住友金属工業と統合(2011年・日本製鉄の決断)

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論点 国内首位同士で統合するか
日本製鉄:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
株式交換と吸収合併の二段階手続きで住金を取り込み、新日鐵住金が発足

何をなぜ決めたか:株式交換と吸収合併の二段階手続きで住金を取り込み、新日鐵住金が発足

概要

2012年10月1日、新日本製鐵が住友金属工業を吸収合併し、新日鐵住金が発足した。法的形式は二段階で、まず統合期日に新日鉄が住金の全株主へ新日鉄株を交付する株式交換を行って住金の発行済株式の全部を取得し、同日、株式・金銭等の対価を交付せずに新日鉄を存続会社・住金を消滅会社とする吸収合併を行った。

住金の普通株式1株に新日鉄の普通株式0.735株を割り当て、交付した株式数は32億346万株。取得した議決権比率は100%、取得原価は5,076億円で、うち取得に直接要したアドバイザリー費用等は19億円だった。

背景

統合の理由に挙げたのは、両社が培ってきた優れた経営資源の結集と得意領域の融合を徹底的に追求すること、そして国内生産基盤の効率化と海外事業の拡大という事業構造改革を加速させることだった。目指したのは、スケール、コスト、テクノロジー、カスタマーサービスのすべての面でレベルアップした「総合力世界No.1の鉄鋼メーカー」である。

もっとも、統合を決めてから合併までの間に鉄鋼の採算は急速に悪化した。連結経常利益は2011年3月期の2,263億円から2012年3月期は1,430億円、合併を挟んだ2013年3月期は769億円まで下がっている。

内容

合併比率は住金1株に対し新日鉄0.735株。両社はそれぞれ4社ずつの財務アドバイザーを個別に起用し、その財務分析の結果を参考に、財務・資産の状況や将来の事業・業績見通しを総合的に勘案して交渉を重ね、2011年9月22日の統合基本契約でこの比率を決めた。

その後、統合の方法を株式交換と吸収合併の二段階手続きへ改め、2012年4月27日に株式交換契約と合併契約を締結したが、1株当たり株式価値も統合後の会社も変わらないことから割当比率は据え置かれた。取得企業を新日鉄と決めた根拠は、対価の種類が株式である企業結合で新日鉄が株式を交付する側であること、そして結合前の新日鉄株主が結合後企業の議決権比率の最も大きい割合を占めることである。

含意

受け入れた資産は2兆2,501億円、引き受けた負債は1兆7,240億円。取得原価5,076億円が企業結合時の時価純資産を上回った差額340億円がのれんとして立ち、10年の均等償却となった。連結総資産は2012年3月期の4兆9,247億円から2013年3月期に7兆894億円へ、連結従業員数は60,508人から83,187人へ増えている。

2013年3月に策定した中期経営計画では、技術・研究開発成果の融合で600億円、最適生産体制の構築で600億円、購買コストの削減で300億円、本社部門のスリム化で300億円、グループ会社の統合再編と連携で200億円、合計2,000億円以上の統合効果目標を掲げた。2019年4月には商号を日本製鉄へ改め、住友の名は社名から外れた。

いつ何が起きたか 9件
考察:規模の論理と「対等」の行方
考察

考察:規模の論理と「対等」の行方

対等の精神を掲げた統合だが、会計処理の上では最初から取得として整理されている。取得企業を新日鉄と決めた根拠は、対価の種類が株式である企業結合で株式を交付する側であること、そして結合前の新日鉄株主が結合後企業の議決権比率の最も大きい割合を占めること ── つまり0.735という割当比率そのものが、どちらが主でどちらが従かを決めていた。対等とは経営の運び方の作法であって、資本の構成のことではなかったのだろう。2019年に社名から住友の名が外れたのは、その構成が時間をかけて表に出てきた帰結だろう。

もっとも、規模の獲得が直ちに収益へ結びついたわけではない。合併が成立した2013年3月期は特別損失2,189億円を計上して1,245億円の当期純損失となり、掲げた年2,000億円以上の統合効果はその先の期へ持ち越された。総資産が2兆1,647億円ふくらみ従業員が2万2,679人増えた一方で、経常利益が統合前の水準を取り戻したのは翌2014年3月期である。規模は競争に残るための条件であって、それ自体が答えではない ── この合併が教えるのは、そういう乾いた事実ではないか。

数字で見る 4表

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図と表

日本製鉄:のれんと総資産の推移

のれん(百万円)のれん以外の無形固定資産(百万円)
日本製鉄:のれんと総資産の推移
(百万円) のれん無形固定資産総資産 備考
2006年3月期 −−4,542,766 のれん・無形固定資産の区分開示は2008年3月期から
2007年3月期 −−5,344,924
2008年3月期 3,54323,1035,193,498
2009年3月期 5,94620,0504,870,680
2010年3月期 25,16146,8705,002,378
2011年3月期 20,77962,6115,000,860 2011年2月に住友金属工業との経営統合で合意
2012年3月期 15,71370,0204,924,711 合併前の最後の通期。2012年4月27日に株式交換契約と合併契約を締結
2013年3月期 48,06595,9287,089,498 10月1日に住金を吸収合併。のれんは合併で34,080が発生し、総資産は2兆1,647億円増
2014年3月期 41,47694,0797,082,288 合併後はじめての通期
2015年3月期 50,04698,8627,157,929
2016年3月期 41,75687,6806,425,043
出所:新日鐵住金 有価証券報告書 第82〜91期(連結貸借対照表)
出所:新日鐵住金 有価証券報告書 第82〜91期(連結貸借対照表)

