インテックとの経営統合(2007年・TISインテックの決断)

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論点 規模を確保する統合をどの形で行うか
TISインテック:業績の推移
売上高(億円)当期純利益率(%)
共同株式移転による持株会社ITホールディングスの設立

何をなぜ決めたか:共同株式移転による持株会社ITホールディングスの設立

概要

2007年12月、TISと富山市に本社を置く株式会社インテックホールディングスが、株式移転により両社の完全親会社となる共同持株会社を設立することで基本合意した。2008年2月に両社の臨時株主総会が承認し、2008年4月1日、共同株式移転により持株会社ITホールディングス株式会社が発足、同日その普通株式を東京証券取引所市場第一部へ上場した。両社はITホールディングスの完全子会社となっている。

株式移転比率はTIS1に対しインテックホールディングス0.79、交付株式数は86,372,339株で、結合後の議決権比率はTIS側53.8%、インテックホールディングス側46.2%となった。本店はインテックの本拠である富山県富山市牛島新町に置き、代表取締役会長に中尾哲雄氏、代表取締役社長に岡本晋氏が就任している。

背景

統合を決めた2007年3月期、TISの連結売上高2,115億円に対し営業利益は△0百万円、当期純利益は△818百万円だった。クレジットカード会社向け大型案件の不採算がおもな要因で、翌2008年3月期はその解消と運用コスト・諸経費の削減により営業利益104億円へ戻している。過年度から継続していたその大型案件の開発が完了し、システムが稼働したのは2008年11月である。一件の案件の損益が決算を反転させる体格だった。

業種別の売上構成も両社で重ならない。2008年3月期のTIS連結はカードが26.0%で最大、銀行は6.5%にとどまる。インテック単体は製造31.4%、金融28.6%、流通・サービス28.1%、公共11.9%と分散していた。

内容

掲げた目的は、グループ企業価値の向上に努めるとともに、企業の社会的責任を果たし、よりよいIT社会の実現に貢献すること。株式移転比率はTISが野村證券、インテックホールディングスが三菱UFJ証券をフィナンシャル・アドバイザーに指名し、それぞれの第三者評価を勘案した協議・交渉で決めた。

会計処理は持分プーリング法である。共同支配企業の形成でも共通支配下の取引でもないことを確認したうえで、対価要件・議決権比率要件・議決権比率以外の支配要件を検討した結果、取得ではなく持分の結合と判定した。取得企業を決めないため、この統合からはのれんも負ののれんも生じていない。引き継いだ純資産はTIS751億円、インテックホールディングス560億円、設立時の資本金は100億円、企業結合に要した支出額は創立費110百万円にとどまった。

含意

2008年5月、ITホールディングスは2010年度に売上高4,000億円・営業利益400億円、その先に5,000億円・500億円という目標を置いた。統合直前の2008年3月期は、TIS連結とインテックホールディングス連結の単純合算で売上高3,224億円・営業利益199億円である。初年度の2009年3月期は売上高3,383億円・営業利益238億円、連結従業員数15,259人となった。

しかし2010年度にあたる2011年3月期は売上高3,232億円・営業利益128億円で、目標には遠く届かなかった。統合の主題は規模の確保から傘下の組み替えへ移り、2009年10月のインテックによるインテックホールディングス吸収合併、2009年12月のソラン子会社化、2011年4月のTIS・ソラン・ユーフィット3社合併、2016年7月の持株会社と事業会社の合併へと続いていく。

いつ何が起きたか 10件
考察:対等であることに、いくら払ったか
考察

考察:対等であることに、いくら払ったか

この統合の性格は、会計処理にあらわれている。対価要件・議決権比率要件・議決権比率以外の支配要件のいずれをとっても一方が他方を取得したとは言えず、適用されたのは持分プーリング法だった。取得企業を決めず、のれんも立たない。文字どおりの対等である。だが対等であることは無料ではなかった。新設した持株会社の下に二つの事業会社が並ぶ形は、一方が他方を買う形に比べて手続きが重く、統合後も階層が二重に残る。中間持株会社の解消、子会社9社の付け替え、事業会社どうしの合併と組み替えが続き、ひとつの事業会社になるまでに8年を要した。設立そのものは創立費110百万円で済んだ代わりに、支払いは時間の形でなされたのだろう。

