堯アセットのMBOとエフィッシモの対抗TOB(2025年・ソフト99コーポレーションの決断)2025年 | ソフト99コーポレーションの決断

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何をなぜ決めたか:創業家による非公開化の不成立と、長期株主による議決権の過半の取得

概要
概要

2025年8月6日、ソフト99コーポレーションの取締役会は、田中秀明社長が全株式を保有する堯アセットマネジメントのMBOに賛同し、株主に応募を推奨した。買付価格は1株2,465円で、狙いは非公開化である。ところが9月12日、18年以上の株主であるエフィッシモ キャピタル マネージメントの運用先が、1株4,100円の対抗公開買付けを公表した。11月13日に両案の買付期間が満了し、MBOは不成立、対抗案は成立した。

取締役会の意見は提案の進展ごとに動いた。MBOについては9月16日に応募推奨を撤回し、賛同だけを維持した。対抗案には同日に意見を留保し、9月25日に反対へ転じた。エフィッシモ側が2026年1月22日に同じ価格で再度の公開買付けを始めると、取締役会は2月17日に賛同と応募推奨を決議した。

背景
背景

ソフト99コーポレーションは、田中勇吉氏が1952年9月に家具用ワックスの製造で創業した日東商会を前身とする。田中秀明氏は2023年3月頃、東京証券取引所の要請を受ける中で、足元の業績や株価に捉われず施策を実行できる経営体制が要ると判断した。固有技術の強化、サービス領域と海外市場への展開、デジタル技術の活用、アライアンスとM&Aの4施策は一時的に業績を悪化させうる。そこで短期の株価から離れる非公開化を選んだ。

市場の評価は低かった。MBOの公表前日にあたる2025年8月5日の終値は1,610円で、2025年3月期の1株当たり純資産2,630.29円を大きく下回る。エフィッシモは2007年5月の初取得以来、十数回の経営陣との面談で課題を伝えてきた。ROEは上場以来最大5.4%、平均2.9%で、株価はPBR1倍を上回らなかったとエフィッシモ側は指摘している。

内容
内容

MBOは創業家の持分を土台に組まれた。田中秀明氏、資産管理会社のサントレードとエイチエーエス、ほかの創業家株主の計6,830,352株(31.63%)が不応募を約束した。応募を約束した株主は奨学基金の財団と創業家株主に加え、9月2日にKeePer技研の2,687,700株(12.45%)が入り、合意の合計は48.61%に達した。買付予定数の下限は7,566,400株(35.04%)である。買付価格はKPMGのDCF法による2,320円〜2,893円の範囲に収まる。

対抗案は非公開化を目的に掲げず、下限を6,163,300株(28.54%)に置いた。取締役会は、3分の2に届かなければ少数株主が取り残され、上場廃止のおそれもあるとして反対した。田中秀明氏の退任による企業価値の毀損も理由に挙げた。エフィッシモ側は10月1日、3分の2未満で終われば同じ価格で上限も下限も置かない公開買付けを必ず実施すると表明した。

沿革:意思決定前後の出来事12件
考察:MBOを退けた1,420円の価格差
考察

考察:MBOを退けた1,420円の価格差

取締役会がMBOへの賛同を維持したのは、田中秀明氏の経営の継続を企業価値の源泉とみたためである。自動車の変化と法規制に備える先行投資は、短期の業績を押し下げる。だから市場の評価から離れる非公開化には筋が通っていた。対抗案は非公開化を目的に掲げず、議決権が3分の2に届く保証もない。少数株主が残され、上場廃止のおそれもある状態と比べれば、MBOのほうが企業価値を守る選択に見えたのだろう。

しかし、MBOの強みは価格の弱さと裏表だった。創業家が31.63%を持つ以上、残りの株主は買付価格でしか判断できない。その価格は1株当たり純資産2,630.29円を下回る2,465円から始まった。2,680円へ引き上げても、対抗案との差は1,420円残った。合意の合計が48.61%あっても、KeePer技研の12.45%は取締役会の賛同の維持を条件とする契約にすぎない。第2位株主の株主共同の利益の前では、この契約は応募を拘束できなかった。

