KKR・JICキャピタルとのMBO(2025年・トプコンの決断)2025年 | トプコンの決断

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何をなぜ決めたか:投資ファンド3社の入札と社長続投による、長期投資のための上場廃止

概要
概要

2025年3月28日、トプコンは投資ファンドのKKRとJICキャピタル(JICC)が資本参画するMBOについて、公開買付けが始まれば賛同し応募を推奨するとの意見を取締役会で決議した。買付者のTK株式会社は買付価格を1株3,300円とし、国内外の競争法と対内直接投資の手続きを進めたうえで、7月29日にTOBを開始した。応募は84,748,472株となって下限の52,861,519株を上回り、TOBは成立した。

成立後の所有割合は80.32%となり、TK株式会社は決済開始日の9月18日付で親会社へ異動するとした。残る株主から株式を取得するため、11月11日の臨時株主総会は21,087,000株を1株とする株式併合を99.98%の賛成で可決した。上場廃止の予定日は12月2日、併合の効力発生日は12月4日とした。

背景
背景

トプコンは2023年度からの「中期経営計画2025」で、創立100周年の2032年に連結売上高4,000億円、計画最終年度にROE13〜15%を目標とした。ところが2025年3月期の営業利益は8,826百万円に減少し、親会社株主に帰属する当期純利益は417百万円、ROEは0.4%にとどまった。ポジショニング事業の売上高は投資抑制の影響で131,359百万円に減少した。

課題は2事業で異なった。ポジショニング事業は大手メーカーの内製化を見込み構造改革を要し、アイケア事業は成長投資の加速を要した。トプコンは、上場のまま進めれば短期の収益悪化で株価が下落しかねないと判断し、2024年7月頃から非公開化を検討した。株主名簿の外国法人等の比率は55.54%に達し、バリューアクトは13.69%、オアシスは10.58%の保有を大量保有報告書で報告していた。

内容
内容

買付者のTK株式会社はTKホールディングス株式会社の完全子会社で、その親会社はKKRが間接的に運営するKKRファンドである。KKRファンドは普通株式で2,560億円、JICCのファンドはA種・B種優先株式で950億円の出資を約した。JICCは入札に参加せず、選定後に間接的な少数出資を了承した。金融機関などからの借入れは1,139億円が上限で、買付代金3,482億円を調達可能額3,699億円が上回った。

MBOの要は江藤隆志社長CEOの続投である。江藤隆志氏は持株を応募し、対価の範囲内で再出資する合意を結び、経営委任の当初期間は2029年3月期の定時株主総会までとした。もう一つの要はバリューアクトの14.62%である。バリューアクトは15,425,800株を応募し、KKRファンドへ約246億円を出資する契約を締結した。この出資持分に議決権は伴わず、取締役も派遣しない。

沿革:意思決定前後の出来事12件
考察:株価から離れて長期投資を選ぶ代償
考察

考察:株価から離れて長期投資を選ぶ代償

トプコンが非公開化を選んだのは、2つの事業が同時に時間を要する投資を求めたからである。ポジショニング事業には構造改革が要り、アイケア事業には成長投資が要る。ROEが0.4%にとどまるなかで短期の収益をさらに悪化させれば、上場企業は株価の下落に直面する。事業会社への売却も候補に入れたうえで、トプコンは江藤隆志社長CEOの続投を前提にファンド3社の入札を選んだ。経営の連続性を保ちながら株主を入れ替える判断であり、JICCの優先株式950億円は長期の資金を補う手段とみられる。

しかし、MBOの価格は経営陣の事業計画に左右される。KKRの提案は3,800円まで上がったのち、下方修正と事業計画の修正を受けて3,300円に下がった。戦略特別委員会は修正を不合理ではないと認めたが、公表前日の終値に対するプレミアムは3.45%にとどまる。バリューアクトは応募と同時に約246億円をKKRファンドへ出資し、一般株主とは異なる条件で投資を継続する。少数株主の過半を条件とする下限も置かなかった。入札で最高値を引き出した点は強みである一方、一般株主が受け取る価値の議論は入札額だけでは閉じない。

TOBは所有割合80.32%の応募を集め、株式併合の議案も99.98%の賛成で可決した。少なくとも株主の応諾という点で、この選択は実行に至った。ところが到達点はまだ定まらない。取得直後の2026年3月期中間決算には、米国子会社の繰延税金資産の取り崩しに伴う法人税等調整額7,012百万円が載った。今後の成否を測る条件は、2029年3月期までの経営委任期間に5,984百万円にとどまるポジショニング事業の利益を回復させ、アイケア事業の投資を収益につなげられるかにある。上場廃止で開示が縮小するため、その判定は外部から難しくなるだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年11月

