指名委員会等設置会社へ移行(2019年・NTNの決断)

更新:
論点業務執行を執行役へ委譲するか
NTN:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
監査役会を廃止し、業務執行を15名の執行役へ渡した機関設計の組み替え2019年6月25日開催の第120期定時株主総会での承認を経て、監査役会設置会社から指名委員会等設置会社へ移行した。掲げた目的は、迅速な意思決定機構・業務執行機構の構築、経営の監督機能の強化、そして経営の透明性・公正性の向上である。

何をなぜ決めたか:監査役会を廃止し、業務執行を15名の執行役へ渡した機関設計の組み替え

概要

2019年6月25日開催の第120期定時株主総会での承認を経て、監査役会設置会社から指名委員会等設置会社へ移行した。掲げた目的は、迅速な意思決定機構・業務執行機構の構築、経営の監督機能の強化、そして経営の透明性・公正性の向上である。

取締役は14名から11名へ絞られ、社外取締役は2名から5名に増加した。監査役4名は同日付で退任し、うち3名が取締役に就任している。業務執行は取締役会から大幅に権限を委ねられた15名の執行役が担い、取締役と執行役の任期はいずれも1年と定款に定めた。

背景

移行を決めた2019年3月期は、特別損失192億円を計上して最終損益が70億円の赤字に転落した期だった。売上高7,338億円・営業利益269億円で、長期ビジョンに掲げた売上高1兆円・営業利益率10%以上とは距離があり、中期経営計画「DRIVE NTN 100」で事業構造の変革を急いでいた。

法務面の負荷も残っていた。軸受の国内取引をめぐる独占禁止法違反行為と、2014年3月の欧州委員会決定の対象となった欧州競争法違反行為に関連して、米国・カナダのクラスアクション、ルノーとFCAによる損害賠償請求訴訟が続いており、代表執行役社長を委員長とする公正取引監察委員会と競争法遵守に関する基本規程で遵法体制を構築していた。

内容

三委員会はいずれも社外取締役が過半を占め、委員長もすべて社外取締役が務めた。指名委員会は5名中3名、監査委員会は4名中3名、報酬委員会は5名中3名が社外である。監査委員会には常勤の監査委員2名を置き、職務を補助する専任組織として経営監査室(2名)を設けた。室員の任命・異動・懲戒・評価は監査委員会の同意を得たうえで決める。

取締役会は、法令又は定款で定める決議事項以外の業務執行を大幅に執行役へ委譲し、原則月1回開催する。取締役の員数は定款で15名以内。移行時点の取締役会議長は取締役代表執行役社長が務めた。

含意

報酬の決め方も同時に変わった。移行前の枠は取締役が年額600百万円以内(2006年の第107期定時株主総会決議)、監査役が年額70百万円以内(2016年の第117期定時株主総会決議)で、いずれも株主総会の決議に縛られていた。移行後は報酬委員会が方針と個人別の内容を決める。

取締役(執行役兼務者を除く)は基本報酬のみとし、別途、議長と各委員会の委員長・委員の報酬を置く。執行役は基本報酬・年次インセンティブ(賞与)・中長期型インセンティブ(株式報酬)で構成し、株式報酬は中期経営計画の主要目標値の達成度に連動させた。取締役会議長は2021年3月期に非業務執行取締役へ、2022年3月期からは社外取締役へ移っている。

いつ何が起きたか8件
当時の取締役11名

当時の取締役(2019年6月株主総会決議)

考察:渡した権限と、受け止める側の厚み
考察

考察:渡した権限と、受け止める側の厚み

この移行で実際に動いたのは、監査の形よりも決定の置き場だったとみられる。取締役会は自らの決議事項を法令と定款が求める範囲まで絞り、残りの業務執行を15名の執行役へ渡した。同時に、株主総会が握っていた報酬の上限という縛りが外れ、方針と個人別の額を決める権限は報酬委員会へ移っている。社外取締役を2名から5名へ増やし、三委員会の委員長をすべて社外取締役に委ねた人事は、執行役へ渡した権限に見合う監督を取締役会に持たせる措置だったのだろう。

もっとも、なぜこの時期だったのかは示されていない。挙げられた目的は迅速化・監督機能の強化・透明性と公正性の向上という一般的な言葉で、直前の期の最終赤字とも、続いていた競争法関連の訴訟とも結び付けてはいない。形の上では、指名・監査・報酬のいずれも社外が過半を占める体制が移行と同時に整った。その一方で、取締役会議長の座が社外取締役へ移るまでには3年を要しており、構えが運用として効くまでには時間がかかっている。移行が経営の実質をどれだけ変えたのかは、日本精工との共同持株会社——ここでも機関設計は指名委員会等設置会社とされた——をどう回すかで問われることになるのかもしれない。

