上場で資金を集めながら、その資金を使わずに返すという判断は、一見すると矛盾している。だが同社の狙いは、米国市場を買収で一気に押さえることよりも、自社の技術とパートナー網でじわりと面を広げることにあったと思われる。買収に伴うのれんや統合の負担を避け、身軽なバランスシートを保つ選択が、結果として無借金・高収益の体質を用意したのだろう。
もっとも、資金を返す判断がそのまま守りに徹する経営を意味したわけではない。同社は手元資金を温存し続けた末に、2016年のTippingPoint事業取得のような大型買収へと着手していく。上場時に描いた"買って伸ばす"構図は撤回されたのではなく、20年近い時間をかけて別の形で実行に移されたとみることもできる。資金を使わない判断と使う判断のあいだにある一貫性は、なお読み解く余地が残るだろう。