ゆうちょ銀行郵便局で郵便貯金を創業:手紙のために引かれた窓口網を小口貯蓄の受け皿にも使うという選択
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- 概要
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1875年5月、郵便貯金事業が創業した。1871年4月に始まった郵便事業の窓口である郵便局で、国が直営で小口の貯蓄を預かり始めた。同年1月には郵便為替事業が創業し、「郵便役所」の呼称も「郵便局」へ改められている。貯金は1885年12月発足の逓信省、1949年6月発足の郵政省、2003年4月発足の日本郵政公社へと所管を移しながら国の直営事業として続き、2007年10月の民営化で株式会社ゆうちょ銀行へ承継された。
- 背景
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郵便事業は1871年4月に前島密氏により創設され、民部省の駅逓司が所管した。1872年7月には全国的に実施され、1873年4月に郵便料金の全国均一制が敷かれている。手紙をどこへでも同じ料金で運ぶ網が、貯金より先に出来上がっていた。1875年1月には郵便為替事業が創業し、外国郵便の取扱いも始まっている。同じ窓口に為替と貯金を相次いで載せたのが、この年の郵政事業であった。
- 内容
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郵便貯金は専用の店舗網を持たず、郵便局の窓口で預かる形をとった。1885年12月に逓信省が発足すると、郵便事業・郵便為替事業とともに同省へ移管され、1906年3月に郵便振替事業、1916年10月に簡易生命保険事業が加わって、通信と金融を一体で担う国営の事業体が形づくられていく。郵政事業はその後も国の直営事業として実施され、1996年11月に発足した行政改革会議が「三事業一体として新たな公社」による実施を打ち出すまで、この形は変わらなかった。
- 含意
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郵便局で預かるという形は、創業から150年を経ても変わっていない。2026年3月末の直営店は全国235箇所にすぎず、日本郵便の郵便局19,701局と簡易郵便局3,370局に代理店を置いて、186.1兆円の貯金を預かる。うち個人貯金が90%超を占め、主として有価証券145.3兆円(国債41.4兆円、その他の証券88.2兆円)で運用している。入口には郵政民営化法による預入限度額があり、振替貯金を除き通常貯金・定期性貯金それぞれ1,300万円に制限されている。
窓口を持たずに集める銀行のかたち
この創業が決めたのは、預金を集める場所を自分では作らないという形であった。1873年に全国均一料金が敷かれた郵便局の網は、手紙のために引かれたものであって、貯蓄のために引かれたものではない。そこへ為替と貯金を相次いで載せた選択は、金融機関としての店舗投資をほとんど払わずに、当時の日本で最も細かく張られた窓口を手に入れることに等しかったとみることができる。150年後のゆうちょ銀行が、直営店235箇所に対して2万を超える郵便局に代理店を置くという他の銀行に例のない形をとっているのは、この起点から一度も外れていないためである。
もっとも、窓口を借りて集めるという形は、集めた資金の置き場についても自由を狭めてきた。創業以来の「集めて運用する」構造そのものは変わらないが、中身は入れ替わりつつあり、2026年3月末には国債41.4兆円を、外国債券などその他の証券88.2兆円が上回っている。一方で入口の側は、振替貯金を除き原則1,300万円という預入限度額に縛られたままである。集める量の上限を制度が決め、稼ぎの厚みは市場で取るリスクが決めるというこの非対称は、国が小口の貯蓄を抱えるために置いた器をそのまま引き継いだことの代償なのだろう。
Yutaka Sugiura, 2026年9月
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