筆者の見解
規模でなく利益率を追う経営哲学の行方
この決断で問われたのは、主力事業を手放したあとに何を中核に据えるかということであった。液晶や半導体という当時はまだ大きくなかった市場に的を絞り、汎用品ではなく顧客の製造工程に入り込む材料で稼ぐという選択は、1989年の時点では控えめな計画にしか見えなかったかもしれない。しかし、その計画を歴代の社長が言葉を変えながら守り続けたことが、40年近い年月をかけて同業他社とは異なる収益構造を築いただろう。
もっとも、この経営哲学がこの先も通用する保証はない。農薬は寡占化が進む世界市場のなかでニッチな地位を守らねばならず、半導体材料はAI需要という追い風がいつまで続くのか見通しにくい。規模を追わず利益率を追うという1989年以来の選択は、成長市場をどれだけ的確に選び直せるかという問いを、今なお経営陣に投げかけているとみられる。
Yutaka Sugiura, 2026年7月