東洋建設をTOBで買収(2025年・大成建設の決断)

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論点 海洋土木大手を買収するか
大成建設:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
海洋土木大手の取り込みと完全子会社化

何をなぜ決めたか:海洋土木大手の取り込みと完全子会社化

概要

2025年8月8日、大成建設が取締役会で海洋土木(マリコン)大手・東洋建設株式の公開買付けを決議した経営判断。買付価格は1株1,750円で、8月12日から9月24日までの30営業日に58,305,532株の応募を集めて成立した。9月30日に議決権61.81%を取得して連結子会社とし、株式併合と自己株式取得を経て12月に完全子会社化した。

背景

大成建設は[TAISEI VISION 2030]達成計画でM&Aを活用した事業変革を掲げ、垂直統合・バリューチェーン統合・海外展開を対象にあらゆる機会を模索していた。2023年12月にはピーエス三菱を公開買付けで連結子会社化している。東洋建設の株式は前田建設工業が20.19%、YFOが28.53%を持ち、少数株主が51.28%を握っていた。

内容

陸上工事に強い大成建設と海洋工事の東洋建設が強みを相互に活かし、カーボンニュートラル関連施設や洋上風力の受注、フィリピンで50年かけて築かれた現地ネットワーク、DXと共同調達による経営基盤の強化など五つのシナジーを見込んだ。一部取得の資本業務提携では意思決定と情報共有に制約が残るとして完全子会社化を選んだ。

含意

取得原価1,316億8,400万円に対し、のれんは735億5,800万円で7年間の均等償却、顧客関連無形資産149億4,600万円を別に計上した。連結は2025年10月からの半期分で、土木事業の売上高はセグメント間の内部取引を含めて前期比8.5%増の7,202億円(外部顧客への売上高は6,797億円)。期首に結合したと仮定した概算では、売上高が945億900万円増える一方、親会社株主に帰属する当期純損益は38億4,800万円の損失方向に振れる。

いつ何が起きたか 7件
当時の取締役 12名

当時の取締役(2025年6月株主総会決議)

考察:マリコンを抱えたスーパーゼネコンの行方
考察

考察:マリコンを抱えたスーパーゼネコンの行方

取得原価1,316億8,400万円に対し、のれんは735億5,800万円。買ったものの過半は、船でも岸壁でもなく、海上工事を回せる人と実績そのものだったことになる。陸上の土木と建築で稼いできた会社が、洋上風力の基礎や海底ケーブルの敷設に一から手を伸ばせば、技術者を育てる時間だけで数年が消える。専業会社の買収は、その時間を金で買う判断だったと思われる。償却期間を7年に置いたのも、買った時間を早く回収し終える構えの表れであろう。

もっとも、価格をめぐる経緯は、この取引が最後まで綱渡りだったことを示している。1,750円を提示した7月上旬に1,485円だった株価は、8月1日には1,731円まで上がってプレミアムを1.10%まで縮め、相手方は一度は不賛同として検討を打ち切った。株価が1,700円で引けた当日に検討再開を申し出て翌日に賛同を得るという流れは、価格の妥当性が市場の日々の値動きに握られていたことを露わにしている。期首に結合したと仮定した概算が38億4,800万円の損失方向へ振れる点も含め、この買収が数字として実を結ぶのはこれからである。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る 3表

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図と表

大成建設:土木事業セグメントの推移

売上高(百万円)セグメント利益率(%)
大成建設:土木事業セグメントの推移
(百万円) 売上高セグメント利益減損損失 備考
2021年3月期 420,54956,07325 セグメント利益はのれん償却前の営業利益ベース
2022年3月期 414,56047,907220
2023年3月期 423,16347,83412
2024年3月期 505,50461,454443 ピーエス三菱の連結が始まった期
2025年3月期 630,62787,58097
2026年3月期 679,74095,557163 東洋建設の連結は10月から。同社は建築事業にも区分されている
出所:大成建設 有価証券報告書 第161期〜第166期(セグメント情報、報告セグメントごとの外部顧客への売上高・利益・減損損失)
出所:大成建設 有価証券報告書 第161期〜第166期(セグメント情報、報告セグメントごとの外部顧客への売上高・利益・減損損失)

