中国のウエーハ会社の持分法適用会社化(2020年・フェローテックの決断)

フェローテック:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
連結の維持より外部資本を選んだ、中国子会社ごとの資金調達2020年度、フェローテックホールディングスは中国で半導体ウエーハを製造する杭州中欣晶圓半導体の株式の一部を、中国の地方政府と民間の投資基金などへ譲渡し、あわせて第三者割当増資を実施させた。グループの持株比率は29.50%に下がり、同社と子会社2社は第3四半期連結会計期間末に連結子会社から持分法適用関連会社へ移った。この取引で持分変動利益5,284百万円を特別利益に計上している。

何をなぜ決めたか:連結の維持より外部資本を選んだ、中国子会社ごとの資金調達

概要

2020年度、フェローテックホールディングスは中国で半導体ウエーハを製造する杭州中欣晶圓半導体の株式の一部を、中国の地方政府と民間の投資基金などへ譲渡し、あわせて第三者割当増資を実施させた。グループの持株比率は29.50%に下がり、同社と子会社2社は第3四半期連結会計期間末に連結子会社から持分法適用関連会社へ移った。この取引で持分変動利益5,284百万円を特別利益に計上している。

決めたときの社長は、2020年7月に就任した賀賢漢氏である。同じ期には、中国子会社の一部が事業拡大のために中国での上場を企図して準備を進め、親子会社の上場を前提としたグループガバナンスの仕組みの構築に着手していた。ウエーハ会社の非連結化は、中国子会社を事業ごとに外部資本へ開く方針の最初の一手だった。

背景

決断の前年、会社は中国での増産を借入と補助金で支えていた。2020年3月期の時点で、翌期の設備投資294億円を金融機関からの約95億円、中国ウエーハ子会社の現地借入約95億円、ウエーハ投資補助金約30億円、再生ウエーハ子会社の増資約40億円と手許資金で賄う計画だった。対処すべき課題には、中国市政府の補助金と政府系ファンドの出資金を含む資金調達の多様化を挙げている。

投資の規模は自己資本の厚みを上回りつつあった。有形固定資産の取得による支出は2019年3月期に34,811百万円、2020年3月期に33,796百万円で、2020年3月期末の純資産50,148百万円の3分の2に当たる額を2年続けて投じた。ウエーハ会社を連結に抱えたまま増産を続ければ、借入の積み増しか親会社の増資に依存するほかなかったとみられる。

内容

外部資本の受け入れは従業員にも開かれた。ウエーハ会社の増資は中国子会社の役員・従業員でつくる持株会も引き受け、その払込金額の90%相当は、フェローテックのグループが株式を譲渡した外部ファンドなどからの借入で賄い、残り10%を本人が払い込んだ。持株会の業務執行権限を持つ無限責任出資者は、賀賢漢社長が議決権の100%を持つ2社である。

増資は1回で終わらなかった。2021年5月には12インチウエーハの能力増強のための追加の増資を決議し、出資比率は29.5%から23.5%へ下がる見込みとなった。2022年3月期にはこの2回目の増資で持分変動利益9,327百万円を計上し、非支配株主からの払込みによる収入は22,701百万円に達した。部品洗浄子会社は2021年6月に上場を申請し、パワー半導体基板などの子会社も順に申請する見通しを示した。

いつ何が起きたか12件
筆者考察
考察

考察:連結の維持より選んだ外部資本

この決断が答えたのは、成長事業の資金を誰が出すかという問いである。親会社が借入と増資で子会社の増産を支え続ければ、連結の数字はそろうが、親会社の資本の厚みが投資の速さを縛る。フェローテックホールディングスは、ウエーハ会社の持株比率を29.50%まで下げて連結から外し、資金の出し手を中国の地方政府と投資基金へ広げた。非支配株主持分は1,679百万円から102,376百万円へ増加し、資金を調達するという狙いは達した。ただし、ウエーハ会社の上場は申請の取り下げで止まり、外部資本を上場で回す仕組みは決断から6年たってもまだ完成していない。

