グローバルセキュリティエキスパート株式の売却(2026年・兼松の決断)

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兼松:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
9年続いたサイバーセキュリティの持分の、アクセンチュアによる買収を機にした現金化2026年10月27日、兼松は取締役会で、連結子会社の兼松エレクトロニクス(KEL)が保有するグローバルセキュリティエキスパート(GSX)株式について、アクセンチュアの公開買付けに応募せず、成立後にGSXが行う自己株式取得に応じる不応募契約の締結を決議し、最終条件の決定を宮部佳也社長に一任した。10月30日に宮部佳也社長が最終条件を決め、KELはアクセンチュアと契約を締結した。KELの保有は3,076,000株・所有割合20.27%で、第一位株主のビジネスブレイン太田昭和(39.57%)とあわせた不応募株式は59.83%にあたる。

何をなぜ決めたか:9年続いたサイバーセキュリティの持分の、アクセンチュアによる買収を機にした現金化

概要

2026年10月27日、兼松は取締役会で、連結子会社の兼松エレクトロニクス(KEL)が保有するグローバルセキュリティエキスパート(GSX)株式について、アクセンチュアの公開買付けに応募せず、成立後にGSXが行う自己株式取得に応じる不応募契約の締結を決議し、最終条件の決定を宮部佳也社長に一任した。10月30日に宮部佳也社長が最終条件を決め、KELはアクセンチュアと契約を締結した。KELの保有は3,076,000株・所有割合20.27%で、第一位株主のビジネスブレイン太田昭和(39.57%)とあわせた不応募株式は59.83%にあたる。

公開買付価格は1株8,500円で、KELから取得する自己株式の価格は6,918円とした。みなし配当の益金不算入を考慮し、税引後の手取りが応募した場合と実質的に同等になる水準である。買付期間は2026年11月2日から12月15日までで、下限は983,100株となる。全株を売却すれば2027年3月期の親会社の所有者に帰属する当期利益は約145億円増加する見込みだが、TOBの成立が前提のため業績予想には織り込んでいない。TOBはまだ成立しておらず、売却も完了していない。

背景

GSXはビジネスブレイン太田昭和の100%出資で1984年に設立された会社で、2000年3月にネットワークセキュリティ事業を譲り受け、翌4月に現社名へ改めた。2017年8月、KELはGSXのサービスの販売推進を目的に資本業務提携した。2021年12月にGSXが東証マザーズに上場した時点で、KELは300,000株・9.02%を保有する第2位株主だった。

2023年3月期、兼松の新規投資の一つとしてKELがGSX株式を追加取得した。KELの保有は1,538,000株・20.93%となり、GSXは電子・デバイス部門の持分法適用会社に加わった。2023年5月には兼松がKELを完全子会社化した。2025年3月期の兼松グループによるGSXからの商品の仕入は1,578百万円である。兼松は1999年の構造改革計画以来、食料・IT・鉄鋼・プラント・ライフサイエンス・エネルギーを本社のコア事業としてきた。

内容

アクセンチュアは2026年初めにサイバーセキュリティ事業の強化の検討を始め、2月27日にGSXの経営陣と初回面談した。6月18日に1株4,650円の初回提案を出し、10月1日には8,000円とKEL向けの自己株式取得価格6,512円の法的拘束力のある提案、10月7日には8,500円と6,918円の最終提案を出した。9月下旬には不応募株主2社へ不応募契約を申し入れ、10月8日にKELへ最終提案の価格を伝えた。

KELの3,076,000株を6,918円で全て売却すれば、受取額は約213億円となる。GSXの2027年3月期中間期の売上高は6,150百万円で、前年同期比24.0%の増収、営業利益は1,276百万円だった。GSXはTOB成立を条件に期末配当を無配とし、株主優待制度を廃止すると決めた。

いつ何が起きたか12件
筆者考察
考察

考察:協業の持分を買い手の値で現金化

この決断は、協業のために保有する少数持分を、相手の価値が上がったところで現金化するか、協業の足場として保有し続けるかという問いへの答えである。KELは2017年に販売推進を目的にGSXと提携し、2023年3月期に持分を20.93%まで高めて持分法適用会社とした。兼松はアクセンチュアによる非公開化を機に、全株を1株6,918円の自己株式取得で売却する方を選び、約145億円の利益増を見込む。TOBは12月15日まで続き、成立するかはまだ決まっていない。

兼松がITを本社のコア事業に定めたのは、1999年の構造改革計画である。GSXへの出資は、そのIT部門を担うKELが、セキュリティの品揃えを専業会社との提携で補う手段だった。兼松は2023年5月にKELを完全子会社化した後も、2024年4月にはGSXとともに日本サイバーセキュリティファンドを設立している。そのさなかの売却は、セキュリティを自社グループで持つ機能ではなく、提携先から調達する機能と位置づけ直す判断と読める。売却後の協業の扱いは、開示されていない。

同業の三菱商事は2025年3月期、国内洋上風力の共同支配企業への持分法投資の全額51,255百万円を損失に計上し、事業から離脱した。持分法投資から退く点は兼松と同じだが、損益の向きは逆になる。違いは退出の契機にある。三菱商事は外部環境の悪化で採算が崩れて退いたのに対し、兼松は買い手のアクセンチュアが提示した1株8,500円の買付価格を受けて退く。少数持分の出口は、自社の計画よりも、相手の会社に現れる買い手が決める場面が多いと思われる。

