株探(Kabutan)の事業譲受(2014年・ミンカブ・ジ・インフォノイドの決断)

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ミンカブ・ジ・インフォノイド:業績の推移
売上高(億円)経常利益率(%)

何をなぜ決めたか:投稿型の自社サイトと速報型サイトの主力2本体制、課金収入の開始

概要
概要

2014年10月、未上場のみんかぶ(現ミンカブ・ジ・インフォノイド)は、投資家向け株式情報配信サイト「Kabutan(株探)」を事業譲受により取得した。創業者の瓜生憲氏が代表取締役社長を務める時期の決断である。譲渡元と対価は有価証券報告書に記載がない。株探の運営会社の欄は、2014年1月の保存版のストックマーケットサービスから、2015年2月の保存版のみんかぶへ替わっている。当時は未上場で、取得の記録は沿革の1行にとどまる。

この取得は、同じ年の金融機関向け事業への参入と並行して進んだ。2か月前の2014年8月にはインターストラクチャーを連結子会社化し、ソリューション事業へ参入している。B2Cの主力サイトを2本へ増やし、B2Bの収益源も加えたことで、「みんなの株式」を中心とする事業構成を同じ年のうちに改めた。

背景
背景

取得の前の事業は、2007年4月に始めた投稿型サイト「みんなの株式」が中心だった。2007年1月末の主な事業は個人投資家向けコミュニティプラットフォームの運営で、従業員は8名である。瓜生憲社長は当時の会社のメッセージに『私は、ネットと情報の親和性を活かす分野として金融市場を、その中でも株式市場を最初のテーマとして選びました』と記した。2012年にも組織は小さく、同年入社の髙田隆太郎氏(取材当時 取締役副社長兼CFO)は『私が入社したときは、従業員も10数名でしたが、全員が毎日必死で目の前の業務にあたっていると感じました』と明かしている。2015年3月期の単体売上高でも712百万円、従業員は25人である。

成長の資金にも制約があった。髙田隆太郎氏は2012年当時の借入について『当時はお付き合いのある銀行も1行しかなく、他行にファイナンスの関係で連絡をしてもなかなか会ってももらえませんでした』と明かしている。2014年7月にはMICイノベーション3号投資事業有限責任組合、取得の翌月の11月にはKSP4号投資事業有限責任組合が第三者割当を引き受けた。後者のKSP投資ファンドは、既存株主からの株式買取と併せて出資している。

内容
内容

株探は、既存の「みんなの株式」と性格の異なるサイトだった。「みんなの株式」が幅広い個人投資家を対象に投稿データの集合知を見せるのに対し、株探は投資経験のある投資家に決算情報や自動生成ニュースを速報で届ける。投資家層の中で利用の動機が異なる2つのサイトを並べる構成である。

取得の前後の資本は、この時期に大きく組み替わった。2015年3月26日に資本金1,005百万円と資本準備金685百万円を減少させ、3月27日にSMBCVC3号など、3月31日にSBI系の投資事業組合を割当先とする増資を実施している。発行価格はいずれも1株50,000円である。第9期末の純資産は950百万円で、総資産は1,568百万円となった。

沿革:意思決定前後の出来事12件
考察:譲受が残した課金の入口
考察

考察:譲受が残した課金の入口

なぜ自社サイトを伸ばすだけでなく、別のサイトを取得したのか。投稿型の「みんなの株式」は集合知が魅力である一方、決算情報の速報を求める投資家にとっては別の用途のサイトが要る。自前で速報型のサイトを立ち上げれば、利用者の獲得に時間がかかる。資金調達に苦労してきた小規模な会社にとって、すでに利用者を持つサイトの取得は成長までの時間を買う判断だったと考えられる。2本の主力が性格を違えていた点も重要である。

ただし、取得の条件は現在の資料からは検証できない。譲渡元も対価も手元の開示に現れず、当時は未上場だったため決議期の有価証券報告書も存在しない。2015年3月の大幅な減資と増資を見ると、財務に余裕のある時期の取得ではなかったことがうかがえる。投資額に対する回収を数字で判定することはできず、判断の評価は取得後の事業の推移に依存する。未開示の条件が高値だった可能性も否定できない。

事業の結果で見れば、株探の事業譲受は成功した判断だった。株探の利用者は月間約500万人に達し、株探を含むソリューション事業の課金収入は2026年3月期に590百万円となった。3期連続の経常損失を経て選択と集中へ転じた再建期にも、サブスクリプション系の成長の源泉として残った事業である。広告単価に左右されるメディア事業とは異なる収益を、12年前の取得が準備していたことになる。ただし全社の売上高に占める比率は1割に満たず、再建を単独で支える規模ではない。

Yutaka Sugiura, 2026年11月

数字で見る

数値:意思決定前後の事業数値2件

ミンカブ・ジ・インフォノイド:単体の損益と資産の推移

売上高(百万円)経常利益率(%)

取得の期の単体売上高は712百万円で、2020年3月期には2,490百万円へ増加した

ミンカブ・ジ・インフォノイド:単体の損益と資産の推移
(百万円)売上高経常利益当期純利益純資産総資産備考
2015年3月期71278659501,5682014年10月に株探を取得。第9期の監査は金商法に基づかない
2016年3月期97884661,0781,980
2017年3月期1,04980△1,3227752,522海外上場の準備を中止し、特別損失を計上
2018年3月期1,370109△1269181,9852017年6月に株探プレミアムを開始
2019年3月期2,0322082532,6863,926東証マザーズへ上場
2020年3月期2,4904414313,4975,366
出所:ミンカブ・ジ・インフォノイド 有価証券報告書 第13期・第14期【提出会社の経営指標等】
出所:ミンカブ・ジ・インフォノイド 有価証券報告書 第13期・第14期【提出会社の経営指標等】

ミンカブ・ジ・インフォノイド:単体の従業員数の推移

提出会社の従業員数(人)

従業員数は取得の期の25人から、2020年3月期には89人へ増加した

ミンカブ・ジ・インフォノイド:単体の従業員数の推移
(人)提出会社の従業員数備考
2015年3月期25
2016年3月期31
2017年3月期34
2018年3月期71エムサーフの吸収合併で増加
2019年3月期85
2020年3月期89
出所:ミンカブ・ジ・インフォノイド 有価証券報告書 第13期・第14期【提出会社の経営指標等】
出所:ミンカブ・ジ・インフォノイド 有価証券報告書 第13期・第14期【提出会社の経営指標等】
参考文献

参考文献

参考

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