東京ドームの買収(2020年・三井不動産の決断)

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論点 都心の大規模用地を買収で得るか
三井不動産:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
読売新聞グループと組んだTOBによる完全子会社化

何をなぜ決めたか:読売新聞グループと組んだTOBによる完全子会社化

概要

2020年11月27日、三井不動産が東京ドームへの公開買付けを決議し、2021年1月25日に連結子会社とした経営判断。買付価格は1株1,300円、応募株券等の総数78,637,609株に対する取得原価は102,228百万円であった。菰田正信社長のもとで、スタジアム・アリーナ事業という新規事業領域への進出を図った。

背景

消費が「モノ」から「コト・体験」へ移るなか、スポーツ・エンターテインメントを軸とする街づくりを検討していた。東京都心に約4万坪を所有する東京ドームはかねて注視の対象で、コロナ禍により2021年1月期は営業利益130億円・当期純利益180億円の赤字転落が見込まれていた。

内容

公開買付期間は2020年11月30日から2021年1月18日までの31営業日。読売巨人軍との連携のため、完全子会社化の後に議決権の20%を読売新聞グループ本社へ譲渡する順序を組み、株主間契約を締結した。9.61%を持つオアシス・マネジメントとは応募契約を締結した。

含意

取得原価102,228百万円に対しのれんは発生せず、無形固定資産に配分されたのは商標権4,830百万円だけであった。東京ドームは施設営業セグメントのスポーツ・エンターテインメントとして開示される事業になり、2025年3月期の営業収益は61,948百万円に達している。

いつ何が起きたか 5件
当時の取締役 12名

当時の取締役(2020年6月株主総会決議)

考察:のれんの立たない買収が意味するもの
考察

考察:のれんの立たない買収が意味するもの

取得原価102,228百万円に対してのれんが発生しなかったことは、この買収の性格をよく表している。払ったのは将来の超過収益力への上乗せではなく、東京都心に約4万坪という土地とその上の施設そのものの値段であった。掲げられた理屈はスタジアム・アリーナ事業という新規領域への進出だが、支払いの構造だけを見れば、実体は不動産の取得に近い。運営の経験と知見は価格に乗る資産としてではなく、相手が抱え続ける組織のなかにしか無かったと推察される。

もっとも、その後の数字は、価格に乗らなかったものが事業として効いてきたことを示している。東京ドームは施設営業セグメントのスポーツ・エンターテインメントとして開示される事業になり、その営業収益は2024年3月期の53,934百万円から2025年3月期には61,948百万円へ伸びた。土地の値段で買ったものが、セグメントとして計上される段階へ進んだことになる。都市計画公園の指定を受けた敷地の再整備がどう具体化するかは先の話で、この取得が用地の取得に終わるのか、街づくりの構成要素そのものの入れ替えになるのかは、なお見定める段階にある。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る 3表

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図と表

三井不動産:東京ドームの業績推移(被取得企業)

売上高(百万円)営業利益率(%)
三井不動産:東京ドームの業績推移(被取得企業)
(百万円) 売上高営業利益経常利益当期純利益 備考
2011年1月期 69,0618,6634,835△873
2012年1月期 73,2085,2482,336362
2013年1月期 80,7639,6467,4103,914
2014年1月期 83,56211,7249,3188,077
2015年1月期 83,21511,2709,1367,441
2016年1月期 85,87512,73710,6364,559
2017年1月期 87,76112,58910,7716,635 第107期から親会社株主に帰属する当期純利益の名称になった
2018年1月期 83,68611,38910,0578,116
2019年1月期 87,04811,48110,4026,962
2020年1月期 91,55711,72810,6698,002 公開買付けの直前に開示された通期。売上高は10期で最高となった
出所:東京ドーム 有価証券報告書 第101期〜第110期(連結損益計算書)
出所:東京ドーム 有価証券報告書 第101期〜第110期(連結損益計算書)

三井不動産:三井不動産の連結における東京ドーム事業

三井不動産:三井不動産の連結における東京ドーム事業
(百万円) 東京ドームセグメント売上高セグメント利益セグメント資産 備考
2022年3月期 59,388−−− その他セグメントの売上高の内訳。施設営業セグメントの新設は第112期
2023年3月期 73,142144,577△3,690515,576 組替後のスポーツ・エンターテインメントは49,379
2024年3月期 −194,51226,333494,851 東京ドーム単独の内訳はなくなり、スポーツ・エンターテインメント53,934
2025年3月期 −224,05438,610523,352 スポーツ・エンターテインメントは61,948。利益は事業利益の定義へ変更
出所:三井不動産 有価証券報告書 第110期〜第113期(セグメント情報等、経営成績等の分析)
出所:三井不動産 有価証券報告書 第110期〜第113期(セグメント情報等、経営成績等の分析)

買収の条件

買収の条件
科目 概要 備考
被取得企業 ㈱東京ドーム 東京ドームシティ事業、流通事業、不動産事業、熱海事業、競輪事業
取得の法的形式 現金を対価とした株式取得 取得企業を決定した根拠も、現金を対価に株式を取得したこと
公開買付期間 2020年11月30日〜2021年1月18日 取締役会の決議は11月27日。届出当初の期間で31営業日
公開買付価格 1株につき1,300円 前営業日の終値897円に44.93%、直近6か月平均802円に62.09%のプレミアム
買付予定数の下限 61,805,100株 議決権の3分の2にあたる66.67%。買付予定数の上限は設定していない
応募株数 78,637,609株 下限を上回り、応募株券等の全部を買い付けた
企業結合日 2021年1月25日 公開買付けの決済の開始日。みなし取得日は2021年1月31日
取得した議決権比率 84.82% 取得前は―%。読売新聞グループ本社が0.04%を所有していた
取得原価 102,228百万円 対価は現金。1株1,300円に応募株数を乗じた額にあたる
取得のための支出 77,788百万円 取得価額から連結開始時の現金及び現金同等物24,440百万円を控除した額
取得関連費用 616百万円 アドバイザリー費用等
のれん 発生していない 負ののれんも計上していない
のれん以外の無形固定資産 商標権 4,830百万円 償却期間は10年間
受け入れた資産合計 358,593百万円 流動資産40,486百万円、固定資産318,106百万円
受け入れた負債合計 238,093百万円 流動負債46,647百万円、固定負債191,446百万円
非支配株主持分 18,271百万円 連結開始時。84.82%の取得で、残る15.18%は買い取っていない
読売新聞グループ本社への譲渡 議決権の20% 完全子会社化の完了後に譲渡し、三井不動産80%・読売20%となる
通期換算した売上高 39,756百万円 期首に結合したと仮定した概算額。監査証明を受けていない
通期換算した純損失 △17,287百万円 同じ概算で営業利益△12,952百万円、経常利益△15,785百万円
結合の理由 街づくりとスタジアム・アリーナ事業の相互活用 両社の企業価値向上と、被取得企業のコロナ禍からの回復につながると判断
出所:三井不動産 有価証券報告書 第109期(2021年3月期)【企業結合等関係】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】 / 三井不動産 適時開示(2020年11月27日・2021年1月19日)
当時の取締役 12名

当時の取締役(2020年6月株主総会決議)

参考文献

次に読む決断

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