転職アンテナのmoto買収(2021年・ログリーの決断)

更新:
ログリー:業績の推移
売上高(億円)経常利益率(%)

何をなぜ決めたか:7億円で取得した転職メディア運営会社の全額減損と6百万円での譲渡

概要
概要

2021年3月30日、ログリーの取締役会は転職メディア「転職アンテナ」を運営するmoto株式会社の全株式取得を決議した。対価は現金700百万円で、業績の達成水準に応じて最大300百万円を追加で支払うアーンアウトを付け、4月2日に連結子会社とした。約10か月後の2022年2月にのれんを減損し、同年5月の再減損で残高はゼロになった。

2026年8月20日の決議で結末が定まり、全株式を元取締役の池永彰文氏に6百万円で譲渡し、9月1日を実行日とする。譲渡の対価は取得時の現金対価の1%に満たない。2026年3月の配当110百万円と譲渡直前の配当34百万円を足しても、開示で確かめられる回収額は150百万円で、アドバイザリー費用を含む取得費用735百万円の約2割となる。

背景
背景

ログリーの主力はネイティブ広告プラットフォーム「LOGLY lift」で、2020年3月期からの中期戦略にアライアンスとM&Aの推進を掲げていた。2020年3月期の経常利益は前期の160百万円から60百万円へ縮小している。先行する新規事業も成果を出せておらず、2019年10月に運用を始めたJuicer事業は、使用価値がマイナスとなり、2021年3月期にのれんとソフトウエアの減損損失149百万円を計上している。

取得先のmotoは2018年4月設立で、著書「転職と副業のかけ算」(扶桑社、2019年)を持つ戸塚俊介氏が全株式を所有していた。売上高は2019年9月期の201百万円から2020年9月期の317百万円へ増加した一方、営業利益は106百万円から80百万円へ減少している。ログリーは約6,000億円といわれる転職サービス市場への広告配信ジャンルの拡大と、転職者傾向のデータ分析を掛け合わせた新事業の創出を取得の理由に挙げた。

内容
内容

ログリーは2021年4月15日、買収資金と今後のM&Aの待機資金、運転資金に充てる850百万円(うち100百万円はコミットメントライン)の借入を決議し、moto株式の全株を担保に入れた。受け入れた資産は74百万円、負債は37百万円で、のれんは662百万円に達した。償却期間は業績予想の10年に対し、監査法人との協議で8年に決まった。

2022年2月、SEOパフォーマンスの急速な悪化を受け、motoの売上高は当初予想比56.4%減、営業利益は同42.5%減の見通しとなった。当初予想でmotoはグループ営業利益の104.4%を占めていた。ログリーはのれん488百万円を減損し、池永彰文COOの引責辞任を受け入れ、同氏をmoto代表取締役に就けて7億円の回収に当たらせた。第4四半期にも108百万円を減損し、2022年3月期の純損失は677百万円となった。

沿革:意思決定前後の出来事12件
考察:検索流入に依存した高収益の買収
考察

考察:検索流入に依存した高収益の買収

なぜ広告配信の会社が転職メディアに7億円を投じたのか。2020年3月期の経常利益は前期の160百万円から60百万円へ縮小し、先行したJuicer事業も収益を生めずにいた。自社で新規事業を育てるより、すでに利益を出す媒体を取得するほうが、確実に利益を積み増せると映ったのだろう。当初予想でmotoがグループ営業利益の104.4%を占めていた点に、この買収への期待の大きさが表れている。

ただ、その高収益は弱みと表裏の関係にあった。事業は代表者個人の見識に基づく媒体運営と検索からの流入に依存し、純資産37百万円の会社に662百万円ののれんを計上する取引となった。取得前の2020年9月期に増収ながら営業利益が106百万円から80百万円へ減少していた事実も、開示資料に現れていた。資金は借入で調達し、株式は担保に入れている。のれんの価値は、検索流入の持続という一点にかかる構造であったと思われる。

投資としては失敗と言い切れる。取得から1年でのれんはゼロとなり、2022年3月期の純損失は677百万円に達した。開示で確かめられる回収額150百万円は、取得費用を含む735百万円の約2割にとどまる。譲渡価額6百万円は、2026年3月期末の純資産37百万円から配当34百万円を除いた水準に近く、事業の将来に対価を見込まない価格と読める。一方で有利子負債は972百万円から103百万円まで圧縮された。結末は、買収の責任者が回収を担い、最後に事業を引き取る決着となった。

