂を決定づけたのは、スズキが1.6リットルのディーゼルエンジンを伊フィアットから調達すると決めたことである[13]。VWはこれを競合他社との提携にあたると反発した。提携を担当した原山保人副社長は「困難な調整に時間を費やし、一年九カ月を棒に振った[14]」と語っている。同年11月、包括契約は解除された[15]。VWの保有株は時価で約1700億円にのぼったが、手元には6300億円近い現金同等物[16]があり、自己資金での買い戻しに支障はなかった。
評価
仲裁の長期化と、次の提携の設計
VWが解消に合意しなかったため、スズキは2011年に国際仲裁裁判所へ仲裁を申し立てた。手続きは2014年9月に終結[17]したものの、VWが年次報告書で2015年前半の決着を見込むと記したあとも裁定は下りない[18]。鈴木修会長は「私自身が実行した立場ですから、何とか判決が下りるまで自分の責任でと思っていたが、ここまで長くなると待ち切れない[19]」と語り、決着を待たずに2015年6月の社長交代へ踏み切った。
提携の目的だった技術の補完は、単独では解けない課題として残った。スズキが次に選んだトヨタ自動車との関係では、2019年8月の資本提携で出資比率を4.9%と0.2%に抑え、双方の役員派遣も拒否権や支配権の取得も置かない[20]設計をとっている。相手を替えながら独立を保つ路線は、GM・VWの二度の経験を通して形を変えた。
- 週刊東洋経済 2009年12月19日号「NEWS TOP4 01 自動車 GMからVWへ鞍替え 老練スズキの危機感」
- 週刊東洋経済 2011年9月24日号「NEWS TOP4 02 自動車 スズキがVWと“破談” 中身なかった強者連合」
- 週刊東洋経済 2015年8月1日号「【社長の器】スズキ社長交代から1カ月 おやじから託された後継者長男が挑む 脱カリスマ経営」
- 週刊東洋経済 2019年9月14日号「深層リポート01 3年かけてついに資本提携 トヨタとスズキの思惑」
- スズキ 有価証券報告書 第159期(2024年3月期)【沿革】