結果として非公開化という結論は残り、変わったのは価格と主導権である。取締役会は反対した相手の同じ4,100円に2026年2月に応募を推奨し、エフィッシモ側は54.82%を取得した。2026年9月には創業家と合意し、73.00%の賛成予定で一般株主の退出を付議した。つまり市場が否定したのは非公開化ではなく、MBOの価格だった。到達点の評価は、11月26日の臨時株主総会の承認と、業務執行に関与しない方針の株主のもとで成長施策が実行されるかで決まる。

Yutaka Sugiura, 2026年11月

数字で見る

数値:意思決定前後の事業数値4件

ソフト99コーポレーション:業績と純資産の推移

売上高(百万円)営業利益率(%)
(百万円)売上高営業利益親会社株主に帰属する当期純利益純資産
2021年3月期26,8023,2081,53949,874
2022年3月期28,4353,7602,75551,391
2023年3月期30,1703,2562,06352,772
2024年3月期29,8743,5792,63154,627
2025年3月期29,7424,0332,91356,572
2026年3月期31,2324,2402,96158,845
ソフト99コーポレーション:業績と純資産の推移
(百万円)売上高営業利益親会社株主に帰属する当期純利益純資産備考
2021年3月期26,8023,2081,53949,874
2022年3月期28,4353,7602,75551,391
2023年3月期30,1703,2562,06352,772
2024年3月期29,8743,5792,63154,627
2025年3月期29,7424,0332,91356,5721株当たり純資産は2,630.29円
2026年3月期31,2324,2402,96158,845公開買付関連費用339百万円を特別損失に計上
出所:ソフト99コーポレーション 有価証券報告書 第67期〜第72期(連結損益計算書・主要な経営指標等の推移)
出所:ソフト99コーポレーション 有価証券報告書 第67期〜第72期(連結損益計算書・主要な経営指標等の推移)

ソフト99コーポレーション:公開買付価格の推移

(円)堯アセットマネジメントECM Master Fund SPV 3
2025年8月6日2,465−
2025年9月12日2,4654,100
2025年10月17日2,6804,100
2025年11月13日2,6804,100
2026年1月22日−4,100
2026年9月11日−4,100
ソフト99コーポレーション:公開買付価格の推移
(円)堯アセットマネジメントECM Master Fund SPV 3備考
2025年8月6日2,465−MBOの公表。買付期間は8月7日に開始
2025年9月12日2,4654,100対抗案の公表。買付期間は9月16日に開始
2025年10月17日2,6804,100MBOの価格を215円引き上げ
2025年11月13日2,6804,100両案の買付期間が満了
2026年1月22日−4,100再度の公開買付けを開始
2026年9月11日−4,100株式併合の端数処理で交付する見込額
出所:堯アセットマネジメント 公開買付届出書(2025年8月7日提出)及び訂正公開買付届出書(2025年10月17日提出) / ECM Master Fund SPV 3 公開買付届出書(2025年9月16日提出・2026年1月22日提出) / ソフト99コーポレーション 臨時報告書(2026年9月11日提出)
出所:堯アセットマネジメント 公開買付届出書(2025年8月7日提出)及び訂正公開買付届出書(2025年10月17日提出) / ECM Master Fund SPV 3 公開買付届出書(2025年9月16日提出・2026年1月22日提出) / ソフト99コーポレーション 臨時報告書(2026年9月11日提出)

ソフト99コーポレーション:応募株式数と買付予定数の下限

(株)応募株式数買付予定数の下限
MBO(2025年11月)5,601,4617,566,400
対抗案1回目(2025年11月)6,767,9176,163,300
対抗案2回目(2026年3月)4,034,256−
ソフト99コーポレーション:応募株式数と買付予定数の下限
(株)応募株式数買付予定数の下限備考
MBO(2025年11月)5,601,4617,566,400下限に未達で不成立。全部の買付けを行わず
対抗案1回目(2025年11月)6,767,9176,163,300下限以上で成立。KeePer技研の2,687,700株を含む
対抗案2回目(2026年3月)4,034,256−上限・下限を設定せず、応募の全部を取得
出所:堯アセットマネジメント 公開買付報告書(2025年11月14日提出) / ECM Master Fund SPV 3 公開買付報告書(2025年11月14日提出・2026年3月9日提出)
出所:堯アセットマネジメント 公開買付報告書(2025年11月14日提出) / ECM Master Fund SPV 3 公開買付報告書(2025年11月14日提出・2026年3月9日提出)

