スマレジの歴史

デザインに強いweb制作が祖業。スマレジへの業態転換で爆速成長へ
Last Updated: | Author: @yusugiura
歴史所見

無借金・高収益・低給料なIT企業

従業員の平均年収481万円(取締役平均報酬の1/4)

FY2021のスマレジの売上高は42.9億円、FY2014からFY2021に至るまで売上高経常利益率は常に10%を超えており、高収益なIT企業といえる。FY2021時点のBSも無借金経営であり、現預金37億円をもつ。一見、優れた数値に見える。その一方で、従業員の給与水準の低い点が目につく。FY2021時点の平均給与は481万円であり、利益の従業員に対する還元が十分であるかどうかには検討の余地がある。この状況は、ソフトウェア開発に携わる社員の定着率悪化という事業リスクがあると判断する。なお、スマレジの取締役6名に対する総額報酬は1.29億円(1人あたり約2000万円)であり、従業員の平均給与と比較して約4倍以上の差がある。スマレジの従業員の平均給与が渋い点について、その戦略的な意図は不明である。なお、スマレジはガバナンスにおける「指名委員会」「報酬委員会」の未設置会社である。今後の組織制度設計に期待したい。

社史重要度:★☆☆☆☆
author: @yusugiura
2005年〜2010年
創業経緯
デザインに強いweb制作会社。自社サービスの開発を狙って子会社設立
2005年
★★★
大阪市西区で有限会社ジェネフィックス・デザインを設立
web制作の受託開発に従事
設立
2010年
システム開発部門を分社化
株式会社プラグラムを設立
設立
2011年〜2014年
業態転換
iOS向けレジアプリを開発するも債務超過へ
2011年
★★★
iOS向けを「スマレジ」アプリをリリース
東京オフィスを新設
2012年
東京オフィスを渋谷区恵比寿に移転
2013年
有限会社ジェネフィックスを吸収合併
2013年
増資
2014年
自己資本比率▲25.1%
債務超過状態へ
2014年
東京オフィスを千駄ヶ谷に移転
2014年〜2020年
爆速成長
経営再建へ。スマレジに集中投資
2014年
★★★
iOS向けアプリ「スマレジ2」をリリース
料金体系を変更
2015年
米国法人 PLUGRAM USA, Incを設立(2018年清算)
スマレジの海外展開を志向
設立
2015年
受託開発事業を撤退
スマレジに集中投資
技術
2015年
株式会社ブルーを株式交換により完全子会社化
QRコード決済に参入
2016年
ナノ・ユニバースの全店舗にスマレジ導入
2016年
増資(資本金1.06億円)
引受先は三菱UFJキャピタルとSMBCベンチャーキャピタル
2016年
東京オフィスを渋谷区恵比寿に移転
2016年
商号を「株式会社スマレジ」に変更
2017年
ショールームを横浜・名古屋に新設
2017年
「スマレジ3」をリリース
2018年
大阪本社を大阪府中央区に移転
2018年
増資(資本金13.1億円)
引受先は株式会社ぐるなび
2019年
東証マザーズに株式上場
上場
2020年
東京オフィスを渋谷区広尾に移転
恵比寿プライムスクエアタワー21Fに移転
2020年〜2022年
利益率低迷
企業買収・広告宣伝に投資。利益率は低迷へ
2020年
「スマレジ4」をリリース
2021年
税改正特需が終焉
売上成長が鈍化
不振
2021年
★★★
株式会社ロイヤルゲートを子会社化(2022年吸収合併)
キャッシュレス決済を強化
2022年
TVCMによる広告宣伝に約5億円を投資
利益率が低迷
不振
2022年
長期ビジョン(VISION2031)および中期経営計画を公表
計画

CEOの業績貢献

創業経緯 2005年〜2010年

デザインに強いweb制作会社。自社サービスの開発を狙って子会社設立

2005
大阪市西区で有限会社ジェネフィックス・デザインを設立。web制作の受託開発に従事

#創業経緯

徳田誠氏がwebページ制作会社を起業

2005年に徳田誠(現スマレジ・代表取締役会長)は、フリーランスを組織化してweb制作(ホームページ作成)の受託会社「ジェネフィックス・デザイン」を設立した。創業地は大阪であり、現在に至るまでスマレジが大阪本社を設置する理由となっている。

脱受託を目指して、山本博士氏が子会社を経営

ジェネフィックス・デザイン社は、デザインを武器に、創業時のweb受託制作をメインの事業に据えつつも、将来の自社サービスの開発を目論んで「システム開発部門」を設置していた。しかし、本業のweb制作をメインに据えており、プロジェクトが乱立したことによって社員の負担が増えていったという。

そこで、2011年に、同社の社員であった山本博士氏(@hirossy)は、開発事業に集中するために、徳田氏に対して子会社で新規事業を行う案を提示した。この案が受け入れられ、2011年にジェネフィックス・デザイン社のシステム部門を「プラグラム(現・スマレジ)」として分社化し、同社の社長に山本博士氏が就任した。このため、スマレジの実質的な創業年は2010年と言える。

