三菱UFJフィナンシャル・グループ:モルガン・スタンレーへの出資とアユタヤ銀行の買収
2008年〜モルガン・スタンレーへの出資とユニオンバンカルの完全子会社化、三菱UFJモルガン・スタンレー証券
2008年10月13日、MUFGは米投資銀行モルガン・スタンレーの優先株を90億米ドルで引き受けた。9月29日の合意では、企業金融と投資銀行業務を軸にした世界規模の戦略的提携を出資の目的に据えていた。持分は完全希薄化後で約21%に達し、経営陣から平野信行氏がモルガン・スタンレーの取締役に入った。平野氏はのちに、資本の厚みとサブプライム関連の証券化商品を抱えなかったことを危機を越えた理由に挙げた。そのうえで出資を『With an investment of US$9 billion, we forged a strategic relationship with Morgan Stanley and embarked on our long-held goal to create global investment banking capabilities.』(訳:90億米ドルの出資でモルガン・スタンレーと戦略的な関係を結び、長年の目標だった世界規模の投資銀行業務の構築に踏み出した)と位置づけた。損失の小ささを守りではなく出資の余力へ振り向けた判断とみられる。
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ 年次報告書(Form 20-F)2009年3月期
- [1]2008年10月13日、グローバルな戦略的提携の一環としてモルガン・スタンレーに約90億米ドルの優先株式出資を実行
- [3]出資時点の持分は完全希薄化後で約21%。経営陣の平野信行がモルガン・スタンレーの取締役に就任
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ 有価証券報告書 第4期(2009年3月期)【経営上の重要な契約等】
- [2]2008年9月29日、企業金融・投資銀行業務分野を中心としたグローバルな戦略的提携の構築を目的に資本提携で合意
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ MUFG Report 2015(統合報告書、2015年)
- [4]CEO Messageで、危機を乗り切れたのは強固な資本基盤とサブプライム等の証券化商品へのエクスポージャーが無かったためと記述
- [5]CEO Messageで、90億米ドルの出資によりモルガン・スタンレーと戦略的関係を築き、グローバルな投資銀行能力の構築に着手したと記述
モルガン・スタンレーへの出資から3週間後の2008年11月4日、三菱東京UFJ銀行はユニオンバンカル(UNBC)を完全子会社にした。8月18日の合併契約の時点で持分は約65%あり、残る株式を1株73.50米ドルの現金公開買付けで取りに行った。所要資金は約35億米ドルと見積もられ、手元資金で賄う計画が示された。UNBCの中核のユニオン・バンクは、総資産と預金の両方でカリフォルニア州最大級の商業銀行だった。顧客は西海岸の個人から中小企業、大企業にまで及んでいた。同じ秋に投資銀行と商業銀行を押さえたことで、米国では法人の資金調達と個人の預金という二つの足場がそろったと推察される。
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ 年次報告書(Form 20-F)2009年3月期
- [6]2008年11月4日、三菱東京UFJ銀行がUNBCの未保有普通株式すべての取得を完了し、UNBCはMUFGの完全子会社(間接保有)となった
- [9]ユニオン・バンクは総資産・総預金ともカリフォルニア州で最大級の商業銀行の一つ
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ 年次報告書(Form 20-F)2008年3月期
- [7]2008年8月18日にUNBC(持分約65%)と合併契約を締結し、8月29日から1株73.50米ドルの現金公開買付けを開始
- [8]UNBC取得の所要資金は約35億米ドルと見積もり、手元資金を充てる予定
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ MUFG Report 2015(統合報告書、2015年)
- [10]MUFGユニオン・バンクは主に西海岸でリテールから法人まで幅広い金融サービスを提供
2010年5月1日、MUFGとモルガン・スタンレーは日本の証券業務を統合し、共同出資の証券会社2社を発足させた。起点は2009年3月、三菱UFJ証券とモルガン・スタンレー証券の統合を目指して結んだ覚書だった。三菱UFJモルガン・スタンレー証券は議決権の60%をMUFG側が、モルガン・スタンレーMUFG証券は51%を相手側が握った。社長の永易克典氏ら経営陣は発足直後の株主向けの挨拶で、合弁を『we launched a joint venture securities business in Japan this May, with the aim of becoming a leading company in the Japanese securities industry.』(訳:この5月に日本で証券合弁事業を始め、国内証券業界の首位級の会社を目指す)と記した。2014年3月期には、三菱UFJモルガン・スタンレー証券が国境をまたぐM&Aの助言と債券引受けで首位に立った。出資でつないだ資本の縁を、国内の案件を共同でこなす現場の関係へ移したことに統合の重みがあったのだろう。
