明治製菓・明治乳業の統合(2008年・明治HDの決断)

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論点 成熟市場で菓子と乳業は単独で残れるか
明治HD:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
共同株式移転と食品・医薬品への事業区分の引き直し

何をなぜ決めたか:共同株式移転と食品・医薬品への事業区分の引き直し

概要

2008年9月11日、明治製菓と明治乳業の両取締役会が株式移転計画書を作成し、経営統合に関する統合契約書を締結した。同年11月の臨時株主総会で承認を得て、2009年4月1日、共同株式移転により明治ホールディングスが発足する。

明治製菓1株に持株会社0.1株、明治乳業1株に0.117株を割り当て、交付した新株式は76,341,700株。企業結合後の議決権比率は明治製菓49.73%、明治乳業50.27%となった。両社の株式は同年3月26日に上場廃止となり、持株会社が同日付で東京証券取引所市場第一部に上場した。

背景

統合の理由に挙げたのは、人口減少・高齢化による中長期的な市場規模の縮小、世界的な原材料の高騰、成熟市場における企業間競争の激化である。その一方で食生活の多様化・健康意識の向上・食の安全意識の高まりを捉えた商品開発とマーケティングの強化も課題となっていた。

ともに旧・明治製糖を起源とする両社は、歴史的な関係に加えて近年も商品の共同開発で協力関係を築いていた。ブランド力・研究開発力・技術力・マーケティング力を最大限に活用することが最良の選択肢との結論に至り、売上高1兆円を超える世界有数の「食と健康」企業グループを掲げた。

内容

会計上の取得企業は置かなかった。共同支配企業の形成でも共通支配下の取引でもないことを確認したうえで、対価要件・議決権比率要件・議決権比率以外の支配要件を検討し、持分の結合と判定して持分プーリング法を適用している。資産・負債は帳簿価額のまま引き継がれ、のれんも負ののれんも計上していない。

引き継いだ資産は明治製菓が330,878百万円、明治乳業が393,169百万円。持株会社の資本金は30,000百万円、資本準備金は7,500百万円で、企業結合のために支出したのは創立費129百万円だけだった。

含意

持株会社ができても、事業は会社ごとに分かれたままだった。2011年2月に吸収分割契約を締結し、同年4月1日に明治製菓はMeiji Seika ファルマへ、明治乳業は株式会社 明治へ商号を変更し、明治製菓が持っていたフード&ヘルスケア事業を明治乳業側へ移した。

会社の区分は菓子と乳業から食品と医薬品へ引き直され、報告セグメントも2011年3月期から食品・薬品の2区分になる。食品のセグメント利益は2012年3月期の82億円から2019年3月期の848億円へ伸びた。

いつ何が起きたか 8件
考察:買収せずに組んだ統合
考察

考察:買収せずに組んだ統合

この統合は同じ「明治」を名乗る兄弟会社の再結合と読まれやすいが、会計の扱いはその読みを裏切らない形で対等だった。取得企業を置かず持分の結合と判定して持分プーリング法を適用し、資産・負債は帳簿価額のまま移り、のれんも負ののれんも立たない。企業結合のために支出したのは創立費129百万円だけである。買収なら生じるはずの値付けも対価も、この統合には最初から無かった。持株会社を作る費用がかからないということは、持株会社そのものは何も生まないということでもあったのだろう。

もっとも、値打ちが出たのは持株会社ではなく事業の組み替えのほうだった。2011年4月に菓子と乳業という会社の区分を解いて食品と医薬品へ引き直すと、食品のセグメント利益は2012年3月期の82億円から2019年3月期の848億円へ伸びた。分けていた兄弟を戻すだけでは足りず、戻したうえで事業の輪郭を引き直せるかが問われた——持株会社の設立から2年を置いた再編の順序に、この統合の要点がある。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
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図と表

明治HD:事業区分別の売上高とセグメント利益

食品 売上高(百万円)医薬品 売上高(百万円)食品 セグメント利益率(%)
明治HD:事業区分別の売上高とセグメント利益
(百万円) 食品 売上高医薬品 売上高食品 セグメント利益医薬品 セグメント利益 備考
2010年3月期 −124,984−8,480 乳製品・菓子・健康・医薬品・サービス他の4区分で、食品として括った数字は無い
2011年3月期 988,037122,96322,3227,522 報告セグメントを食品・薬品の2区分へ改めた期
2012年3月期 985,134124,1408,18619,503 2011年4月に株式会社 明治とMeiji Seika ファルマへ再編
2013年3月期 1,000,346126,17419,3836,461
2014年3月期 1,015,265135,1058,35626,546
2015年3月期 1,021,284139,86741,66410,076 医薬品はMedreich Limitedの3か月分を含む
2016年3月期 1,060,775162,97068,28910,118
2017年3月期 1,081,577160,90282,9505,781
2018年3月期 1,073,077167,78384,18911,025
2019年3月期 1,056,107198,27384,76314,243
出所:明治ホールディングス 有価証券報告書 第1〜10期(セグメント情報)
出所:明治ホールディングス 有価証券報告書 第1〜10期(セグメント情報)