なお、分社化されたプラグラムの経営において、山本博士氏は受託のシステム開発にはあえて手を出さないで、自社サービスの開発に専念することを決めた。このため、失敗すれば赤字を垂れ流すことになるため、相当な危機感を持って子会社の経営に従事したという。

徳田会長と山本社長(@hirossy)の関係性

スマレジの創業経営は複雑である。ジェネフィックス・デザイン社の創業者は徳田氏であり、現在のスマレジに至る子会社を設立した人物といえる。一方で、スマレジの事業を開発をしたのは、ジェネフィックス・デザイン社の社員であり、分社化された子会社プラグラムの社長である山本博士氏である。

これらの関係性から、資本関係は複雑な経緯を経たと推察される。2019年のスマレジ上場直前(上場目論見書に記載)における大株主は、徳田氏(徳田誠氏+株式会社徳田)で合計約41%、山本氏(山本博士氏+株式会社山本博士事務所)で合計約26%であった。

2010年
システム開発部門を分社化。株式会社プラグラムを設立
業態転換 2011年〜2014年

iOS向けレジアプリを開発するも債務超過へ

2011
iOS向けを「スマレジ」アプリをリリース。東京オフィスを新設

#新規事業

iOS向けアプリ「スマレジ」を開発

2011年にプラグラム(山本博士社長 @hirossy)は、iOS向けの「スマレジ」を開発した。主にiPhoneとiPod Touch向けにアプリを開発し、専用のバーコード読み取り機を使って、POSレジとして使用できるサービスであった。

POSに着目した理由は、プラグラムの社員に、POSの開発経験のあるエンジニアがいたことが理由であった。当初はノートパソコンを使ったレジを構想していたが、山本氏はApple Storeで「iPodTouch」でクレジット決済をする体験から着想を得て、タッチパネル端末を利用したPOSレジの開発を決めたという。

リリース直後は、営業組織を持っていなかったため販売に苦戦したが、展示会に出店したことで徐々にスマレジの認知度が高まっていった。この理由は、競合他社が従来のPOS端末を展示する中で、スマレジが「アプリ」という、当時としては新しい仕組みであったためである。

黒字まで2年かかる。2014年に債務超過へ

2011年時点のスマレジの料金体系は「導入初期費用69.8万円」+「月額利用料8000円」であり、サポート費用を年間1〜5万円徴収するビジネスモデルであった。

従来のPOSレジが導入にあたって200万円必要な相場と比べると安かったが、それでも、小売店からすれば簡単に導入できないシステムであったため、スマレジは黒字化までに2年(会社設立起算もしくはスマレジ発売起算かは不明)かかったという。

黒字転換するまでは、会社の銀行口座がマイナスになることは珍しくなく、債務超過の状態でスマレジの開発・販売を行っていたと推察される。

2014年4月期にプラグラム(2013年に親会社のジェネフィックス・デザインを吸収合併)は、自己資本比率がマイナス25.1%となり、債務超過に陥った。

山本博士(スマレジ・実質創業者)

良いサービスを作ることには自信がありましたし、元々デザインの会社なので、見た目も結構いい感じに仕上げたものを作れば売れると思っていたんです。ところが、まったく売れませんでした。

今から見れば、認知させる手段も知らないし、営業体制も整っていなかったので、売れないのは当然のことだったと思います。それまでは受託ばかりだったので専門の営業要員も置かず、一回大きな案件を受注すれば半投資大丈夫というような世界でした。

半年間、糸口がまったく掴めずにいましたが、展示会に出展したりしているうちに、徐々に問い合わせが増えてきました。展示会では従来型POSレジばかりが並んでいましたので、当社のスマれじが特に目立ち、注意を引き付けることができたと考えています。

一方で、営業要員を採用したり、ショールームをとして東京オフィスを開設するなど、営業体制も整えていきました。

2012年
東京オフィスを渋谷区恵比寿に移転
2013年
有限会社ジェネフィックスを吸収合併
2013年
増資
2014年
自己資本比率▲25.1%。債務超過状態へ
2014年
東京オフィスを千駄ヶ谷に移転
爆速成長 2014年〜2020年

経営再建へ。スマレジに集中投資

2014
iOS向けアプリ「スマレジ2」をリリース。料金体系を変更

#機能開発

無料の料金体系を導入

2014年に「スマレジ2」をリリースし、無料でも使用できる「フリーミアム」の料金体系を変更した。山本博士氏は、材料費がかからないシステム開発において、あるべき姿を目指して料金を変更したという。

無料での利用が可能になったことで、スマレジの導入数が増加し、売上成長率が急拡大に転じた。

小売り向け機能数の充実で、競合に対抗

2011年時点ではタッチパネル端末のPOSレジは珍しい存在であったが、2014年以降は競合会社が相次いで参入した。2015年の時点で、スマレジは開発に先行しており、500に近い機能を開発したことによって、競争優位に立っていたと推察される。