Yutaka Sugiura, 2026年11月

数字で見る

兼松:親会社の所有者に帰属する当期利益の推移

兼松:親会社の所有者に帰属する当期利益の推移

親会社の所有者に帰属する当期利益(百万円)

2026年3月期の当期利益は325億円で、売却益の見込み約145億円はその4割強

兼松:親会社の所有者に帰属する当期利益の推移
(百万円)親会社の所有者に帰属する当期利益備考
2022年3月期15,986GSXはまだ持分法適用会社ではない
2023年3月期18,575KELがGSX株式を追加取得し、持分法適用会社に
2024年3月期23,218
2025年3月期27,469
2026年3月期32,523売却を決める前の期
出所:兼松 有価証券報告書 第128期〜第132期(連結損益計算書)
出所:兼松 有価証券報告書 第128期〜第132期(連結損益計算書)
兼松:持分法で会計処理されている投資と持分法による投資損益

兼松:持分法で会計処理されている投資と持分法による投資損益

持分法で会計処理されている投資(百万円)

2026年3月期末の持分法投資は全社で223億円

兼松:持分法で会計処理されている投資と持分法による投資損益
(百万円)持分法で会計処理されている投資持分法による投資損益備考
2022年3月期15,1211,451
2023年3月期19,947△521GSXが持分法適用会社に加わった期
2024年3月期20,471△212
2025年3月期17,64686
2026年3月期22,2641,625全社の値。GSX単独の帳簿価額は開示されていない
出所:兼松 有価証券報告書 第128期〜第132期(連結財政状態計算書・連結損益計算書)
出所:兼松 有価証券報告書 第128期〜第132期(連結財政状態計算書・連結損益計算書)
当時の取締役7名

取締役7名(2026年6月株主総会議決)

区分役員名役職
取締役業務執行担当領域
業務執行兼務宮部佳也商社取締役:代表取締役業務執行:社長担当:グループ成長、戦略推進担当
谷川薫商社取締役:代表取締役業務執行:会長担当:
海野太郎商社取締役:取締役業務執行:執行役員担当:財務、主計、営業経理担当
近藤一夫商社取締役:取締役業務執行:執行役員担当:企画担当
独立役員田原祐子取締役:取締役業務執行:担当:
田中一弘学者取締役:取締役業務執行:担当:
笹宏行取締役:取締役業務執行:担当:
この一覧は2026年6月の定時株主総会の直後に提出された有価証券報告書の【役員の状況】による。
参考文献

参考文献

参考

  • グローバルセキュリティエキスパート コーポレート・ガバナンス報告書(2021年12月14日・2023年6月27日)【大株主の状況】
  • 兼松 2023年3月期 決算説明会資料「future 135 新規事業投資の実績」
  • 兼松 有価証券報告書 第129期(2023年3月期)【事業の内容】
  • 兼松 有価証券報告書 第131期(2025年3月期)【沿革】
  • 兼松 有価証券報告書 第131期(2025年3月期)【関連当事者】
  • 兼松 決算短信 平成12年3月期 決算短信(2000年5月25日)
  • グローバルセキュリティエキスパート 2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信(2026年10月30日)
  • グローバルセキュリティエキスパート コーポレート・ガバナンス報告書(2021年12月14日)【大株主の状況】
  • 兼松 2022年3月期 決算説明会資料「兼松のDX活動 ①兼松エレクトロニクスのサービス」
  • 兼松 2025年3月期 決算説明会資料「ICTソリューション-日本サイバーセキュリティファンド(NCSF)」
  • 兼松 有価証券報告書 第128期〜第132期(連結損益計算書)
  • 兼松 有価証券報告書 第128期〜第132期(連結財政状態計算書・連結損益計算書)
  • 兼松 適時開示「公開買付けに伴う株式売却に係る「持分法による投資利益」の計上(見込み)および業績への影響に関するお知らせ」
  • アクセンチュア 適時開示「グローバルセキュリティエキスパート株式会社(証券コード:4417)の株券等に対する公開買付けの開始に関するお知らせ」
  • グローバルセキュリティエキスパート 適時開示「アクセンチュア株式会社による当社株券等に対する公開買付けに関する賛同の意見表明及び応募推奨のお知らせ」
  • グローバルセキュリティエキスパート 適時開示「2027年3月期の剰余金の配当(中間配当)、期末配当予想の修正(無配)及び株主優待制度の廃止に関するお知らせ」
  • グローバルセキュリティエキスパート 決算短信「2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信〔日本基準〕(連結)」
  • 兼松 臨時報告書「臨時報告書(財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に著しい影響を与える事象)」
  • 兼松 決算説明会資料「2023年3月期 決算説明会資料・よくある質問と回答(FAQ)」
  • 兼松 決算説明会資料「2022年3月期・2025年3月期 決算説明会資料」
  • 兼松 統合報告書「統合報告書 2023」
  • グローバルセキュリティエキスパート 有価証券報告書「第42期(2025年3月期)【沿革】」
  • 兼松 有価証券報告書「第128期〜第132期【事業の内容】【沿革】【関連当事者】【連結損益計算書】【セグメント情報】」

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