2017年に杭州のウエーハ会社と銅陵の部品洗浄会社を設立した時点では、中国の事業は親会社の連結の内側で育てる前提だった。2020年のウエーハ会社の非連結化がその前提を改め、2022年12月の安徽富楽徳科技発展の深圳上場、2025年9月の同社による江蘇富楽華半導体科技の子会社化へと続いた。2026年10月の安徽博芯微半導体科技の連結子会社化は、外部の出資者が立ち上げた会社に少数で出資し、育ったところで取り込むという逆向きの使い方である。共同出資者の董事長を賀賢漢社長が兼ねる点は、2020年の持株会と同じく、利害の線引きを投資家に説明し続ける負担を残すと思われる。

同じ半導体材料の業界で、資本の組み替えの方式は社ごとに異なった。凸版印刷は2022年4月にフォトマスク事業をテクセンドフォトマスクへ吸収分割で承継させ、事業ごと別会社に切り出した。JSRは2023年6月、政府系ファンドが所有するJICC-02による1株4,350円の公開買付けに賛同し、上場をやめて株主を一本化した。フェローテックはどちらとも異なり、親会社の上場を保ったまま、中国の子会社ごとに株主を増やした。違いを生んだのは、増産の舞台が中国にあり、地方政府と現地の投資基金が出資の担い手になれたことだろう。

数字で見る

フェローテック:純資産と非支配株主持分の推移

フェローテック:純資産と非支配株主持分の推移

非支配株主持分(百万円)非支配株主持分以外の純資産(百万円)

非支配株主持分は6年で1,679から102,376百万円へ増加

フェローテック:純資産と非支配株主持分の推移
(百万円)純資産合計非支配株主持分備考
2016年3月期39,489780
2017年3月期39,701454
2018年3月期51,812503
2019年3月期49,848323
2020年3月期50,1481,679
2021年3月期78,24011,064ウエーハ会社を第3四半期末に持分法適用会社へ移した
2022年3月期160,95729,888ウエーハ会社の2回目の増資で持分変動利益9,327を計上
2023年3月期249,65665,8872022年12月に安徽富楽徳科技発展が深圳創業板へ上場
2024年3月期278,16673,756
2025年3月期323,54986,718
2026年3月期362,075102,3762025年9月に上場子会社が江蘇富楽華を株式交換で子会社化
出所:フェローテックホールディングス 有価証券報告書 第36〜45期【連結貸借対照表】 / フェローテック 有価証券報告書 第46期【連結貸借対照表】
出所:フェローテックホールディングス 有価証券報告書 第36〜45期【連結貸借対照表】 / フェローテック 有価証券報告書 第46期【連結貸借対照表】
フェローテック:設備投資と非支配株主からの払込みの推移

フェローテック:設備投資と非支配株主からの払込みの推移

有形固定資産の取得による支出(百万円)非支配株主からの払込み(百万円)

2023年3月期は払込み47,607百万円が設備投資56,001百万円の8割強に相当

フェローテック:設備投資と非支配株主からの払込みの推移
(百万円)有形固定資産の取得による支出非支配株主からの払込みによる収入備考
2016年3月期3,440−連結CF計算書に非支配株主からの払込みの行がない
2017年3月期7,322−連結CF計算書に非支配株主からの払込みの行がない
2018年3月期11,08765
2019年3月期34,811212
2020年3月期33,7961,671
2021年3月期14,17615,149ウエーハ会社は第3四半期末で連結から除外した
2022年3月期33,58522,701
2023年3月期56,00147,607
2024年3月期74,4895,183
2025年3月期51,2392,997
2026年3月期54,19715,236
出所:フェローテックホールディングス 有価証券報告書 第36〜45期【連結キャッシュ・フロー計算書】 / フェローテック 有価証券報告書 第46期【連結キャッシュ・フロー計算書】
出所:フェローテックホールディングス 有価証券報告書 第36〜45期【連結キャッシュ・フロー計算書】 / フェローテック 有価証券報告書 第46期【連結キャッシュ・フロー計算書】
当時の取締役8名

取締役8名(2020年6月株主総会決議)

