光通信 HTBエナジーを子会社化 電力取引価格が高騰し新電力が退くなかで電力小売を買い増した判断
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何をなぜ決めたか
- 概要
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2022年、光通信の子会社HBDが、電力事業を営むHTBエナジーを取得した。電力取引価格の高騰で採算が崩れ、事業から退く会社が相次ぐなか、光通信は電力を買い増す側に回った。支払った対価は引き受けた純資産を下回り、2023年3月期に割安購入益3,327百万円がその他の収益に立っている。同じ期、電力小売の中核である子会社ハルエネは売上高114,988百万円に対して当期純損失5,151百万円を出し、純資産は5,819百万円のマイナスだった。
- 背景
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光通信が電力事業を本格化したのは2017年4月で、中小企業と個人に向けた営業網に、通信回線や宅配水と並べて電力を載せた。顧客へ販売する電力は主に市場から調達しており、仕入価格は燃料価格や為替相場に左右される。2021年度後半に電力卸市場の取引価格が上昇し、ハルエネが代理店へ支払った顧客獲得コストの回収可能性が揺らいだ。上昇が2022年6月まで続くという仮定を置いた評価の結果、2022年3月期に契約コストへ1,217百万円の減損損失を計上し、同社の純資産は667百万円のマイナスに沈んだ。
- 内容
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危機への対応は二つに割れた。一つは調達で、2022年3月期は相対取引による調達を増やして電力取引価格の変動リスクをヘッジし、連結の営業利益を前期比19.9%増の83,036百万円(当初公表)へ伸ばした。もう一つは料金で、卸市場の価格を顧客との取引価格へ反映させる比率を上げる契約変更を2023年3月期に実施した。この新プランにより、契約コストの減損は402百万円が戻し入れられている。
ただし痛みは残り、同じ期の法人サービスの営業利益は62.7%減の13,345百万円まで減少した。個人サービスが43.2%増の41,753百万円へ伸びて、これを吸収した。
- 含意
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ハルエネは2024年3月期に売上高110,445百万円・当期純利益7,024百万円へ転じ、純資産1,205百万円で債務超過を解消した。2025年3月期は売上高151,940百万円・当期純利益8,773百万円まで戻している。光通信は同じ期から報告セグメントを組み替え、電気・ガスを独立の区分に立てた。その売上収益は288,498百万円、営業利益は35,442百万円で、いずれもグループのどの区分より大きい。連結の親会社の所有者に帰属する当期利益も2024年3月期に122,225百万円と過去最高を更新した。
いつ何が起きたか 8件
筆者の見解
危機で退くか、拾うか
この判断の核心は、業界全体が損を出して退く場面で、光通信が同じ電力を買い増す側に回った点にある。新電力の総崩れは、営業力で顧客を集めても、仕入価格の変動を吸収できなければ事業が成り立たないことを突きつけた。多くの会社がここで電力から手を引いた。光通信が引き取ったHTBエナジーは、支払った対価が引き受けた純資産を下回り、3,327百万円の割安購入益となって表れている。危機で値の付かなくなった事業を顧客ごと拾うこの動きは、割安な株を長く持つ純投資の発想と根でつながっているとみられる。
もっとも、拾えたのは体力があったからで、拾う判断そのものが結果を保証したわけではない。同じ時期、電力小売の中核であるハルエネは債務超過に沈み、契約コストには1,217百万円の減損が付いた。危機を抜けた実際の道具は買収ではなく、相対取引への切り替えと、卸価格を顧客の料金へ転嫁する比率を上げる契約変更だった。仕入れの変動を顧客と分け合う形に商品を作り替えられたからこそ、抱えた電力が2025年3月期に営業利益354億円の収益源へ育った。危機の逆張りは、耐える構えとひと組でしか成立しない。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
業績の推移
電力事業の取得と危機下の対応
電力事業の取得と危機下の対応
| 科目 | 概要 | 備考 |
|---|---|---|
| 被取得企業 | HTBエナジー㈱ | 電力事業を営む。エイチ・アイ・エスの新電力子会社だった |