数字で見る

数値:意思決定前後の事業数値4件

トプコン:業績と財政状態の推移

売上高(百万円)営業利益率(%)
(百万円)売上高営業利益親会社株主に帰属する当期純利益純資産額総資産額
2020年3月期138,9165,38193564,659161,721
2021年3月期137,2476,5932,37670,687168,210
2022年3月期176,42115,91410,69985,150184,983
2023年3月期215,62519,53711,80697,040207,890
2024年3月期216,49711,2044,940110,298247,029
2025年3月期216,0008,826417104,840249,144

営業利益は2023年3月期の19,537百万円から8,826百万円へ減少した

トプコン:業績と財政状態の推移
(百万円)売上高営業利益親会社株主に帰属する当期純利益純資産額総資産額備考
2020年3月期138,9165,38193564,659161,721
2021年3月期137,2476,5932,37670,687168,210
2022年3月期176,42115,91410,69985,150184,983収益認識に関する会計基準を適用した期
2023年3月期215,62519,53711,80697,040207,890
2024年3月期216,49711,2044,940110,298247,029中期経営計画2025の初年度
2025年3月期216,0008,826417104,840249,144MBOの公表期。構造改革に伴う減損損失と公開買付関連費用を特別損失に計上
出所:トプコン 有価証券報告書 第127期・第132期【主要な経営指標等の推移】【連結損益計算書】
出所:トプコン 有価証券報告書 第127期・第132期【主要な経営指標等の推移】【連結損益計算書】

トプコン:所有者別の株式比率と公開買付け前の大株主

  • 日本マスタートラスト信託銀行(信託口)14%
  • CGML PB CLIENT ACCOUNT/ COLLATERAL9%
  • BNYM SA/NV FOR BNYM FOR BNYM GCM CLIENT ACCTS M ILM FE7%
  • STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 5050105%
  • 日本カストディ銀行(信託口)5%
  • その他60%
(%)外国法人等(個人以外)金融機関金融商品取引業者個人その他
2020年3月期43.2237.332.4215.02
2021年3月期44.0939.591.0313.54
2022年3月期47.6336.861.3312.6
2023年3月期43.9434.886.8312.76
2024年3月期55.2626.834.0212.1
2025年3月期55.5425.58.359.27

外国法人等の比率は5年で43.22%から55.54%へ上昇した

トプコン:所有者別の株式比率と公開買付け前の大株主
(%)外国法人等(個人以外)金融機関金融商品取引業者個人その他備考
2020年3月期43.2237.332.4215.02
2021年3月期44.0939.591.0313.54
2022年3月期47.6336.861.3312.6
2023年3月期43.9434.886.8312.76
2024年3月期55.2626.834.0212.1
2025年3月期55.5425.58.359.27個人その他には自己株式2,970,630株を含む
出所:トプコン 有価証券報告書 第127期〜第132期【所有者別状況】 / トプコン 有価証券報告書 第132期(2025年3月期)【大株主の状況】【株式の総数等】 / TK株式会社 公開買付届出書(2025年7月29日提出)【本公開買付けの概要】(バリューアクト各ファンドの所有株式数)
出所:トプコン 有価証券報告書 第127期〜第132期【所有者別状況】 / トプコン 有価証券報告書 第132期(2025年3月期)【大株主の状況】【株式の総数等】 / TK株式会社 公開買付届出書(2025年7月29日提出)【本公開買付けの概要】(バリューアクト各ファンドの所有株式数)

トプコン:KKRの提案価格と提案時の株価

(円)提案価格(下限)提案価格(上限)提案の前営業日の終値
2024年9月13日付提案3,0003,0001,459.5
2024年11月26日付提案3,2003,2001,564
2025年1月6日付提案3,8003,8002,838.5
2025年2月25日付提案3,1003,3002,848
2025年2月28日付改訂提案3,3003,3002,827.5
2025年3月26日付最終提案3,3003,3002,976

