OKIL-HOLDINGのロシア事業継続(2022年・サトーの決断)

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サトー:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)

何をなぜ決めたか:業績計画から除外し、現地資金で投資を続ける子会社の保有継続

概要
概要

2022年3月15日、サトーホールディングス(現サトー)は、欧州の販売子会社からのロシア向け取引を停止する一方、子会社を通じたロシア国内の事業は状況を注視して続けると開示した。決断は小瀧龍太郎社長のもとで下され、2023年4月に小沼宏行氏へ社長が交代した後も、継続の方針は変わっていない。2023年3月期の業績計画と以降の経営計画からロシア事業を除外したが、撤退は決めなかった。

計画から外した事業は利益を生み続けた。2023年3月期の連結営業利益8,841百万円に対し、ロシアを除く営業利益は5,297百万円で、差の約40%がロシア事業の分にあたる。2022年3月期の決算説明会で方針を問われて以降、決算後の質疑応答では同じ問いが繰り返し取り上げられている。

背景
背景

ロシア事業の出発点は買収である。2014年12月、ロシア参入の足掛かりとして、同国首位のラベル会社OKIL-HOLDINGの株式75%を取得した。取得価額は3,113百万円で、のれんは2,611百万円にのぼる。

買収後の損益は為替に振れた。2017年度第1四半期には、ユーロに対するルーブル高でOKILの営業利益が大きく低下した。ロシア子会社の売上の半分ほどがユーロ建てで、費用は主にルーブル建てとなっている。侵攻前の2022年3月期には、連結営業利益6,404百万円のうち、ロシアを除く分が5,352百万円で、差は1,052百万円であった。

内容
内容

継続には条件を付けた。ロシア子会社との輸出入と新規投資を止めたうえで事業を続ける前提を置き、2023年度からは本社で同事業を監督する執行役員を新たに任命した。主要な顧客は、消費者に食品や日用品を届ける企業である。

資金は現地で回した。2023年10月の質疑応答では、競争力を保つためにロシア子会社の手元資金で設備投資を進めていると説明した。2024年7月には、本社保証の借入金を返済してリスクを減らしているとも述べた。2024年10月には、選択肢ごとの財務影響を試算したうえで、当面は事業を続けるとの結論を示した。

沿革:意思決定前後の出来事12件
考察:計画の外に置いた事業の利益
考察

考察:計画の外に置いた事業の利益

なぜ撤退を決めなかったのか。OKILの顧客は消費者に食品や日用品を届ける企業で、3,113百万円で取得した事業は利益を生んでいた。撤退すれば、その利益を失ううえに損失が確定する。一方、業績計画から外しておけば、事業が悪化しても計画は崩れず、続けば上振れとして受け止められる。撤退も継続も確定させずに時間を確保できる点で、計画からの除外は合理的な選択だったと思われる。

ただ、計画の外に置いた利益が連結の大きな部分を占めると、会社の実力は読みにくくなる。2023年3月期は連結営業利益の約40%がロシア事業の分で、2024年3月期はOKILの当期純利益が連結の7割を超えた。投資家は計画の数字だけでは全体を判断できない。決算のたびに同じ問いが出た理由は、ここにあるとみられる。しかも資金は現地で回す前提であり、帳簿上の利益がそのまま本社の資金になるわけではない。

到達点は二面に分かれる。OKILの純資産は6,638百万円から14,376百万円へ積み上がったが、当期純利益は611百万円まで低下し、会社自身も約20%の利益率を異常値と認めた。高収益が消えると、持ち続ける理由は現地に積み上がった資産の回収へ移る。計画の外に置くという説明だけでは、次の判断を先送りできなくなる。決着は、14,376百万円の純資産をいつ、どの形で回収できるかで決まるだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年11月

数字で見る

数値:意思決定前後の事業数値1件

サトー:OKIL-HOLDINGの損益・資産と連結営業利益の推移

OKIL純資産(百万円)売上高当期純利益率(%)

OKILの純資産は2023年3月期の6,638百万円から2026年3月期に14,376百万円へ増加

サトー:OKIL-HOLDINGの損益・資産と連結営業利益の推移
(百万円)OKIL売上高OKIL当期純利益OKIL純資産連結営業利益備考
2017年3月期−−−6,104OKILの損益の個別開示は手元で確認できていない
2018年3月期−−−6,249OKILの損益の個別開示は手元で確認できていない
2019年3月期−−−7,679OKILの損益の個別開示は手元で確認できていない
2020年3月期−−−7,461OKILの損益の個別開示は手元で確認できていない
2021年3月期−−−5,847OKILの損益の個別開示は手元で確認できていない
2022年3月期−−−6,4043月に取引停止を開示。ロシア除きの営業利益は5,352
2023年3月期17,2322,5766,6388,841ロシア除きの営業利益は5,297。OKILは12月決算
2024年3月期15,8452,6288,97010,383
2025年3月期18,7742,46712,27412,341
2026年3月期20,45161114,37611,041
出所:サトーホールディングス 有価証券報告書 第73〜76期(関係会社の状況・主要な経営指標等の推移) / サトーホールディングス 決算説明会資料 FY2022
出所:サトーホールディングス 有価証券報告書 第73〜76期(関係会社の状況・主要な経営指標等の推移) / サトーホールディングス 決算説明会資料 FY2022
人物:意思決定前後の取締役9名

取締役9名(2021年6月株主総会決議)

区分役員名役職
取締役業務執行担当領域
業務執行兼務阿部陽一商社取締役:代表取締役業務執行:上席執行役員担当:
小瀧龍太郎取締役:代表取締役業務執行:社長・CEO担当:
鳴海達夫取締役:取締役業務執行:担当:
小沼宏行取締役:代表取締役業務執行:社長執行役員・グループCEO担当:
独立役員山田秀雄法曹取締役:社外取締役業務執行:担当:
田中優子学者取締役:社外取締役業務執行:担当:
藤重貞慶取締役:社外取締役業務執行:担当:
野々垣好子取締役:社外取締役業務執行:担当:
伊藤良二コンサル取締役:社外取締役業務執行:担当:
この一覧は2021年6月の定時株主総会の直後に提出された有価証券報告書の【役員の状況】による。
参考文献

参考文献

参考

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