筆者の見解
先取りの構想と、事業集中の重さ
高原慶一朗氏が1985年に描いた3,000億円企業構想は、女性から子供、そして老人へと生活の各段階に商品を広げる、息の長い多角化の設計図であった。紙おむつという次の柱を早くから見抜いた先見は、その後の同社の成長を大きく支えたのだろう。ただ、構想として並べた5分野が等しく育ったわけではなく、掛け声と実際に利益を生む事業との間には距離が残った。先取りの構想は、時間をかけて選別されながら形になっていったといえる。
不織布加工品への集中は、高い収益性の源泉であったと同時に、市場が成熟し競合が安値を仕掛けたときに逃げ場の少ない単品経営の弱さにもつながった。時代を先取りする構想の華やかさと、絞り込んだ事業構造の重さ——この二つをどう両立させるかという問いは、多角化の掛け声とともに二代目の経営へと持ち越されていったようにみえる。構想を語ることと、収益源を育てきることの落差に、この判断のその後がにじんでいる。
Yutaka Sugiura, 2026年7月