"マネーブック"から家計簿へ転換(2012年・マネーフォワードの決断)

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論点 初代サービスを撤収して作り直すか
マネーフォワード:業績の推移
売上高(億円)経常利益率(%)
初代サービスを数か月で畳んだうえでの資産管理への転換

何をなぜ決めたか:初代サービスを数か月で畳んだうえでの資産管理への転換

概要

2012年5月、東京都新宿区高田馬場にマネーブック株式会社が設立された。同じ年の12月に商号を株式会社マネーフォワードへ改め、自動家計簿・資産管理サービス「マネーフォワード」の提供を始めた。

設立から7か月で、社名を新しいサービスの名前にそろえたことになる。12月10日には、マネックスグループの完全子会社であるマネックス・ビジネス・インキュベーションを引受先とする第三者割当増資を知らせた。

背景

辻庸介氏は2001年4月にソニーへ入社し、2004年1月にマネックス証券へ出向して2007年7月に転籍した。2012年2月に同社のマーケティング部長兼COO補佐となり、その3か月後に会社を設立している。

設立に加わった瀧俊雄氏は野村證券、市川貴志氏はマネックス証券の出身で、証券会社で個人の資産を扱ってきた顔ぶれがそろった。辻庸介氏が代表取締役社長CEOに就いたのは、商号を改める直前の2012年11月だった。

内容

増資で得た資金は、個人向けの資産管理・家計管理ツールの開発と、ソーシャルネットワークを組み込んだ新しい個人向けプラットフォームの構築に充てるとした。発表の時点の資本金は、資本準備金を含めて4,080万円だった。

サービスの土台に置いたのは、複数の金融機関の口座情報を一か所に集めるアカウントアグリゲーションの技術である。この時点では、家計の記帳を自動にする仕組みと、利用者どうしをつなぐ仕組みの両方を描いていたことになる。

含意

2013年11月には同じアカウントアグリゲーションの技術を法人の経理へ向け、「マネーフォワード For BUSINESS」(現「MFクラウド会計・確定申告」)を始めた。2014年5月には「MFクラウド請求書」が続いている。

2017年9月に東証マザーズへ上場し、その期の2017年11月期は売上高28億円、経常損失8億円だった。2025年11月期には売上高が503億円に達し、外部顧客への売上高502億円のうち360億円(72%)を事業者向けのBusinessセグメントが占めている。

いつ何が起きたか 5件
考察:閉じたのは技術ではなく、その販売方法であった
考察

考察:閉じたのは技術ではなく、その販売方法であった

この判断が示しているのは、撤退の速さそのものよりも、何を捨てて何を残すかの切り分けであった。"マネーブック"が売りにしていたのは資産を見せ合うつながりであり、使われなかったのはその部分に限られる。金融機関へ自動で接続して明細を取り、費目へ振り分けるという裏側の仕組みは、ほとんど使われないまま無傷で残っていた。辻氏が閉じたのは会社が作った技術ではなく、その技術に付けた売り方であったといえる。

設立から半年での作り直しであったから、失ったものは数か月ぶんの開発と、社名に選んだ言葉だけで済んだ。同じ判断を利用者500万人の段階で下していれば、こうはいかない。マネーフォワードは2025年11月期に売上高503億円まで届き、その大半をバックオフィス向けの法人事業が占める。会社の名は残り、名の由来となったサービスだけが最初に消えている。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
参考文献

参考文献

参考
  • マネーフォワード 有価証券報告書 第6期(2017年11月期)【沿革】
  • マネーフォワード 有価証券報告書 第6期(2017年11月期)【事業の内容】
  • マネーフォワード ニュースリリース「第三者割当増資のお知らせ」(2012年12月10日)
  • マネーフォワード 有価証券報告書 第6期(2017年11月期)【役員の状況】
  • マネーフォワード 有価証券報告書 第6期(2017年11月期)【主要な経営指標等の推移】
  • マネーフォワード 有価証券報告書 第14期(2025年11月期)【セグメント情報】
  • マネーフォワード 採用サイト
  • マネーフォワード ニュースリリース「自動家計簿・資産管理サービス『マネーフォワード』、利用者数500万人突破」(2017年4月14日)
  • マネーフォワード ニュースリリース「『マネーフォワード クラウド』、導入法人事業者数10万社突破」(2022年10月17日)
  • マネーフォワード 有価証券報告書【沿革】

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