スタジオディテイルズの買収(2021年・グッドパッチの決断)

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グッドパッチ:業績の推移
売上高(億円)経常利益率(%)

何をなぜ決めたか:名古屋の制作会社に始まり、AIツールと開発の会社へ続く3件の買収

概要
概要

2021年12月22日、グッドパッチは名古屋のスタジオディテイルズの全株式を取得し、完全子会社とした。創業者の海部洋氏と服部友厚氏が50%ずつ保有していた会社で、デザインパートナー事業のデザイナーは合わせて146名となる。取得価額は開示の時点で守秘義務を理由に伏せられ、翌年の有価証券報告書で現金700百万円と示された。のれんは571百万円で、9年の均等償却とした。

買収はこの1件で終わらなかった。2025年10月にAIデザインツールのLayermate、2026年9月にAI駆動開発を手がけるBandを子会社化している。2026年8月期末ののれんは285百万円で、当初の571百万円のほぼ半分まで償却が進んだ。

背景
背景

2020年6月に上場したグッドパッチは、半年余り後の2021年1月、野村證券を割当先とする第6回・第7回新株予約権の発行を決議した。第7回には、1億円以上の支出を伴うM&Aを開示するまで行使できない停止指定を付けている。第6回は2021年3月に行使を完了し、2021年8月期末の現金及び現金同等物は前期末の939百万円から2,780百万円へ増加した。買収の資金を先に用意した形となる。

取得先のスタジオディテイルズは2009年1月の創業で、100社超の顧客を持ち、受賞した広告賞は80以上にのぼる。2021年9月期の売上高は567百万円、営業利益は17百万円、純資産は61百万円だった。営業利益は2019年9月期の27百万円から2020年9月期に61千円まで低下した後の水準にあった。

内容
内容

取得の理由に挙げたのは、自社の戦略デザインやUI/UXデザインと、スタジオディテイルズのクリエイティブ・ブランディングの融合で、国内随一のデザインカンパニーの地位を得ることである。買収の開示によって第7回新株予約権の停止指定は失効し、2022年8月期の行使等で資本金と資本剰余金がそれぞれ275百万円増加した。

2022年3月から連結に入り、半年間の売上高は272百万円、M&A関連費用を差し引く前の営業利益は39百万円で、のれん償却費等の35百万円を上回った。連結の営業利益は期首予想518百万円に対して394百万円にとどまった。2023年1月には難波謙太氏がスタジオディテイルズの社長に就任し、海部洋氏は顧問へ移った。

沿革:意思決定前後の出来事12件
考察:人が資産の会社を買収する難しさ
考察

考察:人が資産の会社を買収する難しさ

なぜ採用ではなく買収だったのか。受託のデザイン支援では、売上の上限はデザイナーの数でほぼ決まる。2021年8月末の122名に24名を足す取引は、採用より速いだけでなく、100社超の顧客も同時に得られる。上場の半年余り後に、M&Aを開示するまで行使できない新株予約権を組んだ点に、この経路を早くから本命としていた意思が表れていると思われる。資金の設計を買収に先立って置いた手順は、上場直後の会社としては周到である。

ただ、人が資産の会社を買えば、700百万円の価値を支えるのは人と案件だけになる。取得先の純資産は61百万円で、のれんは571百万円に達した。取得の前年には営業利益がほぼゼロまで低下しており、案件の増減で利益が大きく振れる規模であることは買う前から読めたはずである。創業者の海部洋氏は約1年で顧問へ移り、経営の引き継ぎも早かった。ブランドと顧客の関係を社長個人から組織へ移せるかが、のれんの回収を左右する論点であったのだろう。

到達点はまだ割れている。1件目の営業利益は、基準は異なるものの取得時の17百万円から2025年8月期の93百万円へ伸長し、買収の狙いは一度は当たった。しかし翌期の大型案件の終了で単価は計画を下回り、のれんは285百万円が残る。デザイナーも2026年8月期末で160名と計画の180名に届いていない。2件目以降は規模が小さく、判定できる数字が無い。残るのれんを償却し終えるまでに、単価を回復させて案件の偏りを解消できるかが決着の条件となる。

Yutaka Sugiura, 2026年11月

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数値:意思決定前後の事業数値2件

グッドパッチ:のれんと連結営業利益の推移

のれん(百万円)営業利益(百万円)

のれんは2022年8月期の539百万円から年63百万円ずつ減少し、2026年8月期に285百万円となった

グッドパッチ:のれんと連結営業利益の推移
(百万円)のれん営業利益備考
2019年8月期075
2020年8月期02162020年6月に上場
2021年8月期0406
2022年8月期539394スタジオディテイルズを取得。当初ののれん571百万円を9年で償却
2023年8月期476298
2024年8月期41234
2025年8月期349557営業利益は過去最高
2026年8月期285447決算短信の値。Layermateを連結
出所:グッドパッチ 有価証券報告書 第9期(2020年8月期)〜第14期(2025年8月期)(連結貸借対照表・連結損益計算書) / グッドパッチ 2026年8月期 決算短信(2026年10月15日)
出所:グッドパッチ 有価証券報告書 第9期(2020年8月期)〜第14期(2025年8月期)(連結貸借対照表・連結損益計算書) / グッドパッチ 2026年8月期 決算短信(2026年10月15日)

グッドパッチ:スタジオディテイルズ単体の業績の推移

売上高(百万円)経常利益率(%)

単体の売上高は取得前の567百万円から2025年8月期に879百万円へ増加した

グッドパッチ:スタジオディテイルズ単体の業績の推移
(百万円)売上高経常利益当期純利益備考
2019年9月期3973024取得前
2020年9月期52041取得前
2021年9月期5673123取得前の最終の開示
2023年8月期5824128
2024年8月期6452819
2025年8月期879182118単体の値で、説明資料のユニット別の売上高775百万円とは基準が異なる
出所:グッドパッチ 適時開示「株式会社スタジオディテイルズの株式取得(子会社化)に関するお知らせ」(2021年12月22日) / グッドパッチ 有価証券報告書 第12期(2023年8月期)、第13期(2024年8月期)、第14期(2025年8月期)【関係会社の状況】
出所:グッドパッチ 適時開示「株式会社スタジオディテイルズの株式取得(子会社化)に関するお知らせ」(2021年12月22日) / グッドパッチ 有価証券報告書 第12期(2023年8月期)、第13期(2024年8月期)、第14期(2025年8月期)【関係会社の状況】
人物:意思決定前後の取締役5名

取締役5名(2021年11月株主総会決議)

区分役員名役職
取締役業務執行担当領域
業務執行兼務土屋尚史取締役:代表取締役社長業務執行:担当:
松岡毅取締役:取締役執行役員業務執行:担当:
實方ボリス取締役:取締役業務執行:担当:
槇島俊幸取締役:取締役執行役員CFO業務執行:担当:
独立役員山口拓己取締役:取締役業務執行:担当:
この一覧は2021年11月の定時株主総会の直後に提出された有価証券報告書の【役員の状況】による。
参考文献

参考文献

参考

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