この再建の核心は、危機のなかでも会社の基本路線を変えなかった点にある。バブル崩壊で賃貸ビルの収益が沈んだとき、事業構成を大きく組み替えて身軽になる道もありえた。だが住友不動産が選んだのは、肥大化した組織を削って身を軽くしつつ、安藤太郎氏が逆張りで築いた都心オフィスビル集中の路線は手放さないという再建であった。特別損失を計上して最終赤字に沈んでもなお都心ビルの開発・取得を続けた判断には、価格が下がったときこそ好立地を仕込む好機だという読みがうかがえる。
もっとも、路線を守り抜けたのは、賃貸主体で被害が比較的軽く済んだという安藤時代の備えがあってのことでもあった。不況を『経営者の大学院』と位置づけた会長の下地と、現場からきた社長のリストラへの迷いのなさが、危機の再建を両側から支えた。傷の深さと、路線を変えない胆力とは、時に紙一重で成否を分ける。住友不動産のその後のビル賃貸収益の伸びは結果として判断を裏づけたが、価格下落がさらに長引いていれば評価は変わりえたともいえる。