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ 有価証券報告書 第5期(2010年3月期)【経営上の重要な契約等】
- [11]2010年5月1日、日本の証券業務を統合し、三菱UFJモルガン・スタンレー証券とモルガン・スタンレーMUFG証券の共同出資2社が発足
- [13]議決権は三菱UFJモルガン・スタンレー証券を三菱UFJ証券HDが60%、モルガン・スタンレーMUFG証券をモルガン・スタンレー側が51%保有
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ 年次報告書(Form 20-F)2009年3月期
- [12]2009年3月、三菱UFJ証券とモルガン・スタンレー証券を統合して日本に証券合弁を設ける覚書をモルガン・スタンレーと締結
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ Corporate Review 2010(年次報告書、2010年)To Our Shareholders
- [14]永易克典社長らの株主向けメッセージで、2010年5月に日本で証券合弁を始め、国内証券業界のリーディングカンパニーを目指すと記述
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ Corporate Review 2014(年次報告書、2014年)To Our Shareholders
- [15]2014年3月期(FY2013)、MUMSSがクロスボーダーM&A助言と債券引受けで首位
参考文献[1]-[15]
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ 年次報告書(Form 20-F)2009年3月期
- [1]2008年10月13日、グローバルな戦略的提携の一環としてモルガン・スタンレーに約90億米ドルの優先株式出資を実行
- [3]出資時点の持分は完全希薄化後で約21%。経営陣の平野信行がモルガン・スタンレーの取締役に就任
- [6]2008年11月4日、三菱東京UFJ銀行がUNBCの未保有普通株式すべての取得を完了し、UNBCはMUFGの完全子会社(間接保有)となった
- [9]ユニオン・バンクは総資産・総預金ともカリフォルニア州で最大級の商業銀行の一つ
- [12]2009年3月、三菱UFJ証券とモルガン・スタンレー証券を統合して日本に証券合弁を設ける覚書をモルガン・スタンレーと締結
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ 有価証券報告書 第4期(2009年3月期)【経営上の重要な契約等】
- [2]2008年9月29日、企業金融・投資銀行業務分野を中心としたグローバルな戦略的提携の構築を目的に資本提携で合意
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ MUFG Report 2015(統合報告書、2015年)
- [4]CEO Messageで、危機を乗り切れたのは強固な資本基盤とサブプライム等の証券化商品へのエクスポージャーが無かったためと記述
- [5]CEO Messageで、90億米ドルの出資によりモルガン・スタンレーと戦略的関係を築き、グローバルな投資銀行能力の構築に着手したと記述
- [10]MUFGユニオン・バンクは主に西海岸でリテールから法人まで幅広い金融サービスを提供
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ 年次報告書(Form 20-F)2008年3月期
- [7]2008年8月18日にUNBC(持分約65%)と合併契約を締結し、8月29日から1株73.50米ドルの現金公開買付けを開始
- [8]UNBC取得の所要資金は約35億米ドルと見積もり、手元資金を充てる予定
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ 有価証券報告書 第5期(2010年3月期)【経営上の重要な契約等】
- [11]2010年5月1日、日本の証券業務を統合し、三菱UFJモルガン・スタンレー証券とモルガン・スタンレーMUFG証券の共同出資2社が発足
- [13]議決権は三菱UFJモルガン・スタンレー証券を三菱UFJ証券HDが60%、モルガン・スタンレーMUFG証券をモルガン・スタンレー側が51%保有
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ Corporate Review 2010(年次報告書、2010年)To Our Shareholders
