メール便事業の売却(2003年・SBSホールディングスの決断) 更新:2026/07/15 論点 祖業のメール便を売却し3PLへ転換するか 売上高(億円)経常利益率(%) 祖業の売却による3PL特化と、荷主の物流を一括して請け負う側への転換 祖業の売却による3PL特化と、荷主の物流を一括して請け負う側への転換 概要 2003年前後、SBSホールディングス(当時・株式会社エスビーエス)は、上場時点で中心事業の一つだったメール便事業を売却し、法人向け物流を一括受託する3PL事業への特化へ方針を変えた経営判断。鎌田正彦社長は、郵政民営化を控えたメール便市場の先行きに見切りをつけ、売却後の財務体制を翌2004年以降の連続M&Aへ振り向けた。 背景 1987年創業のエスビーエスは、2003年12月の株式店頭登録の時点でなお売上高194億円の中堅事業者で、主力事業の一つは信書・小口の荷物を届けるメール便であった。だが郵政民営化の議論が進むなかで、メール便市場は価格競争にさらされる構造的な逆風を抱えていた。 内容 鎌田正彦社長は、メール便がいずれ価格競争に飲み込まれ生き残れないと判断し、同事業を売却した。2004年7月には純粋持株会社へ移行した。これに先立つ雪印物流の買収を皮切りに、大企業が切り出す物流子会社を取り込む3PL特化の引受体制を構築した。 含意 メール便という上場時の収益源を売却する決断は、その後20年にわたり反復される連続M&A戦略の最初の一歩になった。売却後の財務体制が買収余力を生み、雪印物流・東急ロジスティックの取得へつながった経緯に、この判断の射程がうかがえる。 いつ何が起きたか 8件 筆者の見解 効率の論理と、公式記録に残らない決断 筆者の見解 効率の論理と、公式記録に残らない決断 この判断の核心は、何を捨てるかを先に決めたことにある。信書・小口貨物を扱うメール便は、郵政民営化という制度変化の前で価格競争に沈む運命にあったとみられ、そこに固執しなかった判断が、その後20年におよぶ連続M&A戦略の土台を作ったといえる。捨てる決断が拡げる経営を可能にした事例とみられる。 もっとも、メール便事業の売却先や金額、正確な時期は、同社自身の有価証券報告書【沿革】には記載が残っていない。 Yutaka Sugiura, 2026年7月 参考文献 出典・参考SBSホールディングス 有価証券報告書【沿革】SBSホールディングス 有価証券報告書(2003年12月期)SBSホールディングス 有価証券報告書(各年12月期)雪印メグミルク 公式サイト(2つの事件の概要) SBSホールディングスの意思決定2003年メール便事業の売却2004年雪印物流・東急ロジスティック買収大企業が切り出すノンコア物流子会社の引受先という成長モデルの確立2018年リコーロジスティクス取得大企業の物流子会社を引き受ける連続買収と、2030年度に売上高7,000億円を掲げた成長構想同じ問い:集中のための事業売却1989年キーエンス自動線材切断機を譲渡利益率2割の事業も捨てた高付加価値への集中2018年クックパッドレシピ事業への集中に転換本業への集中と、食領域の新規事業への再投資2003年武田薬品工業非医薬事業の切り離し事業の裾野を捨て医療用医薬品一本に特化する選択と集中2002年岩谷産業戸建住宅撤退と水素ステーション規模を追う経営からの決別と、収益源を水素へ転換する先行投資2002年東急日本エアシステムへ統合東亜国内航空への出資に始まる航空事業への参入と、その撤退 × 出所