ソフト99コーポレーション:所有割合の推移

(%)ECMグループ田中秀明氏とサントレード
2025年9月16日4.818.1
2025年11月20日36.1418.1
2026年3月13日54.8218.1
2026年9月11日54.8218.18
ソフト99コーポレーション:所有割合の推移
(%)ECMグループ田中秀明氏とサントレード備考
2025年9月16日4.818.1対抗案の開始時点。田中秀明氏3.07%とサントレード15.03%
2025年11月20日36.1418.11回目の決済後
2026年3月13日54.8218.12回目の決済日。親会社となる
2026年9月11日54.8218.18両者の議決権行使の合意。合計73.00%
出所:ECM Master Fund SPV 3 公開買付届出書(2026年1月22日提出) / ソフト99コーポレーション 臨時報告書(2026年3月10日提出・2026年9月11日提出) / 堯アセットマネジメント 公開買付届出書(2025年8月7日提出)
出所:ECM Master Fund SPV 3 公開買付届出書(2026年1月22日提出) / ソフト99コーポレーション 臨時報告書(2026年3月10日提出・2026年9月11日提出) / 堯アセットマネジメント 公開買付届出書(2025年8月7日提出)
人物:意思決定前後の取締役9名

取締役9名(2024年6月株主総会議決)

区分役員名役職
取締役業務執行担当領域
業務執行兼務田中秀明取締役:代表取締役社長業務執行:担当:
小西紀行取締役:常務取締役ポーラスマテリアル事業担当業務執行:担当:
上尾茂金融取締役:取締役管理本部長業務執行:担当:
宮園哲哉取締役:取締役生産統括本部長業務執行:担当:
田中一成取締役:取締役営業統括本部長業務執行:担当:
石居誠取締役:取締役企画開発本部長業務執行:担当:
生駒英昭取締役:取締役営業統括本部副本部長業務執行:担当:
独立役員藤井美保代ファンド取締役:取締役業務執行:担当:
井原慶子取締役:取締役業務執行:担当:
この一覧は2025年6月の定時株主総会の直後に提出された有価証券報告書の【役員の状況】による。
参考文献

参考文献

参考

  • 堯アセットマネジメント 訂正公開買付届出書(2025年9月17日提出)【買付け等の目的】
  • KeePer技研 大量保有報告書(2025年3月14日提出)【最近60日間の取得又は処分の状況】
  • ソフト99コーポレーション 有価証券報告書 第67期〜第72期(連結損益計算書・主要な経営指標等の推移)
  • 堯アセットマネジメント 公開買付届出書「公開買付届出書(2025年8月提出)」
  • ECM Master Fund SPV 3 公開買付届出書「公開買付届出書(2025年9月提出)」
  • ソフト99コーポレーション 意見表明報告書「意見表明報告書(2025年9月提出)」
  • ソフト99コーポレーション 訂正意見表明報告書「訂正意見表明報告書(2025年9月提出)」
  • 堯アセットマネジメント 訂正公開買付届出書「訂正公開買付届出書(2025年10月提出)」
  • ECM Master Fund SPV 3 訂正公開買付届出書「訂正公開買付届出書(2025年10月提出)」
  • 堯アセットマネジメント 公開買付報告書「公開買付報告書(2025年11月提出)」
  • ECM Master Fund SPV 3 公開買付報告書「公開買付報告書(2025年11月提出)」
  • ソフト99コーポレーション 臨時報告書「臨時報告書(2025年12月提出)」
  • ECM Master Fund SPV 3 公開買付届出書「公開買付届出書(2026年1月提出)」
  • ソフト99コーポレーション 訂正意見表明報告書「訂正意見表明報告書(2026年2月提出)」
  • ECM Master Fund SPV 3 公開買付報告書「公開買付報告書(2026年3月提出)」
  • ソフト99コーポレーション 臨時報告書「臨時報告書(2026年3月提出)」
  • ソフト99コーポレーション 臨時報告書「臨時報告書(2026年6月提出)」
  • ソフト99コーポレーション 臨時報告書「臨時報告書(2026年9月提出)」
  • ソフト99コーポレーション 有価証券報告書「第72期(2026年3月期)【主要な経営指標等の推移】【大株主の状況】」

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