役員名役職
取締役業務執行担当領域
賀賢漢取締役:代表取締役業務執行:社長執行役員・グループCEO担当:
山村章取締役:代表取締役業務執行:会長担当:
山村丈取締役:代表取締役業務執行:副社長・執行役員担当:管理統括、欧米・アジア事業担当
宮永英治取締役:取締役業務執行:担当:米国事業担当
若木啓男取締役:取締役業務執行:執行役員担当:経営企画担当
中村久三取締役:取締役業務執行:担当:
柳澤邦昭取締役:取締役業務執行:担当:
鈴木孝則金融取締役:取締役業務執行:執行役員担当:財務経理・企画担当
この一覧は2020年6月の定時株主総会の直後に提出された有価証券報告書の【役員の状況】による。
参考文献

参考文献

参考

  • フェローテックホールディングス 有価証券報告書 第41期(2021年3月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
  • フェローテックホールディングス 有価証券報告書 第41期(2021年3月期)【関係会社の状況】【連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項】
  • フェローテック 公式サイト「沿革」
  • フェローテックホールディングス 有価証券報告書 第41期(2021年3月期)【コーポレート・ガバナンスの概要】
  • フェローテックホールディングス 有価証券報告書 第40期(2020年3月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
  • フェローテックホールディングス 有価証券報告書 第40期(2020年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】
  • フェローテックホールディングス 有価証券報告書 第39〜40期【連結キャッシュ・フロー計算書】【連結貸借対照表】
  • フェローテックホールディングス 有価証券報告書 第41期(2021年3月期)【関連当事者情報】
  • フェローテックホールディングス 有価証券報告書 第41期(2021年3月期)【重要な後発事象】
  • フェローテックホールディングス 2022年3月期第2四半期 WEB説明会 質疑応答要旨(2021年12月22日)
  • フェローテック 有価証券報告書 第46期(2026年3月期)【沿革】
  • フェローテックホールディングス 有価証券報告書 第38期(2018年3月期)【沿革】
  • フェローテックホールディングス 有価証券報告書 第41期(2021年3月期)【関係会社の状況】
  • フェローテックホールディングス 有価証券報告書 第43期(2023年3月期)【沿革】
  • フェローテックホールディングス 2024年3月期第2四半期 WEB説明会 質疑応答要旨(2023年12月6日)
  • フェローテックホールディングス 2025年3月期 決算説明会 質疑応答要旨(2025年6月4日)
  • フェローテックホールディングス 有価証券報告書 第36〜45期【連結貸借対照表】
  • フェローテック 有価証券報告書 第46期【連結貸借対照表】
  • フェローテックホールディングス 有価証券報告書 第36〜45期【連結キャッシュ・フロー計算書】
  • フェローテック 有価証券報告書 第46期【連結キャッシュ・フロー計算書】
  • フェローテック 臨時報告書「臨時報告書(特定子会社の異動・連結子会社による子会社取得)」
  • フェローテックホールディングス 決算説明会資料「2022年3月期第2四半期 アナリスト・機関投資家向けWEB説明会 質疑応答要旨」
  • フェローテックホールディングス 決算説明会資料「2022年3月期 アナリスト・機関投資家向けWEB説明会 質疑応答要旨」
  • フェローテックホールディングス 決算説明会資料「2024年3月期第2四半期 アナリスト・機関投資家向けWEB説明会 質疑応答要旨」
  • フェローテックホールディングス 決算説明会資料「2025年3月期 アナリスト・機関投資家向け決算説明会 質疑応答要旨」
  • フェローテック 決算説明会資料「2026年3月期中間期 アナリスト・機関投資家向け決算説明会 質疑応答要旨」
  • フェローテックホールディングス 有価証券報告書「第40期(2020年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】」
  • フェローテックホールディングス 有価証券報告書「第41期(2021年3月期)【関係会社の状況】【関連当事者情報】【重要な後発事象】」
  • フェローテックホールディングス 有価証券報告書「第42期(2022年3月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】」
  • フェローテック 有価証券報告書「第46期(2026年3月期)【沿革】【関係会社の状況】【役員の状況】」

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