| 取得の主体 | ㈱HBD | 光通信の子会社。旧㈱HIKARIプライベート・エクイティ |
| 支配を獲得した期 | 2023年3月期 | 割安購入益を計上した連結会計年度。取得日と取得した議決権比率は開示されていない |
| 割安購入益 | 3,327百万円 | その他の収益に計上。主にHTBエナジーを取得したことで生じた |
| 支払対価 | 7,498百万円 | 2023年3月期に支配を獲得した子会社の合計。HTB単独の内訳は開示されていない |
| 支配獲得時の現金及び現金同等物 | 5,444百万円 | 同じ合計。差引の子会社の支配獲得による収支は2,054百万円の支出 |
| 引き受けた資産 | 13,609百万円 | 流動資産12,806と非流動資産803の合計。同じく支配を獲得した子会社の合計 |
| 引き受けた負債 | 15,433百万円 | 流動負債8,963と非流動負債6,470の合計。負債が資産を上回る |
| 電力小売の中核会社 | ㈱ハルエネ | 売上収益が連結の10%を超える子会社。当時は法人サービスに属した |
| 調達の切り替え | 相対取引 | 2022年3月期に相対取引による調達を増やし、取引価格の変動リスクをヘッジした |
| 料金体系の契約変更 | 市場価格の反映比率を上昇 | 2023年3月期にハルエネが顧客との間で実施した新プラン |
| 契約コストの減損損失 | 1,217百万円 | 2022年3月期。卸価格の上昇が2022年6月まで続くという仮定で評価した |
| 減損損失の戻入れ | 402百万円 | 2023年3月期。契約変更により減損の状況が改善したと判断した |
| 報告セグメントの区分 | 電気・ガス | 2025年3月期に新設。それ以前は法人サービスと個人サービスに分かれた |
出所:光通信 有価証券報告書 第36期(2023年3月期)【その他の収益及びその他の費用】【連結キャッシュ・フロー計算書の補足情報】/第35期(2022年3月期)【重要な会計上の見積り及び判断】
㈱ハルエネの業績
光通信:㈱ハルエネの業績
| (百万円) | 売上高 | 当期純損益 | 純資産額 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 2019年3月期 | 57,341 | △6,814 | △9,647 | |
| 2020年3月期 | 73,877 | 2,376 | △7,685 | |
| 2021年3月期 | 79,928 | △8,352 | △8,337 | 2021年1月の電力需給のひっ迫でインバランス料金が高騰した期 |
| 2022年3月期 | 95,541 | △492 | △667 | 契約コストに1,217百万円の減損損失を計上した期 |
| 2023年3月期 | 114,988 | △5,151 | △5,819 | HTBエナジーを取得。市場価格の反映比率を上げる契約変更を実施した |
| 2024年3月期 | 110,445 | 7,024 | 1,205 | 債務超過を解消した期 |
| 2025年3月期 | 151,940 | 8,773 | 9,978 |
出所:光通信 有価証券報告書 第32期〜第38期(関係会社の状況、主要な損益情報等)
電気・ガスセグメントの推移
光通信:電気・ガスセグメントの推移
| (百万円) | 売上収益 | 営業利益 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2024年3月期 | 209,365 | 28,085 | 2025年3月期の有価証券報告書で組み替えられた前期の数値 |
| 2025年3月期 | 288,498 | 35,442 | 区分の新設後で最初の当期の開示。売上収益は37.8%増、営業利益は26.2%増 |
| 2026年3月期 | 319,571 | 35,848 | 連結財務諸表の数値。第39期の有価証券報告書で照合できていない |
出所:光通信 有価証券報告書 第38期(2025年3月期)(事業セグメント、販売実績)
同じ問いに直面した会社
同じ問いに直面した会社
参考文献
- 光通信 決算説明会質疑応答「2024年3月期 決算説明会 質疑応答」
- 光通信 有価証券報告書「第36期(2023年3月期)【その他の収益及びその他の費用】【連結キャッシュ・フロー計算書の補足情報】」
- 光通信 有価証券報告書「第35期(2022年3月期)【重要な会計上の見積り及び判断】」
- 光通信 有価証券報告書「第32期〜第38期【関係会社の状況】」
- 光通信 有価証券報告書「第38期(2025年3月期)【事業セグメント】」