- [14]永易克典社長らの株主向けメッセージで、2010年5月に日本で証券合弁を始め、国内証券業界のリーディングカンパニーを目指すと記述
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ Corporate Review 2014(年次報告書、2014年)To Our Shareholders
- [15]2014年3月期(FY2013)、MUMSSがクロスボーダーM&A助言と債券引受けで首位
2013年〜アユタヤ銀行の公開買付けと、MUFGユニオン・バンクへの米州業務の統合
2013年12月18日、三菱東京UFJ銀行はタイのアユタヤ銀行を公開買付けで子会社にし、議決権の72.01%を得た。7月2日の取締役会で買付けを決め、同日に約25.33%を持つGEキャピタルと全株を応募させる契約を結んだ。買付け価格は1株39タイバーツで、取得原価は5,382億円に達した。MUFGが示した理由は、タイでの金融サービスを強め、現地で活動する顧客の多様な需要に応えることだった。社長の平野信行氏らはタイの規制に沿ってバンコック支店を1年以内にアユタヤ銀行へ統合すると表明し、その後の目標に『create a comprehensive commercial banking platform in Asia, covering wholesale, middle-market, and retail banking』(訳:大企業から中堅企業、個人までを網羅するアジアの総合的な商業銀行基盤を築く)を掲げた。法人取引が中心の支店では届かない個人や中小企業へ、現地の銀行ごと手を伸ばした判断と考えられる。
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ 平成26年3月期 決算短信(2014年)
- [16]2013年12月18日を企業結合日として、三菱東京UFJ銀行がアユタヤ銀行の議決権72.01%を取得し連結子会社化
- [19]企業結合の主な理由は、アユタヤ銀行への出資を通じタイの金融サービスを強化し、現地で活躍する顧客の多様なニーズに応えるため
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ 有価証券報告書 第9期(2014年3月期)【経営上の重要な契約等】【企業結合等関係】
- [17]2013年7月2日の取締役会で公開買付けを決議し、同日アユタヤ銀行株約25.33%を持つGEキャピタルと株式応募契約を締結
- [18]買付け価格は1株39タイバーツ、取得原価は5,382億円
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ Corporate Review 2014(年次報告書、2014年)To Our Shareholders
- [20]平野信行社長らの株主向けメッセージで、タイのワン・プレゼンス政策に従い買収から1年以内にバンコック支店をアユタヤ銀行へ統合し、アジアの総合的な商業銀行基盤を作ると記述
2014年7月、三菱東京UFJ銀行は米国の業務をユニオン・バンクと統合し、持株会社のMUFGアメリカズ・ホールディングスを設けた。統合で米州業務の管理が一か所に集まり、米国法人の国法銀行MUFGユニオン・バンクが生まれた。平野氏ら経営陣は再編の理由を『To further strengthen our competitiveness in the United States and comply with U.S. financial regulations』(訳:米国での競争力を一段と高め、米国の金融規制に対応するため)と記した。あわせて、グループ全体で米ドル資金を調達する力を強めることも再編の狙いに挙げた。統合後の2014年9月時点で、米国での預金量は全米13位だった。米国の規制が外国銀行の組織の形まで問う段階に入り、支店のままでは応じにくくなっていたようだ。
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ Corporate Review 2014(年次報告書、2014年)To Our Shareholders
- [21]2014年7月、三菱東京UFJ銀行が米国業務をユニオン・バンクと統合し、MUFG Americas Holdings Corporationを設立
- [22]統合により三菱東京UFJ銀行の米州業務の管理を集約し、米国法人の国法銀行MUFG Union Bank, N.A.が発足
- [23]再編の目的は米国での競争力の強化と米国金融規制への対応
- [24]グループのグローバルな米ドル調達力の強化と、両行の強みの統合・収益機会の最大化も目的に掲げた
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ MUFG Report 2015(統合報告書、2015年)
- [25]2014年9月時点の預金量で米国全体の13位
参考文献[16]-[25]
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ 平成26年3月期 決算短信(2014年)