もっとも、規模を取りにいった動機の側には、答えの出ていない問いが残る。統合を決めた2007年3月期のTISは、売上高2,115億円に対して営業利益がほぼ消えていた。一件の大型案件の不採算が決算を反転させる体格だったことが、規模を求めた理由である。しかし規模は失敗の影響を薄めるが、失敗を減らすわけではない。掲げた2010年度の売上高4,000億円は、その年度にあたる2011年3月期の3,232億円で届かなかった。規模の確保という当初の答えが効かなかったからこそ、統合の主題は数年を置かずに傘下の組み替えへ移っていったのだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
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図と表

TISインテック:統合前後の連結業績

売上高(百万円)営業利益率(%)
TISインテック:統合前後の連結業績
(百万円) 売上高営業利益当期純利益 備考
2007年3月期 211,5810△818 TIS連結のみ。営業利益は△0百万円で実質ゼロ、最終損益も赤字
2008年3月期 322,41219,9738,673 TIS連結とインテックホールディングス連結の単純合算。会社公表値
2009年3月期 338,30223,7879,406 統合初年度。2008年7月にネクスウェイを子会社化した分を含む
2010年3月期 313,85615,9967,659
2011年3月期 323,17312,8185,985 2010年度。統合時に掲げた売上高4,000億円の目標年度にあたる
2012年3月期 327,41715,6212,135 2011年4月のTIS・ソラン・ユーフィット3社合併に伴う特別損失を計上
2013年3月期 337,83418,1715,868
2014年3月期 346,64719,5107,913
出所:ITホールディングス 有価証券報告書 第1期〜第6期(連結経営成績の分析) / ITホールディングス 2008年3月期決算説明会資料(TIS連結・インテックホールディングス連結・単純合算)
出所:ITホールディングス 有価証券報告書 第1期〜第6期(連結経営成績の分析) / ITホールディングス 2008年3月期決算説明会資料(TIS連結・インテックホールディングス連結・単純合算)

経営統合の条件

経営統合の条件
科目 概要 備考
結合当事企業 TISとインテックホールディングス どちらも情報サービス事業。結合後企業の名称はITホールディングス株式会社
企業結合の法的形式 株式移転(共同株式移転) 新設した完全親会社の下に両社が並び、それぞれ同社の完全子会社となる
企業結合日 2008年4月1日 同日、ITホールディングスの普通株式を東京証券取引所市場第一部へ上場
株式移転比率 TIS1:インテックホールディングス0.79 TISは野村證券、インテックホールディングスは三菱UFJ証券の評価を勘案し決定
交付株式数 86,372,339株 設立時の発行済株式総数と同数。株式移転計画新株予約権に代わる新株予約権も同日交付
企業結合後の議決権比率 TIS53.8%/インテックホールディングス46.2% 各社株主がITホールディングスに対して有することになった議決権比率
取得企業を決定するに至った経緯 取得企業を決定せず(持分プーリング法) 対価要件・議決権比率要件・議決権比率以外の支配要件を検討し持分の結合と判定
のれん 発生していない 持分の結合と判定したため、のれんも負ののれんも生じない
引き継いだ純資産(TIS) 75,132百万円 資産合計124,105百万円、負債合計48,972百万円
引き継いだ純資産(インテックホールディングス) 56,075百万円 資産合計64,670百万円、負債合計8,595百万円
資本金の額 10,000百万円 資本準備金は2,500百万円。いずれも2008年4月1日の設立時に計上
企業結合に要した支出額 創立費110百万円 会計処理方法の統一と企業結合前の取引等の消去はいずれも該当なし
出所:ITホールディングス 有価証券報告書 第1期(2009年3月期)【企業結合等関係】【沿革】【発行済株式総数、資本金等の推移】
出所:ITホールディングス 有価証券報告書 第1期(2009年3月期)【企業結合等関係】【沿革】【発行済株式総数、資本金等の推移】
参考文献

参考文献

参考
  • TIS 有価証券報告書 第17期(2025年3月期)【沿革】
  • TIS株式会社 沿革(公式サイト)
  • ITホールディングス 決算説明会資料「2008年3月期決算説明会」
  • ITホールディングス 有価証券報告書「第1期(2009年3月期)【企業結合等関係】【沿革】【発行済株式総数、資本金等の推移】」
  • ITホールディングス 有価証券報告書「第3期(2011年3月期)【沿革】」
  • ITホールディングス 有価証券報告書「第2期〜第6期(2010年3月期〜2014年3月期)【経営成績の分析】」

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