筆者の見解
資本構成の壁を、合併という一手で解いた判断
この合併の核心は、単なる救済にとどまらず、資本市場アクセスの壁そのものを取り払った点にある。従業員持株制度が長く続いた兼松は、規模で並ぶ総合商社に伍していながら、株式の外部流通を欠くという構造的な理由で東京第一部への上場を果たせずにいた。江商との合併は、経営危機に陥った同業を救う形をとりながら、実質的には兼松自身が抱えていた資本構成の閉鎖性を解く手段になったとみられる。
合併で取り込んだ機械・鉄鋼・食料・化学品という複線の事業構成は、その後の非繊維拡充を経て、1999年の構造改革で"総合商社"の看板を自ら下ろした後も、専門商社として生き残る土台になった。銀行仲介という受け身の形で始まった合併が、30年余りを経た危機のなかで会社の骨格を支える基盤へと転じた点に、この決断の射程の長さがうかがえる。
Yutaka Sugiura, 2026年7月