日本製鉄:売上高と利益の推移

売上高(百万円)経常利益率(%)
日本製鉄:売上高と利益の推移
(百万円) 売上高経常利益当期純利益 備考
2006年3月期 3,906,301547,400343,903
2007年3月期 4,302,145597,640351,182
2008年3月期 4,826,974564,119354,969
2009年3月期 4,769,821336,140155,077
2010年3月期 3,487,71411,833△11,529 リーマン・ショック後の需要減で経常利益が118億円まで減少した
2011年3月期 4,109,774226,33593,199 2011年2月に住友金属工業との経営統合で合意
2012年3月期 4,090,936143,00658,471
2013年3月期 4,389,92276,931△124,567 広畑・堺製鐵所等の減損損失と住金株式等の売却損で特別損失2,189億円を計上
2014年3月期 5,516,180361,097242,753 住金を通期で取り込んだ最初の期。売上高は1兆1,262億円増
2015年3月期 5,610,030451,747214,293
2016年3月期 4,907,429200,929145,419
出所:新日鐵住金 有価証券報告書 第82〜91期(連結損益計算書・主要な経営指標等の推移)
出所:新日鐵住金 有価証券報告書 第82〜91期(連結損益計算書・主要な経営指標等の推移)

日本製鉄:従業員数の推移

連結従業員数(人)
日本製鉄:従業員数の推移
(人) 連結従業員数単体従業員数 備考
2006年3月期 46,14315,212
2007年3月期 47,25714,346
2008年3月期 48,75715,083
2009年3月期 50,07715,503
2010年3月期 52,20515,845
2011年3月期 59,18316,150 2011年2月に住友金属工業との経営統合で合意
2012年3月期 60,50816,158
2013年3月期 83,18724,510 合併で連結は22,679人、単体は8,352人増えた
2014年3月期 84,36124,152
2015年3月期 84,44723,775
2016年3月期 84,83724,903
出所:新日鐵住金 有価証券報告書 第82〜91期(従業員の状況)
出所:新日鐵住金 有価証券報告書 第82〜91期(従業員の状況)

統合の条件

統合の条件
科目 概要 備考
結合当事企業 新日本製鐵(存続)・住友金属工業(消滅) 住金の事業の内容は鉄鋼事業。結合後企業の名称は新日鐵住金
企業結合の法的形式 株式交換を行ったうえで同日に吸収合併 第一段階で住金の発行済株式の全部を取得し、第二段階は対価を交付せずに合併した
企業結合日 2012年10月1日 合併契約の締結は2012年4月27日、両社の株主総会での承認可決は同年6月26日
統合比率 住金の普通株式1株に対し0.735株 2011年9月22日の統合基本契約で合意した合併比率と同一の比率で株式交換を行った
交付した株式数 3,200,346,200株
取得した議決権比率 100%
取得企業を決定するに至った主な根拠 株式を交付し議決権比率が最大となること 対価の種類が株式である企業結合であり、結合前の新日鉄株主が結合後企業の議決権比率の最も大きい割合を占める
取得原価 507,627百万円 企業結合日に交付した株式の時価505,654百万円と、取得に直接要した費用1,972百万円
のれん 34,080百万円 取得原価が企業結合時の時価純資産を上回ったため発生。10年間にわたる均等償却
受け入れた資産 2,250,183百万円 流動資産596,687百万円、固定資産1,653,495百万円
引き受けた負債 1,724,003百万円 流動負債740,104百万円、固定負債983,899百万円
業績の取込期間 2012年10月1日から2013年3月31日まで 連結損益計算書に含まれる被取得企業の業績の期間
期首に完了と仮定した影響額 売上高693,601百万円 経常利益10,815百万円、税金等調整前当期純損失134,831百万円。監査証明を受けていない
出所:新日鐵住金 有価証券報告書 第88期(2013年3月期)【企業結合等関係】/新日本製鐵 有価証券報告書 第87期(2012年3月期)【経営上の重要な契約等】
出所:新日鐵住金 有価証券報告書 第88期(2013年3月期)【企業結合等関係】/新日本製鐵 有価証券報告書 第87期(2012年3月期)【経営上の重要な契約等】
参考文献

参考文献

参考
  • 公正取引委員会(平成23年度:事例2)「新日本製鐵株式会社と住友金属工業株式会社の合併」(2011年12月14日 排除措置命令を行わない旨の通知)
  • 新日鐵住金 トップメッセージ(2012年10月1日)「新日鐵住金株式会社の発足にあたって(社長兼COO 友野 宏)」
  • 新日本製鐵 有価証券報告書「第87期(2012年3月期)【経営上の重要な契約等】【重要な後発事象】」
  • 新日鐵住金 有価証券報告書「第88期(2013年3月期)【企業結合等関係】」
  • 新日鐵住金 有価証券報告書「第88期(2013年3月期)【対処すべき課題】」
  • 新日鐵住金 有価証券報告書「第91期(2016年3月期)【主要な経営指標等の推移】」

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