デザイナー増員期の下方修正と報酬減額(2024年・グッドパッチの決断)

更新:
グッドパッチ:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)

何をなぜ決めたか:営業利益予想を93.6%下げた翌期に過去最高へ至る立て直し

概要
概要

2024年6月18日、グッドパッチは2024年8月期の通期業績予想を下方修正した。売上高は4,754百万円から3,946百万円へ、営業利益は405百万円から26百万円へ引き下げ、営業利益の減少率は93.6%に達した。同じ発表で経営責任を明確にするとして、土屋尚史社長の月額報酬を30%、槇島俊幸CFOの月額報酬を20%、いずれも3か月減額し、支給対象の全取締役の業績連動報酬を100%減額した。

実績は売上高3,942百万円、営業利益34百万円で着地した。翌2025年8月期は売上高5,085百万円、営業利益557百万円といずれも過去最高を更新し、創業以来初の配当を1株10円で実施した。2026年8月期は売上高5,197百万円と増収を保った一方、営業利益は447百万円へ19.8%減少した。

背景
背景

2023年8月期のグッドパッチは人材採用を抑え、正社員デザイナーは前期の158名から136名へ減少していた。本格的な採用は2024年8月期に回している。2023年10月に示した同期の計画は売上高4,754百万円、営業利益405百万円で、前期実績の3,928百万円、298百万円を大きく上回る。マーケティング・セールス・人材採用へリソースを積極投入するとして、年間50人を採用し、期末の正社員デザイナーを165人とする目標を置いた。

この計画は、新規と継続の受注が下半期を通じて増加する前提に立っていた。第3四半期に前提が崩れ、エンタープライズ顧客の予算確保が想定通りに進まず、継続案件は第2四半期より減少した。新規の有効商談も2024年3月から4月に減少し、検討期間の長い顧客を中心に案件の開始が第4四半期以降へずれ込んだ。継続分の減少を新規で補えず、デザイナー稼働率は当初の想定を下回る見込みとなった。

内容
内容

立て直しはマーケティングを含む営業戦略の見直しと営業組織の強化から始まり、5月の有効商談数は復調傾向に転じた。マーケティング担当者を4名採用してインサイドセールスも増員し、顧客企業の経営者層への営業を強めた。既存顧客との接点を強めるプロデューサー組織の設置も進め、第1四半期に増加した外注業務は内製化を進めた。

経営体制も組み替えた。2024年8月末に執行役員の大山翼氏が退任し、9月に井出日彦氏が執行役員CHRO、10月に木村直樹氏がデザインパートナー事業管掌の執行役員に就任した。2024年10月に示した2025年8月期の予想は売上高4,380百万円、営業利益204百万円で、月額平均顧客単価を5,200千円へ下げ、顧客社数を60社へ増加させる前提を置いた。

沿革:意思決定前後の出来事12件
考察:稼働率が決める受託の利益
考察

考察:稼働率が決める受託の利益

なぜ下方修正に報酬の減額を重ねたのか。営業利益は405百万円から26百万円へ減少するものの、赤字への転落ではない。修正の公表だけで済ませる選択肢もあったはずである。だが、この未達は前期に抑えた採用を本格化させた初年度に起きた。正社員デザイナーを165人へ増やす計画を掲げたまま修正だけを出せば、投資の継続に説明がつかない。先に経営責任を示し、計画の失敗と投資の継続を切り分ける狙いがあったのだろう。

ただ、報酬の減額は利益の構造を変えない。受託の売上は人が案件に入って初めて生まれ、正社員の費用は案件の有無にかかわらず発生する。同じ採用が、受注が拡大する局面では売上の上限を引き上げ、受注が減少する局面では利益を圧迫する。2024年8月期は売上高が14百万円しか増加しないなかで総費用が約2.8億円増加し、営業利益は34百万円となった。採用の成否は、人を集める力より、人を空けない受注の力で決まる構造である。

立て直しは数字の上で成果を出し、翌期の営業利益は過去最高を更新した。一方で、回復の局面の正社員デザイナーは161名から149名へ減少している。増員の成果というより、人数を絞った状態で稼働を高めた回復と読める。2026年8月期は160名へ増員を再開し、案件の縮小も重なって営業利益は447百万円へ減少した。決着は、増やした人員のもとで次に受注が減少する局面を迎えたとき、稼働率と利益を保てるかで決まると思われる。

Yutaka Sugiura, 2026年11月

数字で見る

数値:意思決定前後の事業数値2件

グッドパッチ:グッドパッチの業績の推移

売上高(百万円)営業利益率(%)

2024年8月期に34百万円まで減少した営業利益は、翌期に557百万円へ回復し、2026年8月期は447百万円となった

グッドパッチ:グッドパッチの業績の推移
(百万円)売上高営業利益備考
2019年8月期1,68375
2020年8月期2,1432162020年6月に東証マザーズへ上場
2021年8月期2,741406
2022年8月期3,724394
2023年8月期3,928298採用を抑制
2024年8月期3,94234期初予想は売上高4,754、営業利益405。報酬減額を決議
2025年8月期5,085557過去最高。初の配当を実施
2026年8月期5,197447決算短信の数値
出所:グッドパッチ 有価証券報告書 第9期(2020年8月期)、第10期(2021年8月期)、第14期(2025年8月期)【主要な経営指標等の推移】【連結損益計算書】 / グッドパッチ 2026年8月期 決算短信(2026年10月15日)
出所:グッドパッチ 有価証券報告書 第9期(2020年8月期)、第10期(2021年8月期)、第14期(2025年8月期)【主要な経営指標等の推移】【連結損益計算書】 / グッドパッチ 2026年8月期 決算短信(2026年10月15日)

グッドパッチ:顧客社数と月額平均顧客単価の推移

顧客社数(社・千円)月額平均顧客単価(千円)

顧客社数は2024年8月期の51.9社から65.7社へ増加し、月額平均顧客単価は2026年8月期に5,856千円へ低下した

グッドパッチ:顧客社数と月額平均顧客単価の推移
(社・千円)顧客社数月額平均顧客単価備考
2024年8月期51.95,497顧客社数の計画は65.4社
2025年8月期626,075
2026年8月期65.75,856
出所:グッドパッチ 2026年8月期 決算短信(2026年10月15日)。スタジオディテイルズとGoodpatch Anywhereを含む数値
出所:グッドパッチ 2026年8月期 決算短信(2026年10月15日)。スタジオディテイルズとGoodpatch Anywhereを含む数値
人物:意思決定前後の取締役5名

取締役5名(2023年11月株主総会決議)

区分役員名役職
取締役業務執行担当領域
業務執行兼務土屋尚史取締役:代表取締役社長業務執行:担当:
槇島俊幸取締役:取締役執行役員CFO業務執行:担当:
独立役員広木大地取締役:取締役業務執行:担当:
佐藤あすか取締役:取締役業務執行:担当:
小塚裕史取締役:取締役業務執行:担当:
この一覧は2023年11月の定時株主総会の直後に提出された有価証券報告書の【役員の状況】による。
参考文献

参考文献

参考

次に読む決断

同業他社の業績概況

免責事項およびポリシー