デスクトップクラウド不正アクセスへの対応(2026年・GMOインターネットグループの決断)

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GMOインターネットグループ:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
約80億円の要求の拒否と、被害を問わない補償と懸賞金による対抗2026年10月24日、連結子会社のGMOインターネットは「お名前.com デスクトップクラウド」への不正アクセスについて対応方針を公表し、GMOインターネットグループも同日に適時開示した。現在の利用者全員へ一律5,000円のお見舞金を支払い、不正取引で生じた実現損失を補償し、独立したクラウド基盤の代替サービスを6か月間無償で提供する。攻撃者とみられる者からの金銭の要求には応じないと明言した。

何をなぜ決めたか:約80億円の要求の拒否と、被害を問わない補償と懸賞金による対抗

概要

2026年10月24日、連結子会社のGMOインターネットは「お名前.com デスクトップクラウド」への不正アクセスについて対応方針を公表し、GMOインターネットグループも同日に適時開示した。現在の利用者全員へ一律5,000円のお見舞金を支払い、不正取引で生じた実現損失を補償し、独立したクラウド基盤の代替サービスを6か月間無償で提供する。攻撃者とみられる者からの金銭の要求には応じないと明言した。

要求額は約80億円で、サービスを止めた10月21日に脅迫メールで届いていた。10月27日には、要求に永久に応じない方針を改めて示し、公開が確認された情報の区分ごとに1公開あたり上限300万円の特別お見舞金と、総額100万米ドル(約1億5,000万円)を上限とする「GMOサイバー犯罪撲滅・懸賞金」を打ち出した。懸賞金の実施主体と費用負担はGMOインターネットグループである。

背景

2026年10月19日、利用者からの問い合わせで調査を始めたGMOインターネットは、翌20日に一部のサーバー環境で第三者の不正なプログラムを確認した。同日に新規申し込みとコントロールパネルを止め、21日午前4時から全プランのサーバーを順次停止した。影響の可能性があるサーバーは26,739件で、取引ツール等に保存された取引口座のログイン情報が含まれ、取得された情報が不正に利用された可能性があった。

運営会社のGMOインターネットは、2025年1月に本体からドメイン・クラウド・レンタルサーバー・プロバイダーの各事業を吸収分割で承継し、プライム市場へ移った上場子会社である。これらを含むインターネットインフラ事業は、2025年12月期に売上収益175,708百万円、セグメント利益41,700百万円を上げ、10期連続で最高業績を更新していた。グループは2022年2月にイエラエセキュリティを子会社化してサイバーセキュリティ事業へ参入しており、その売上収益は同期に6,244百万円となった。

内容

要求を退けた理由は、応じても取得された情報の削除や不正利用の防止が保証されないことである。脅迫は、国内外の70を超える証券会社・FX会社の口座への不正操作の継続、利用者のPCに関する情報の公開とランサムウェア攻撃、システムや運用体制の情報の公開の3点に及んだ。会社は通信記録等の証拠を警察当局へ提出し、刑事事件として捜査を求めた。

補償は、取引所等が返金した額を差し引いた残額を支払い、取引所等が返金に応じない場合も支払う。不正アクセスを受けた現行のシステム基盤での再開は見送り、セキュリティアーキテクチャの刷新を選んだ。あわせて能動的サイバー防御の「発動第1号」として、国主導による攻撃基盤の追跡・遮断を政府関係機関へ具申し、熊谷正寿グループ代表は翌25日に具申の理由を代表ブログで公表した。

いつ何が起きたか12件
筆者考察
考察

考察:要求を拒み、補償を引き受けた代償

この決断は、顧客の資産と情報を人質に取られた事業者が、攻撃者に支払って被害の拡大を止めるか、支払わずに被害を自ら引き受けるかという問いへの答えである。GMOインターネットグループは約80億円の要求を退け、支払っても情報の削除は保証されないと理由を示した。その代わりに、利用者全員への一律5,000円、不正取引の実現損失、公開された情報への1公開上限300万円と補償を三層に重ね、総額100万米ドルを上限とする懸賞金を親会社の負担で設けた。影響額はまだ算定されておらず、成否は言えない。決着の条件は、補償の総額が確定し、犯人が特定されるかどうかである。

