1987年12月、鎌田正彦氏は東京都江東区に株式会社関東即配を設立[1]した[2][3]。同社は軽貨物車両を用いた即日配送サービスを主力事業とする小規模物流ベンチャーで、創業時の従業員は数名規模だった。1980年代後半の日本の物流業界は、トラック輸送の規制緩和(1990年の物流二法施行)[4]を控えて新規参入の動きが活発化し、宅配・即配市場は日本通運・ヤマト運輸・佐川急便といった全国網運営の大手と、地域密着型の中小事業者が並存する構造だった。鎌田氏は関東圏に絞った軽貨物即配というニッチに足場を作り、創業から1990年代後半までの約10年は事業会社単体としての地味な拡張期を過ごした。
1989年4月、同社は商号を株式会社総合物流システムへ変更した[5]。社名変更は事業範囲の意思表示で、即配単独の事業者から物流業務全般を引き受ける総合事業者への進化を目指す経営方針の表明だった。1990年代に入ると、製造業の生産拠点海外移転・流通の多頻度小口化・コンビニチェーンの全国展開といった構造変化が物流需要を量から質へ移行させ、メーカーや小売の物流業務を一括受託する『3PL(サードパーティ・ロジスティクス)』[引用元]という業態が日本市場でも本格化した。物流業界の主要プレイヤーは、自社運輸事業から物流アウトソーシング受託へ事業モデルを切り替える動きを加速させ、鎌田氏もこの潮流を捉える設計を取った。
1997年6月に軽作業請負事業の有限会社スタッフジャパン[6](現SBSスタッフ)、1998年3月にマーケティング事業のマーケティングパートナー株式会社を設立し[7]、物流以外の隣接領域へ事業範囲を広げた。1999年12月には商号を株式会社エスビーエスへ再度変更[8]し、物流+人材+マーケティングの複合事業者としてのブランド整理を行った。2003年12月、同社は日本証券業協会への株式店頭登録[9](現JASDAQ)を果たした。創業から16年での店頭登録は[10]、事業会社単体の物流ベンチャーとしては中堅水準だが、その後の連続M&Aを支える資金調達インフラとしての意味は大きかった。
2004年7月、株式会社エスビーエス(現SBSホールディングス)は純粋持株会社へ移行した[11]。持株会社化は、外部から取得する事業会社を傘下にぶら下げる『グループ・ホールディングス型』の事業ポートフォリオを意識した制度設計で、買収した会社のブランドと組織文化を温存したまま、財務とガバナンスだけを統合する経営手法の前提条件となる。鎌田氏はこの持株会社移行と店頭登録の組み合わせで、向こう20年にわたる連続M&Aの仕組みを整えた。
2004年5月、SBSは雪印物流株式会社[12](現SBSフレック)の株式を取得した。これが鎌田氏のM&A戦略の本格的な開幕であり、以後20年にわたり同社は大企業から切り出される物流子会社を次々と取り込んでいくパターンを設定した。雪印物流は2000年の雪印乳業集団食中毒事件で[13]雪印グループが縮小するなかで切り出された物流子会社で、低温物流のノウハウと冷凍冷蔵設備を有する会社だった。SBSはこの企業を傘下に取り込み、低温食品物流という新領域への足場を獲得した。
2005年6月には東急ロジスティック[14](後のティーエルロジコム、現SBSロジコム)・日本貨物急送(現SBSフレイトサービス)・伊豆貨物急送ほか東急グループ系物流子会社を一括取得した。2006年1月には食品物流の株式会社全通(現SBSゼンツウ)を[15]、同年3月には保険代理事業の有限会社SBSインシュアランスサービス(現SBSファイナンス)を取得[16]した。2006年4月、同社は商号をSBSホールディングス株式会社へ変更し[17]、本社を東京都墨田区太平へ移転した。創業から19年で、軽貨物即配のベンチャーから、複数の大手物流子会社を傘下に持つ総合物流グループへ移行した[18]。
2007年から2008年にかけてのリーマンショック前後、SBSの売上高は2007年12月期1471億円、2008年12月期1394億円と頭打ち局面に入った。同期の経常利益は2007年12月期79.0億円から2008年12月期40.0億円へ49%減と急縮小し、リーマンショック後の貨物需要急減が3PL事業者の経営を直撃した。同社は2009〜2010年にかけて新規M&Aを抑制し、既存事業の収益改善とコスト削減を優先する局面に入った。2010年12月期に経常利益42.9億円、2011年12月期16.3億円と回復は緩慢で、2009年は買収拡大の歩みが一旦停止した。
2010年代に入ると同社は海外進出を再開した。2010年4月にティーエルロジコム(現SBSロジコム)[19]がビクターロジスティクス(後のVLロジネット、2011年7月に同社へ吸収)の株式を取得し、2011年4月に同社が日本レコードセンターを取得(2019年7月に吸収合併)。[20]2011年10月にインドのアトラス・ロジスティクスを取得[21]、2012年5月にシンガポールに東南アジア地域統括会社SBS Logistics RHQを設立、2015[22]年8月にシンガポールに運輸通関事業のSBS Logistics Singaporeを設立した[23]。海外進出は積極的な拡大戦略というよりは、日系製造業の海外生産拠点での物流業務を取り込むための『追随型展開』だった。
