日産火災海上保険・大成火災との合併(2000年・損害保険ジャパンの決断)

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論点中堅2社との全面合併で規模を得るか
損害保険ジャパン:業績の推移
売上高(億円)経常利益率(%)
料率自由化後の規模の確保と、破綻した相手を含む三社統合の完遂

何をなぜ決めたか:料率自由化後の規模の確保と、破綻した相手を含む三社統合の完遂

概要

2000年11月2日、安田火災海上保険は日産火災海上保険・大成火災海上保険の2社と、2002年4月の合併に向けた正式な協議に入ることで合意した。3社は同年12月に合併覚書を締結し、2001年4月25日にそれぞれの取締役会の決議を経て合併契約を締結している。存続会社は安田火災で、合併期日に商号を「株式会社損害保険ジャパン」へ改め、新会社の社長には安田火災の平野浩志社長が就任すると内定した。

3社が掲げた狙いは、市場の相互補完、経営資源の効率化、資本の効率的な活用の3つである。安田火災は2000年8月に第一生命保険と包括業務提携を決めており、合併はその提携の効果を広げる手段と位置づけた。新会社の取締役は3社合計の48名から20名に絞り、執行役員制度を活用すると定めた。

背景

きっかけは料率の自由化だった。1998年7月に算定会料率の使用義務が廃止され、自動車保険を中心に各社が新商品を相次いで出し始めた。安田火災は、自由化と規制緩和が急速に進み、外資や他業態からの新規参入で厳しい競争が続くと見込んでいた。

本業の数字も伸び悩んでいた。安田火災の単体の正味収入保険料は、1999年3月期に901,599百万円と前期を3.9%下回り、2000年3月期も904,560百万円と0.3%増にとどまった。相手の2社は規模が小さく、資本金は安田火災の584億円に対して日産火災が214億円、大成火災が100億円だった。

内容

2001年4月の契約で、合併比率は安田火災1に対して日産火災0.7、大成火災0.5と決めた。比率は、安田火災がゴールドマン・サックス証券、日産火災がJ.P.モルガン証券、大成火災がメリルリンチ日本証券に企業価値の算定を頼み、その結果をもとに協議して決めている。2社の株主に割り当てる新株は218百万株で、安田火災の発行済株式888百万株に上乗せされる計画だった。

本筋の契約の周りでは、統合の実務と役員の処遇を先に固めた。3社は共同で「統合準備委員会」を設けて合併の準備を進め、2001年5月には合併時の役員体制を定める変更書を結んだ。大成火災の小澤一郎社長と日産火災の佐藤隆太郎社長は、新会社の取締役相談役に就任すると内定している。

含意

合併の直前に、相手の1社が破綻した。大成火災と日産火災は米国の再保険代理店を通じて世界の航空機事故の再保険を引き受けており、2001年9月11日の米国同時多発テロで支払いが多額に上った。大成火災は11月22日に会社更生手続の開始を申し立て、安田火災と日産火災は共同スポンサーに就任した。両社は2002年2月8日に新しい合併契約を締結し、7月1日に合併して損害保険ジャパンが発足した。大成火災も12月に合併している。

統合の代償は小さくなかった。新しい契約で日産火災株1株への割当は0.36株となり、当初の0.7株から半減した。安田火災は2002年3月期に合併関連費用166億円などの特別損失を計上し、単体で43,682百万円の当期純損失となった。大成火災の更生計画では、補償対象外の契約の保険金は77.03%に減らして支払う内容となった。

いつ何が起きたか12件
考察:相手の損失まで引き受けた全面合併
考察

考察:相手の損失まで引き受けた全面合併

安田火災はなぜ中堅2社との全面合併を選んだのか。料率の自由化のあと、単体の正味収入保険料は1999年3月期に3.9%減少し、本業は伸びを失っていた。第一生命との提携で販路は広がったが、提携の効果を大きくするには、売る商品と契約の量そのものを増やす必要がある。持株会社の下に各社を並べる方法もあったが、安田火災は自社を存続会社とする合併を選び、取締役を48名から20名に絞った。早く費用を減らすには、会社を一つにするほうが確実だと考えたのだろう。

もっとも、全面合併は相手の資産だけでなく、相手が抱える損失も引き取る仕組みである。大成火災と日産火災は航空機事故の再保険を引き受けており、米国同時多発テロでその損失が顕在化した。大成火災は会社更生手続に入り、日産火災株への割当は0.7株から0.36株へ半減した。安田火災は破綻した相手を切り離さず、スポンサーとして最後は合併まで進めた。三社統合を守った代わりに、安田火災は相手の契約者と従業員の受け入れまで背負った。

この合併は成功だったと判断できる。損害保険ジャパンは2002年9月に、2005年度の正味収入保険料1兆3,750億円・当期利益540億円という目標を掲げた。2006年3月期の単体実績は、正味収入保険料が1兆3,709億円で目標にほぼ届き、当期純利益は67,858百万円と目標を上回った。発足初年度の2003年3月期は当期純損失だったが、翌期に黒字化している。破綻した相手を抱えた三社統合は、3年で目標の水準に達した。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
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図と表

損害保険ジャパン:正味収入保険料と当期純利益の推移(単体)

正味収入保険料(百万円)当期純利益(百万円)
損害保険ジャパン:正味収入保険料と当期純利益の推移(単体)
(百万円)正味収入保険料当期純利益備考
1999年3月期901,59912,0351998年7月に算定会料率の使用義務が廃止された
2000年3月期904,56012,866
2001年3月期926,21015,1222000年11月に3社の合併協議入りで合意し、翌年4月に契約
2002年3月期963,614△43,682有価証券の減損と合併関連費用で当期純損失
2003年3月期1,264,283△15,4727月に日産火災、12月に大成火災を合併し、両社の分を含む
2004年3月期1,352,87764,174
2005年3月期1,351,91556,898
2006年3月期1,370,92067,858中期収益目標の最終年度。目標は正味収入保険料1兆3,750億円
出所:安田火災海上保険 個別財務諸表の概要 平成12年3月期(2000年5月19日)・平成13年3月期(2001年5月18日) / 損害保険ジャパン 有価証券報告書 第63期(2006年3月期)【主要な経営指標等の推移】
出所:安田火災海上保険 個別財務諸表の概要 平成12年3月期(2000年5月19日)・平成13年3月期(2001年5月18日) / 損害保険ジャパン 有価証券報告書 第63期(2006年3月期)【主要な経営指標等の推移】
参考文献

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