社名の変更は、多くの場合すでに変わった実体を追認するために行われる。2001年の伊藤忠エネクスの場合、順序は逆であった。電力も熱も手がけていない時点でエネルギーを名乗り、そのうえで扱う商品を後から広げている。40年にわたり石油とLPGの卸売で成り立ってきた会社が、自らの定義を先に書き換えたことになる。実体の伴わない看板は空回りしかねないが、この会社ではおよそ10年をかけて事業がその名に追いついた。
もっとも、名を広げることには代償もある。エネルギーという枠は、石油とLPGという明確な商売の輪郭をぼかし、どこまでを自社の領域と考えるかを絶えず問い直させる。チコマートの売却はその最初の答えであり、のちに自動車ディーラーを傘下に収めてカーライフ事業を最大の収益源に育てた選択は、当時とは逆向きの答えにも見える。広げた定義のなかで何を数え、何を外すか——社名を変更した年に始まったこの問いは、いまも同社の事業構成を動かしていると思われる。