2012年3月、SBSは株式会社ゼロ[24]の株式を取得した。ゼロは自動車輸送(完成検査・陸送)に強みを持つ物流事業者で、SBSの取扱貨物のラインナップに自動車輸送が加わった。2012年12月、SBSは東京証券取引所市場第二部へ上場[25]し、2013年12月には同市場第一部へ指定替えした[26]。
2013年6月、SBSはグループ全体のブランド統一を実施し、新ロゴマークを導入[27]。物流子会社14社を一斉に『SBS〇〇』へ社名変更[28]した。雪印物流→SBSフレック、東急ロジスティック→SBSロジコム、全通→SBSゼンツウ、日本貨物急送→SBSフレイトサービスといった具合に、買収後5〜10年程度経過した時点で『SBSブランド』の傘下に統合し、グループ内のシナジーと知名度を高めた。買収先の組織文化は温存しつつ、対外ブランドは統一するという二段構えのガバナンス設計が、同社の連続M&Aの運営方針として定着した。
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|---|---|---|---|---|
| 1987〜2003年軽貨物即配からの創業と3PLへの足場固め | 関東即配を設立 | ★ | ||
| 鎌田正彦 | 商号を総合物流システムに変更 | ★ | ||
| 鎌田正彦 | 軽作業請負事業のスタッフジャパンを設立 | ★ | ||
| 鎌田正彦 | マーケティング事業のマーケティングパートナーを設立 | ★ | ||
| 鎌田正彦 | 商号をエスビーエスに変更 | ★ | ||
| 鎌田正彦 | メール便事業の売却と3PL特化への転換 2003年前後、SBSホールディングス(当時・株式会社エスビーエス)は、上場時点で中心事業の一つだったメール便事業を売却し、法人向け物流を一括受託する3PL事業への特化へ方針を変えた経営判断。鎌田正彦社長は、郵政民営化を控えたメール便市場の先行きに見切りをつけ、身軽になった財務体制を翌2004年以降の連続M&Aへ振り向けた。 詳細を読む | ★★★ | ||
| 2004〜2017年連続M&Aによる大手物流子会社の取り込みと総合物流グループ化 | 鎌田正彦 | 雪印物流・東急ロジスティック等の連続買収による「大企業ノンコア物流子会社の受け皿」モデルの確立 2004年5月、SBSホールディングス(当時:株式会社エスビーエス)は雪印グループから切り出された雪印物流の株式を取得し、翌2005年6月には東急グループの東急ロジスティック・日本貨物急送・伊豆貨物急送をTOB・株式取得で一括取得した。鎌田正彦社長が2003年の店頭登録と2004年の持株会社化で整えた受け皿を使い、大企業が手放す物流子会社を連続して取り込む型を確立した経営判断である。 詳細を読む | ★★★ | |
| 鎌田正彦 | エスビーエスを純粋持株会社に移行 | ★★ | ||
| 鎌田正彦 | 不動産証券化事業のエーマックスを設立 | ★ | ||
| 鎌田正彦 | 東急ロジスティックの株式を取得 | ★★★ | ||
| 鎌田正彦 | 日本貨物急送と伊豆貨物急送の株式を取得 | ★ | ||
| 鎌田正彦 | 食品物流の全通の株式取得 | ★ | ||
| 鎌田正彦 | 保険代理事業のSBSインシュアランスサービスの株式取得 | ★ | ||
| 鎌田正彦 | 商号をSBSHDに変更、本社を移転 | ★ | ||
| 鎌田正彦 | ティーエルロジコムがビクターロジスティクスの株式を取得 | ★ | ||
| 鎌田正彦 | ティーエルロジコムが日本レコードセンターの株式を取得 | ★ | ||
| 鎌田正彦 | 国際物流会社Atlas Logistics Pvt. Ltd.の株式取得 | ★ | ||
| 鎌田正彦 | ゼロの株式取得 | ★★ | ||
| 鎌田正彦 | 東京証券取引所市場第二部に上場 | ★ | ||
| 鎌田正彦 | SBSフレックネットが発足 | ★ | ||
| 鎌田正彦 | SBS即配サポートが発足 | ★ | ||
| 鎌田正彦 | SBS Logistics Singapore Pte. Ltd.を設立 | ★ | ||
| 2018〜2026年大手企業物流子会社の連続買収と1兆円体制への準備 | 鎌田正彦 | 大企業物流子会社の受け皿としての連続買収と「1兆円企業」ビジョン 2018年8月にリコーロジスティクス(現SBSネクサード)を取得して以降、SBSホールディングスは東芝ロジ・古河物流・NSKロジ・ブリヂストン物流など大手メーカー系の物流子会社を相次いで取得し、売上高2000億円規模から『早期の年商1兆円』を掲げる総合物流企業へと事業規模を広げていった経営判断。 詳細を読む | ★★★ | |
| 鎌田正彦 | 京葉自動車教習所と姉崎自動車教習所の株式を取得 | ★ | ||
| 鎌田正彦 | SBS三愛ロジスティクスが発足 | ★ | ||
| 鎌田正彦 | 東芝ロジスティクスの株式取得 | ★★ | ||
| 鎌田正彦 | 東洋運輸倉庫の株式取得(2023年10月にSBSロジコムが同社を吸収合併) | ★ | ||
| 鎌田正彦 | 古河物流の株式取得 | ★ | ||
| 鎌田正彦 | NSKロジスティックスの株式取得 | ★ | ||
| 鎌田正彦 | 3PL企業持株会社Blackbird Logistics B.V.の株式取得 | ★★ | ||
| 鎌田正彦 | ブリヂストン物流の株式取得 | ★ |
免責事項およびポリシー
事実根拠:出所(SBSホールディングス)