2016年には大手アパレル小売チェーンの「ナノ・ユニバース」が全店舗でスマレジを導入するなど、大手企業でもスマレジが採用されるようになった。

2014年12月末時点でスマデジは7000店舗以上で稼働しており、業種別の内訳は「小売り向け25%(うちアパレル10%)」「飲食向け25%」「美容関連15%」「催事向け15%」「その他10%」(出所:スマレジ・シミズBlog(2015/4/1))であり、アパレルに強いレジアプリになっていた。これらの経緯から、スマレジはアパレルを軸として、小売業向けに強いサービスとして機能開発を進めたものと推察される。

また、業種向け機能として、小売業向けに機能開発を優先的に進めており、2012年の時点で「在庫管理システム」をリリースしていた。レジアプリでは業種によって必要な機能が異なるため(例えば飲食向けのレジにとって在庫の概念はさほど重要でない)、スマレジはアパレルを中心とした小売り向けを軸に、顧客を確保していったと推察される。

UXを磨くことで競合に対抗

web制作会社が発祥という経緯から、スマレジはUX/UIに関しても優れていたと推察される。当時はUXの重要性が業界内で認知されていなかったこともあり、純粋なシステム開発会社ではなく、web制作会社からの転換という面で、独自の強みを持っていた。ただし、2022年の現在は、UXという概念が世の中に普及しており、デザインの強みは薄らいでいると推察される。

受託事業から撤退。スマレジに業態転換へ

2014年に株式会社プラグラム(2013年にジェネフィックスを吸収合併)では、スマレジ向けの売上高が84%に達し、主力事業に育った。そこで、2015年に受託開発では継続案件を除いて全て撤退することを決め、スマレジの専業会社となった。

山本博士(スマレジ・実質創業者)

(筆者注:スマレジの強みは)高機能だということだと思います。当社のエンジニアは従来型POSレジ開発の経験から、POSレジというのは高機能が当たり前だと思っていたので、自前でPOSレジアプリを開発するときにも、当然のようにさまざまな機能をつけていきました。

所が、後から気付いたのですが、当社が当たり前に作っていたシステムが、実はPOSレジアプリの世界では非常に高機能なものになっていたんですね。

一般的なPOSデジアプリは個人商店が使うことだけを想定して、単純な計算機能と売上チェックができればOKというレベルでした。結果的にそれらと差別化ができ、強みになっていきました。

2015年
米国法人 PLUGRAM USA, Incを設立(2018年清算)。スマレジの海外展開を志向
2015年
受託開発事業を撤退。スマレジに集中投資
2015年
株式会社ブルーを株式交換により完全子会社化。QRコード決済に参入
2016年
ナノ・ユニバースの全店舗にスマレジ導入
2016年
増資(資本金1.06億円)。引受先は三菱UFJキャピタルとSMBCベンチャーキャピタル
2016年
東京オフィスを渋谷区恵比寿に移転
2016年
商号を「株式会社スマレジ」に変更
2017年
ショールームを横浜・名古屋に新設
2017年
「スマレジ3」をリリース
2018年
大阪本社を大阪府中央区に移転
2018年
増資(資本金13.1億円)。引受先は株式会社ぐるなび

2019
東証マザーズに株式上場

2019年にスマレジは東証マザーズに株式を上場した。

山本社長(@hirossy)は、上場にあたってその喜びをTwitter上で「\( ^o^ )/」と表現した。

2020年
東京オフィスを渋谷区広尾に移転。恵比寿プライムスクエアタワー21Fに移転
利益率低迷 2020年〜2022年

企業買収・広告宣伝に投資。利益率は低迷へ

2020年
「スマレジ4」をリリース

2021
税改正特需が終焉。売上成長が鈍化

FY2020にスマレジは売上高33億円(前年比増収+102%)を計上し、それまでの売上の爆速成長に終止符を打った。FY2019は税法改正の特需にあたったことから、FY2020はその反動として売上は微増となった。

利益の面では、広告宣伝を中心とした販管費を縮小し、新規採用をFY2020の上半期にストップすることによって、利益率を持続した。

2021
株式会社ロイヤルゲートを子会社化(2022年吸収合併)。キャッシュレス決済を強化

2019年以降、日本における決済手段において、現金ではないQRコード・クレカなどによる決済の普及率が上昇した。そこで、2021年にスマレジは、大和ハウス工業から「株式会社ロイヤルゲート(2018年に大和ハウスが買収)」の株式を取得し、キャッシュレス決済の機能の取り込みを目論んだ。

ロイヤルゲートは、端末によるキャッシュレス決済サービスを手掛けていたが、売上高6億円に対して、最終赤字7億円であり、開発費用が重くのしかかっていた。このため、株主である大和ハウスは、ロイヤルゲートの売却を決定した。

買収後の2022年5月に、スマレジは決済サービス「PAYGATE」の提供を開始した。クレカ・電子マネー・QR決済に対応するサービスで、店舗に設置する専用端末で操作できるサービスであった。導入費用は月額3300円+端末代金28,000円(端末代は無料キャンペーンあり)とした。

2022年
TVCMによる広告宣伝に約5億円を投資。利益率が低迷
2022年
長期ビジョン(VISION2031)および中期経営計画を公表
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