オービックの上場は、資金が要って市場へ出た会社の型に当てはまらない。工場も在庫も持たず、社員が顧客先で業務を設計して自社製のソフトを納める商売では、成長のたびに大きな資金が要るわけではなく、実際に上場後も借入は置かれていない。2000年1月の公募60万株は、その意味で運転資金の調達というより、二部から一部へ移るための株式の流通量づくりに近い性格を持っていた。指定はその2か月後に下りている。
上場でオービックが得たものを一つ挙げるなら、顧客の会計と人事を預かる会社としての素性の証明にあたる。基幹システムの入れ替えは10年単位の付き合いになり、買う側は納入業者が10年後も残っているかを見る。開示と監査を通り、市場で値の付く会社であることは、代理店を持たない直販の営業が最初の面談で示せる材料になった。1株61,740円で60万株を引き受けてもらった2000年1月の一度きりで、オービックが市場から現金を受け取る用事は終わっている。