Yutaka Sugiura, 2026年11月

数字で見る

数値:意思決定前後の事業数値3件

ログリー:ログリーの業績の推移

売上高(千円)経常利益率(%)

2021年3月期に3,961百万円だった売上高は、2026年3月期に1,424百万円まで縮小した

ログリー:ログリーの業績の推移
(千円)売上高経常利益当期純利益備考
2016年3月期406,256△58,002△58,307単体
2017年3月期911,80149,92263,520単体
2018年3月期1,605,367123,795104,772単体
2019年3月期2,372,862160,462104,414単体
2020年3月期2,708,15659,79540,963この期から連結
2021年3月期3,961,168205,452△25,945moto取得を決議。Juicer事業の減損で純損失
2022年3月期2,681,94123,239△677,560motoを連結。収益認識基準を適用し代理人取引は純額で計上
2023年3月期2,690,664131,384126,431
2024年3月期2,054,553△2,351△46,977
2025年3月期1,605,189△164,974△189,375
2026年3月期1,423,872△50,110△73,484期後の2026年8月にmoto譲渡を決議
出所:ログリー 有価証券報告書 第13期(2019年3月期)、第15期(2021年3月期)、第20期(2026年3月期)【主要な経営指標等の推移】
出所:ログリー 有価証券報告書 第13期(2019年3月期)、第15期(2021年3月期)、第20期(2026年3月期)【主要な経営指標等の推移】

ログリー:財務基盤の推移

有利子負債(千円)純資産(千円)

有利子負債は2022年3月期の972百万円をピークに103百万円まで減少した

ログリー:財務基盤の推移
(千円)有利子負債純資産特別損失備考
2016年3月期−385,522−単体。借入と特別損失は有報で照合できていない
2017年3月期50,044449,0422,233単体
2018年3月期50,000553,8150単体
2019年3月期50,0001,214,2340単体
2020年3月期517,7581,183,8010
2021年3月期363,2741,229,203160,184特別損失の主因はJuicer事業の減損
2022年3月期972,090489,174628,592motoののれんの減損損失596,484を計上
2023年3月期717,570615,721542
2024年3月期423,390676,93620,896
2025年3月期263,192487,03520,998
2026年3月期103,154415,24942,548
出所:ログリー 有価証券報告書 第13期(2019年3月期)〜第20期(2026年3月期)(貸借対照表・損益計算書)。有利子負債は短期借入金・1年内返済予定の長期借入金・長期借入金の合計
出所:ログリー 有価証券報告書 第13期(2019年3月期)〜第20期(2026年3月期)(貸借対照表・損益計算書)。有利子負債は短期借入金・1年内返済予定の長期借入金・長期借入金の合計

ログリー:moto単体の業績の推移

売上高(百万円)営業利益率(%)

取得前に317百万円あった売上高は、2026年3月期に19百万円となった

ログリー:moto単体の業績の推移
(百万円)売上高営業利益当期純利益純資産備考
2018年12月期80452829開示の欄名は「営業収益」。営業利益として読む
2019年9月期2011066998決算期を12月から9月へ変更
2020年9月期3178057155取得前の最終の開示
2024年3月期372318131
2025年3月期22108139
2026年3月期199737配当110百万円を実施し純資産が減少
出所:ログリー 適時開示「moto株式会社の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ」(2021年3月30日) / ログリー 適時開示「連結子会社からの配当金受領及び連結子会社の異動(株式売却)に関するお知らせ」(2026年8月20日)
出所:ログリー 適時開示「moto株式会社の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ」(2021年3月30日) / ログリー 適時開示「連結子会社からの配当金受領及び連結子会社の異動(株式売却)に関するお知らせ」(2026年8月20日)
人物:意思決定前後の取締役6名

取締役6名(2020年6月株主総会決議)

役員名役職
取締役業務執行担当領域
吉永浩和取締役:代表取締役社長業務執行:担当:
岸本雅久取締役:取締役CFO業務執行:担当:
池永彰文取締役:取締役COO業務執行:担当:
橋本訓幸法曹取締役:監査等委員業務執行:担当:
笹部秀樹会計取締役:監査等委員業務執行:担当:
藤岡大祐会計取締役:監査等委員業務執行:担当:
この一覧は2020年6月の定時株主総会の直後に提出された有価証券報告書の【役員の状況】による。
参考文献

参考文献

参考

次に読む決断

同業他社の業績概況

免責事項およびポリシー