攻撃を受けたGMOインターネットは、2025年1月に本体からインフラ事業を承継した上場子会社である。そのインターネットインフラ事業は2025年12月期に41,700百万円のセグメント利益を上げ、グループの収益の中核にある。一方、グループは2022年2月にイエラエセキュリティを子会社化してサイバーセキュリティ事業に参入し、セキュリティ事業を外部に売る立場にもあった。今回、預かった端末の解析と犯人の手がかりの調査を担ったのは、そのホワイトハッカーチームだった。インフラの信用とセキュリティ事業の信用が同じ事案で問われたことが、親会社が前面に立つ対応を選ばせたと思われる。

同じ10月、パーク24は、免許証画像の外部送信が確認された会員に対象を絞り、3,000円相当のお見舞金と特別損失5,500百万円の見込みを同時に示した。GMOインターネットグループは利用者全員を対象にし、不正取引の損失補償には上限を示さなかったため、影響額を算定できないまま公表した。両社の差は、漏れた情報が直接の金銭被害につながったかどうかにある。取引口座のログイン情報が盗まれた以上、対象を絞れば利用者の損失がそのまま残る。金額の確定より補償の範囲を先に決めた順序は、攻撃者に支払わない方針を利用者の負担で成り立たせないための選択だったと読める。

Yutaka Sugiura, 2026年11月

数字で見る

GMOインターネットグループ:インフラ事業とセキュリティ事業のセグメント業績

GMOインターネットグループ:インフラ事業とセキュリティ事業のセグメント業績

インターネットインフラ事業 売上収益(百万円)インターネットインフラ事業 セグメント利益率(%)

被害を受けたインフラ事業は、2025年12月期に41,700百万円の利益を上げていた

GMOインターネットグループ:インフラ事業とセキュリティ事業のセグメント業績
(百万円)インターネットインフラ事業 売上収益インターネットインフラ事業 セグメント利益インターネットセキュリティ事業 売上収益インターネットセキュリティ事業 セグメント利益備考
2024年12月期164,43234,34419,9171,853第35期の前期欄(IFRS)
2025年12月期175,70841,70021,9681,353インフラは10期連続で最高業績。セキュリティは大型案件が一巡
出所:GMOインターネットグループ 有価証券報告書 第35期(2025年12月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】【セグメント情報】
出所:GMOインターネットグループ 有価証券報告書 第35期(2025年12月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】【セグメント情報】
当時の取締役9名

取締役9名(2026年3月株主総会議決)

区分役員名役職
取締役業務執行担当領域
業務執行兼務熊谷正寿取締役:代表取締役業務執行:グループ代表・会長・社長執行役員・CEO担当:
安田昌史会計取締役:取締役業務執行:グループ副社長執行役員担当:CFOグループ代表補佐
伊藤正取締役:取締役業務執行:グループ副社長執行役員担当:グループ代表補佐グループインフラ部門統括
西山裕之取締役:取締役業務執行:グループ副社長執行役員担当:COOグループ代表補佐セキュリティ事業担当
相浦一成取締役:取締役業務執行:グループ副社長執行役員担当:グループ決済部門統括、GMOペイメントゲートウェイ株式会社代表取締役社長
松井秀行金融取締役:監査等委員業務執行:担当:
独立役員郡司掛孝会計取締役:監査等委員業務執行:担当:
増田要法曹取締役:監査等委員業務執行:担当:
小武守純子会計取締役:監査等委員業務執行:担当:
この一覧は2026年3月の定時株主総会の直後に提出された有価証券報告書の【役員の状況】による。
参考文献

参考文献

参考

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