明治ホールディングスの直近の動向と展望

/

明治ホールディングスの直近の業績・経営課題・市場ポジションと、今後の展望をまとめたページです。

セグメント構成や中期的な論点を、現経営陣の発信と有価証券報告書の記述をもとに整理しています。

直近の動向と展望

コスタイベの夢と、それが潰れた仕組み

2022年度を境に、明治ホールディングスは複合的な逆風に直面した。円安と資源高によって年間およそ295億円もの原材料コストアップが発生し、食品セグメントの営業利益は2020年3月期の1,033億円から559億円(2023年3月期)へ急落した。プロバイオティクス製品のR-1やLG21は、価格改定後の数量減少と感染症需要の沈静化が重なって低迷し、2023年3月期の全社営業利益は754億円(前年比▲19%)となった。価格転嫁を競合に先行して実施した結果、他社が値上げを見送るなかで主力のブルガリアヨーグルトの販売数量はおよそ9割にまで落ち込み、リーディングカンパニーとしての価格戦略の難しさを露呈した。

2024年5月に策定した2026中期経営計画でコスタイベを医薬品戦略の柱に据えた直後、同年秋にSNS上で風評被害が拡大した。レプリコンワクチン(自己増幅型mRNA)の安全性への不安がネット上で共有され、一部の医療団体や地方自治体が接種見合わせを表明する動きへと広がり、医療機関での接種控えが業界全体に波及した。当初3,200万回と見込んでいた接種回数は300〜600万回程度にまで落ち込み、コスタイベの棚卸評価損が2025年3月期の純利益を508億円にまで圧縮した。KMバイオロジクス買収(2018年)から6年をかけて育てた国産ワクチン戦略の中核が、市場の受容という最後の関門で失速した形である。承認と製造能力だけでは国産次世代ワクチンを育てきれないという、新しい課題が浮かび上がった。

「茹でガエル」宣言後の生産・人事改革

2025年6月、松田克也が第4代の代表取締役社長に就任した。川村前社長の積み残した経営課題――食品数量の回復、中国事業での損失、コスタイベをめぐるリスク――を引き継ぎつつ、松田は投下資本利益率マネジメントの強化、生産拠点の統廃合加速、そして売上1,000億円規模の新領域となる食と医のシナジー創出を改革の軸として据えた。2025年11月には四国明治の生産終了と「ネクストキャリア特別支援」という名の早期退職およびキャリア転換支援策を発表し、特別損失11億円を計上した。ジョブ型人事制度の導入も同じタイミングで表明し、組織改革と人事制度改革を同時並行で進める方針を打ち出した。

松田社長は「歴史であったり、社員の強みであったり、医と食の知見・技術こそが強みだと考えています。しかしこの強みをここ数年で発揮できてきたかと言ったら、そうではない。その強みが逆に弱みとなったのがこの数年だと思います」(2025年度第2四半期決算説明会)と率直に語り、組織の「茹でガエル」状態からの脱却を宣言した。2026年3月期は通期営業利益910億円達成の確度が高まっており、来期の2027年3月期には営業利益1,000億円を目指す方針を示している。ただし2026中期経営計画で掲げる1,165億円目標については「非常にハードルが高い」と認めており、食と医のシナジーを実際の新事業として形にする作業は、現在進行形で続いている。

参考文献・出所

有価証券報告書
日経ビジネス 1980/8/25
決算説明会 FY25-2Q
ダイヤモンド会社産業総覧 1964年版
明治製菓の歩み:創立から50年
経済時代 1965/12
会社年鑑 昭和61年版(1986)
日経ビジネス 1990/12/31
東洋経済オンライン 2008/9/30
決算説明会 FY23本決算・26中計
明治HD 統合報告書 FY23
決算説明会 FY22本決算
決算説明会 FY24-2Q
決算説明会 FY24本決算
決算説明会 FY25-3Q