Yutaka Sugiura, 2026年9月
数字で見る3表

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図と表

NTN:取締役会と監査体制の構成

取締役(名)うち社外取締役率(%)
NTN:取締役会と監査体制の構成
(名)取締役うち社外取締役監査役執行役備考
2014年3月期1224−監査役4名のうち社外監査役は3名、常勤監査役は2名。以下2018年3月期まで同じ
2015年3月期1424−
2016年3月期1424−
2017年3月期1424−
2018年3月期1424−移行前の最後の期。執行役は置かず、取締役から委任された執行役員が業務を執行
2019年3月期115−152019年6月25日付で指名委員会等設置会社へ移行。監査役4名は同日付で退任した
2020年3月期115−11
2021年3月期115−11取締役会議長が取締役代表執行役社長から非業務執行取締役に替わった
2022年3月期126−13取締役会議長を社外取締役が務める体制になった
2023年3月期115−11
2024年3月期126−12
出所:NTN 有価証券報告書 第115期(2014年3月期)〜第125期(2024年3月期)(コーポレート・ガバナンスの状況等。各期の有価証券報告書提出日現在の員数)
出所:NTN 有価証券報告書 第115期(2014年3月期)〜第125期(2024年3月期)(コーポレート・ガバナンスの状況等。各期の有価証券報告書提出日現在の員数)

NTN:三委員会の構成

NTN:三委員会の構成
(名)指名委員会監査委員会報酬委員会備考
2019年3月期545社外取締役はそれぞれ3名・3名・3名。委員長はいずれも社外取締役が務めた
2020年3月期545社外取締役はそれぞれ3名・3名・3名
2021年3月期545社外取締役はそれぞれ3名・3名・3名
2022年3月期545社外取締役はそれぞれ3名・3名・3名
2023年3月期545社外取締役はそれぞれ3名・3名・3名
2024年3月期556監査委員会が5名(うち社外3名)、報酬委員会が6名(うち社外4名)に増加した
出所:NTN 有価証券報告書 第120期(2019年3月期)〜第125期(2024年3月期)(コーポレート・ガバナンスの概要。各期の有価証券報告書提出日現在の委員)
出所:NTN 有価証券報告書 第120期(2019年3月期)〜第125期(2024年3月期)(コーポレート・ガバナンスの概要。各期の有価証券報告書提出日現在の委員)

経緯と対応

経緯と対応
科目概要備考
移行の承認2019年6月25日第120期定時株主総会での承認を経て、同日付で移行した
移行前の体制監査役会設置会社2018年6月27日現在で取締役14名(うち社外2名)、監査役4名(うち社外3名)
移行の目的迅速な意思決定機構・業務執行機構の構築経営の監督機能の強化、経営の透明性・公正性の向上とあわせて掲げた
移行後の取締役会取締役11名・うち社外取締役5名任期1年、員数は15名以内と定款で定める。原則月1回及び必要の際に開催する
執行役への権限委譲大幅に委譲法令又は定款で定める取締役会決議事項以外の業務執行が対象
執行役15名取締役会の決議により選任し、任期は1年と定款で定める
指名委員会の構成5名中3名が社外取締役委員長は社外取締役の津田登氏。取締役の選解任に関する議案の内容を決定する
監査委員会の構成4名中3名が社外取締役委員長は社外取締役の川原廣治氏。川原廣治氏と井上博徳氏が常勤の監査委員
報酬委員会の構成5名中3名が社外取締役委員長は社外取締役の和田彰氏。方針と個人別の報酬等の内容を決定する
監査役の退任4名全員が退任2019年6月25日付。うち3名は取締役に就任した
監査委員会の補助組織経営監査室(2名)室員の任命・異動・懲戒・評価は監査委員会の同意を得たうえで決定する
移行前の取締役報酬の枠年額600百万円以内2006年6月29日開催の第107期定時株主総会決議
移行前の監査役報酬の枠年額70百万円以内2016年6月24日開催の第117期定時株主総会決議
移行後の報酬の決定報酬委員会が決定取締役(執行役兼務者を除く)は基本報酬のみ。別途、議長と委員長・委員の報酬
執行役の報酬構成基本報酬・賞与・株式報酬株式報酬は中期経営計画の主要目標値に対する達成度に基づき当社株式を交付する
株式報酬の拠出上限3事業年度345百万円役員報酬の限度額とは別枠。2016年6月24日開催の第117期定時株主総会決議
責任限定契約取締役6名と締結取締役井上博徳氏と社外取締役5名。限度額は法令が規定する額とする
移行時の取締役会議長取締役代表執行役社長2021年3月期に非業務執行取締役、2022年3月期以降は社外取締役が務める
出所:NTN 有価証券報告書 第120期(2019年3月期)【コーポレート・ガバナンスの概要】【役員の報酬等】・第119期(2018年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況】・第121期(2020年3月期)【役員の報酬等】
出所:NTN 有価証券報告書 第120期(2019年3月期)【コーポレート・ガバナンスの概要】【役員の報酬等】・第119期(2018年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況】・第121期(2020年3月期)【役員の報酬等】
当時の取締役11名

当時の取締役(2019年6月株主総会決議)

参考文献

参考文献

参考
  • NTN 有価証券報告書「第120期(2019年3月期)【コーポレート・ガバナンスの概要】」
  • NTN 有価証券報告書「第120期(2019年3月期)【役員の報酬等】」
  • NTN 有価証券報告書「第121期(2020年3月期)【役員の報酬等】」
  • NTN 有価証券報告書「第119期(2018年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況】」
  • NTN 有価証券報告書「第115期(2014年3月期)〜第118期(2017年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況】」
  • NTN 有価証券報告書「第121期(2020年3月期)〜第125期(2024年3月期)【コーポレート・ガバナンスの概要】」
  • NTN 有価証券報告書「第120期(2019年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【事業等のリスク】」
  • NTN コーポレート・ガバナンスに関する報告書「2021年12月21日〜2026年6月29日提出分」

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