明治HD:のれんと純資産・総資産の推移

純資産(百万円)負債(百万円)
明治HD:のれんと純資産・総資産の推移
(百万円) のれん純資産総資産 備考
2010年3月期 899289,885730,044 統合でのれんは発生せず、残高は子会社株式の取得によるもの
2011年3月期 1,582287,782716,368
2012年3月期 270298,491749,985
2013年3月期 161320,609785,514
2014年3月期 41328,121779,461
2015年3月期 23,323370,341877,367 Medreich Limitedの取得でのれん23,996百万円を暫定計上。表は償却後の期末残高
2016年3月期 14,560408,874856,115
2017年3月期 12,840448,901883,895
2018年3月期 10,590487,311925,237
2019年3月期 73527,3101,004,143
出所:明治ホールディングス 有価証券報告書 第1〜10期(連結貸借対照表)
出所:明治ホールディングス 有価証券報告書 第1〜10期(連結貸借対照表)

統合の条件

統合の条件
科目 概要 備考
結合当事企業 明治製菓株式会社/明治乳業株式会社 明治製菓は菓子・食品、薬品等の製造、販売等。明治乳業は牛乳・乳製品等を原料とする食品の製造・販売等
統合の法的形式 株式移転 両社の株主が保有する株式を持株会社へ移転し、新株式の割当てを受ける共同株式移転
統合契約の締結 2008年9月11日 両社取締役会で承認のうえ株式移転計画書を作成し、経営統合に関する統合契約書を締結
株主総会の承認 2008年11月 両社の臨時株主総会が、株式移転による持株会社設立と両社の完全子会社化を了承
企業結合日 2009年4月1日 同日、明治ホールディングスの普通株式を東京証券取引所市場第一部に上場
株式移転比率 明治製菓1:明治乳業1.17 明治製菓1株に持株会社0.1株、明治乳業1株に0.117株を割当て交付。単元株式数は100株
交付した新株式数 76,341,700株 明治製菓の株主へ37,907,200株、明治乳業の株主へ38,434,500株
企業結合後の議決権比率 明治製菓49.73%/明治乳業50.27% 移転比率の算定は明治製菓がアーンストアンドヤング、明治乳業がPwCアドバイザリーに依頼
取得企業を決定するに至った経緯 取得企業を置かず持分の結合と判定 共同支配企業の形成でも共通支配下の取引でもないことを確認し、対価要件と議決権比率要件等を検討
会計処理 持分プーリング法 資産・負債を帳簿価額のまま引き継ぐ処理。連結財務諸表に含めた業績の期間は2009年4月からの1年
のれん 計上なし 持分の結合と判定したため、のれんも負ののれんも発生していない
明治製菓から引き継いだ資産・純資産 330,878百万円/144,854百万円 流動資産147,174・固定資産183,704百万円。負債合計は186,024百万円
明治乳業から引き継いだ資産・純資産 393,169百万円/147,303百万円 流動資産148,793・固定資産244,376百万円。負債合計は245,865百万円
資本金の額 30,000百万円 資本準備金は7,500百万円。いずれも会社設立による計上
企業結合に要した支出 創立費129百万円 会計処理方法の統一と企業結合前の取引等の消去はいずれも該当なし
両社の上場廃止日 2009年3月26日 最終取引日は3月25日。明治製菓は東証第一部、明治乳業は東証・名証第一部
出所:明治ホールディングス 有価証券報告書 第1期(2010年3月期)【企業結合等関係】、明治製菓 有価証券報告書 第150期(2009年3月期)・明治乳業 有価証券報告書 第131期(2009年3月期)【経営上の重要な契約等】
出所:明治ホールディングス 有価証券報告書 第1期(2010年3月期)【企業結合等関係】、明治製菓 有価証券報告書 第150期(2009年3月期)・明治乳業 有価証券報告書 第131期(2009年3月期)【経営上の重要な契約等】
参考文献

参考文献

参考
  • 明治製菓 有価証券報告書「第150期(2009年3月期)【経営上の重要な契約等】」
  • 明治乳業 有価証券報告書「第131期(2009年3月期)【経営上の重要な契約等】【沿革】」
  • 明治ホールディングス 有価証券報告書「第1期(2010年3月期)【企業結合等関係】」
  • 明治ホールディングス 有価証券報告書「第3期(2012年3月期)【沿革】【企業集団の状況】」
  • 明治ホールディングス 有価証券報告書「第6期(2015年3月期)【企業結合等関係】」

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