KKRの提案は3,800円から3,300円へ下がり、株価との差は縮小した

トプコン:KKRの提案価格と提案時の株価
(円)提案価格(下限)提案価格(上限)提案の前営業日の終値備考
2024年9月13日付提案3,0003,0001,459.5
2024年11月26日付提案3,2003,2001,564
2025年1月6日付提案3,8003,8002,838.52024年12月10日の憶測報道の後。終値は12月30日の値
2025年2月25日付提案3,1003,3002,8481月30日の業績予想の下方修正と事業計画の修正を反映
2025年2月28日付改訂提案3,3003,3002,827.5
2025年3月26日付最終提案3,3003,3002,976公表の前営業日3月27日の終値3,190.0円に対して3.45%のプレミアム
出所:TK株式会社 公開買付届出書(2025年7月29日提出)【対象者における検討・交渉の経緯】【買付け等の価格】
出所:TK株式会社 公開買付届出書(2025年7月29日提出)【対象者における検討・交渉の経緯】【買付け等の価格】

トプコン:報告セグメントの売上高と利益の推移

(百万円)ポジショニング事業 売上高ポジショニング事業 利益アイケア事業 売上高アイケア事業 利益
2020年3月期−−44,489136
2021年3月期−−44,052122
2022年3月期−−57,1383,203
2023年3月期147,69120,46466,6013,968
2024年3月期140,3799,10674,9546,715
2025年3月期131,3595,98484,2068,527

アイケア事業の利益8,527百万円がポジショニング事業の5,984百万円を上回った

トプコン:報告セグメントの売上高と利益の推移
(百万円)ポジショニング事業 売上高ポジショニング事業 利益アイケア事業 売上高アイケア事業 利益備考
2020年3月期−−44,489136測位系はスマートインフラ事業とポジショニング・カンパニーの2区分
2021年3月期−−44,052122測位系はスマートインフラ事業とポジショニング・カンパニーの2区分
2022年3月期−−57,1383,203測位系はスマートインフラ事業とポジショニング・カンパニーの2区分
2023年3月期147,69120,46466,6013,968第131期有報の前年度欄。新しい区分へ組み替えた値
2024年3月期140,3799,10674,9546,715ポジショニング事業へ区分を統合した期
2025年3月期131,3595,98484,2068,527売上高は外部顧客への売上高。アイケア事業の利益がポジショニング事業を上回った
出所:トプコン 有価証券報告書 第127期〜第132期【セグメント情報】
出所:トプコン 有価証券報告書 第127期〜第132期【セグメント情報】
人物:意思決定前後の取締役10名

取締役10名(2024年6月株主総会決議)

役員名役職
取締役業務執行担当領域
江藤隆志取締役:代表取締役社長CEO業務執行:担当:
平野聡取締役:代表取締役会長業務執行:担当:
山崎直子取締役:取締役業務執行:担当:
秋山治彦取締役:取締役専務執行役員財務本部長特需ビジネス推進部長業務執行:担当:
稲葉善治取締役:取締役業務執行:担当:
日髙直輝商社取締役:取締役業務執行:担当:
山崎貴之取締役:取締役専務執行役員TopconPositioningSystems,Inc.エグゼクティブバイスプレジデント、チーフビジネスインテグレーションオフィサー業務執行:担当:
寺本克弘取締役:取締役業務執行:担当:
中井元金融取締役:取締役業務執行:担当:
渡邊玲子会計取締役:取締役常務執行役員総務・人事・法務本部長業務執行:担当:
この一覧は2024年6月の定時株主総会の直後に提出された有価証券報告書の【役員の状況】による。
参考文献

参考文献

参考

  • トプコン 有価証券報告書 第130期(2023年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】
  • トプコン 有価証券報告書 第127期・第132期【主要な経営指標等の推移】【連結損益計算書】
  • トプコン 有価証券報告書 第127期〜第132期【セグメント情報】
  • トプコン 有価証券報告書 第127期〜第132期【所有者別状況】
  • トプコン 有価証券報告書「第132期(2025年3月期)」
  • TK株式会社 公開買付届出書「公開買付届出書」
  • トプコン 意見表明報告書「意見表明報告書」
  • TK株式会社 訂正公開買付届出書「公開買付届出書の訂正届出書」
  • TK株式会社 公開買付報告書「公開買付報告書」
  • トプコン 臨時報告書「親会社及び主要株主の異動」
  • トプコン 臨時報告書「株式併合を目的とする臨時株主総会の招集」
  • トプコン 臨時報告書「財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に著しい影響を与える事象の発生」
  • トプコン 臨時報告書「2025年11月11日開催の臨時株主総会における議決権行使結果」
  • トプコン 臨時報告書「代表取締役の異動」

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