大成建設:のれんと無形固定資産の推移

のれん(百万円)のれん以外の無形固定資産(百万円)
大成建設:のれんと無形固定資産の推移
(百万円) のれん無形固定資産総資産 備考
2021年3月期 8614,8071,870,622 のれんは連結貸借対照表に区分掲記がなく、セグメント注記の未償却残高
2022年3月期 4316,0161,956,200
2023年3月期 017,5812,016,717 未償却残高は-で、のれんは残っていない
2024年3月期 8,58327,1512,583,641 ピーエス三菱と佐藤秀の連結による。負ののれん発生益1,094も計上
2025年3月期 8,05427,5382,428,837
2026年3月期 75,945116,2002,714,550 東洋建設分73,558を計上。土木43,584・建築32,360に配分している
出所:大成建設 有価証券報告書 第161期〜第166期(連結貸借対照表、報告セグメントごとののれんの償却額及び未償却残高に関する情報)
出所:大成建設 有価証券報告書 第161期〜第166期(連結貸借対照表、報告セグメントごとののれんの償却額及び未償却残高に関する情報)

買収の条件

買収の条件
科目 概要 備考
被取得企業 東洋建設㈱ 総合建設業(海上・陸上土木、建築)、不動産事業等
取得の法的形式 現金を対価とする株式取得 取得企業を決定した根拠も、現金を対価として株式を取得したこと
取締役会の決議日 2025年8月8日 同日、前田建設工業と不応募契約を、YFO4社と応募契約を締結した
公開買付価格 1株1,750円 前営業日の終値1,700円に2.94%、過去6か月の平均1,415円に23.67%のプレミアム
公開買付期間 2025年8月12日〜9月24日 30営業日。買付予定数75,278,965株、下限33,035,700株で上限は設けていない
応募株数 58,305,532株 下限を上回り全部を買付け。特別関係者を含む所有割合は82.01%
企業結合日 2025年9月30日 決済の開始日。連結した業績は2025年10月1日から2026年3月31日まで
取得した議決権比率 61.81% 企業結合日直前に所有していた議決権比率は-%
自己株式取得後の議決権比率 100.00% 株式併合と自己株式取得を経て、2025年12月に完全子会社とした
取得原価 131,684百万円 対価は全額現金。前田建設工業の持分を除く全株を1株1,750円で取得した額
自己株式取得 27,651百万円 前田建設工業の19,047,510株が対象。株式併合前の1株当たり1,476円
取得のための支出 147,100百万円 取得原価と自己株式取得の合計から、受け入れた現金12,235百万円を控除した額
取得関連費用 920百万円 アドバイザリー費用等
のれん 73,558百万円 7年間の均等償却。取得原価が時価純資産額を上回った差額
顧客関連無形資産 14,946百万円 税効果考慮後。取得原価の配分により、のれんとは別に計上した
受け入れた資産合計 191,130百万円 流動資産111,327百万円、固定資産79,802百万円
受け入れた負債合計 102,446百万円 流動負債73,791百万円、固定負債28,654百万円
非支配株主持分 2,906百万円 連結開始時。株式併合と自己株式取得により解消した
通期換算した売上高の増加 94,509百万円 期首に結合したと仮定した場合の概算額。監査証明を受けていない
通期換算した純損益の増減 △3,848百万円 同じ概算で営業損失△3,267、経常損失△3,868。監査証明を受けていない
結合の理由 シナジー効果の創出 陸上工事の強みと被取得企業の海洋工事の技術・実績を相互に活かす
出所:大成建設 有価証券報告書 第166期(2026年3月期)【企業結合等関係】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】 / 大成建設 公開買付届出書(2025年8月12日) / 大成建設 公開買付報告書(2025年9月25日)
出所:大成建設 有価証券報告書 第166期(2026年3月期)【企業結合等関係】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】 / 大成建設 公開買付届出書(2025年8月12日) / 大成建設 公開買付報告書(2025年9月25日)
当時の取締役 12名

当時の取締役(2025年6月株主総会決議)

参考文献

参考文献

参考
  • 大成建設 公開買付届出書「東洋建設株式会社株式に対する公開買付届出書」
  • 東洋建設 意見表明報告書「大成建設株式会社による当社株式に対する公開買付けに関する意見表明報告書」
  • 大成建設 公開買付報告書「東洋建設株式会社株式に対する公開買付報告書」
  • 大成建設 臨時報告書「特定子会社の異動(東洋建設株式会社)に関する臨時報告書」
  • 大成建設 決算説明会 質疑応答「2025年3月期 決算説明会(質疑応答)」
  • 大成建設 有価証券報告書「第166期(2026年3月期)【企業結合等関係】【重要な契約等】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】」
  • 大成建設 有価証券報告書「第161期〜第166期(連結貸借対照表、セグメント情報)」

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