- [16]2013年12月18日を企業結合日として、三菱東京UFJ銀行がアユタヤ銀行の議決権72.01%を取得し連結子会社化
- [19]企業結合の主な理由は、アユタヤ銀行への出資を通じタイの金融サービスを強化し、現地で活躍する顧客の多様なニーズに応えるため
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ 有価証券報告書 第9期(2014年3月期)【経営上の重要な契約等】【企業結合等関係】
- [17]2013年7月2日の取締役会で公開買付けを決議し、同日アユタヤ銀行株約25.33%を持つGEキャピタルと株式応募契約を締結
- [18]買付け価格は1株39タイバーツ、取得原価は5,382億円
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ Corporate Review 2014(年次報告書、2014年)To Our Shareholders
- [20]平野信行社長らの株主向けメッセージで、タイのワン・プレゼンス政策に従い買収から1年以内にバンコック支店をアユタヤ銀行へ統合し、アジアの総合的な商業銀行基盤を作ると記述
- [21]2014年7月、三菱東京UFJ銀行が米国業務をユニオン・バンクと統合し、MUFG Americas Holdings Corporationを設立
- [22]統合により三菱東京UFJ銀行の米州業務の管理を集約し、米国法人の国法銀行MUFG Union Bank, N.A.が発足
- [23]再編の目的は米国での競争力の強化と米国金融規制への対応
- [24]グループのグローバルな米ドル調達力の強化と、両行の強みの統合・収益機会の最大化も目的に掲げた
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ MUFG Report 2015(統合報告書、2015年)
- [25]2014年9月時点の預金量で米国全体の13位
2008年〜2014年の業績
| 決算期 | 区分 | 売上高 | 経常利益 | 純利益 | 主な投資 | ||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 億円 | YoY | 億円 | 億円 | 利益率 | |||
| 2008年03月期 | 連結 | 63,940 | n/a | 10,290 | 6,366 | 10.0% | n/a |
| 2009年03月期 | 連結 | 56,775 | ▲11.2% | 828 | ▲2,570 | ▲4.5% | n/a |
| 2010年03月期 | 連結 | 50,403 | ▲11.2% | 5,457 | 3,887 | 7.7% | n/a |
| 2011年03月期 | 連結 | 45,289 | ▲10.1% | 6,464 | 5,831 | 12.9% | n/a |
| 2012年03月期 | 連結 | 49,510 | +9.3% | 14,720 | 9,813 | 19.8% | n/a |
| 2013年03月期 | 連結 | 47,632 | ▲3.8% | 13,442 | 8,526 | 17.9% | n/a |
| 2014年03月期 | 連結 | 51,761 | +8.7% | 16,948 | 9,848 | 19.0% | n/a |
出所:有価証券報告書
出典・参考
9件
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ 有価証券報告書 第4期(2009年3月期)【経営上の重要な契約等】
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ 有価証券報告書 第5期(2010年3月期)【経営上の重要な契約等】
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ 平成26年3月期 決算短信(2014年)
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ 有価証券報告書 第9期(2014年3月期)【経営上の重要な契約等】【企業結合等関係】
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ MUFG Report 2015(統合報告書、2015年)
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ 年次報告書(Form 20-F)2008年3月期
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ 年次報告書(Form 20-F)2009年3月期
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ Corporate Review 2010(年次報告書、2010年)To Our Shareholders
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ Corporate Review 2014(年次報告書、2014年)To Our Shareholders