光通信 株式運用への傾斜 本業で積み上げたストック利益の、上場株の長期保有への振り向け
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何をなぜ決めたか
- 概要
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2019年3月期、光通信が持つ株式は、純投資目的が452銘柄・1,771億円、純投資目的以外が225銘柄・17億円となった。純投資はすべて上場株で、前期の372銘柄・1,088億円から一年で積み増している。純投資目的以外はすべて非上場株で、上場株は1銘柄も残っていない。
同じ期に、フルキャストホールディングス485万株(114億円)、パシフィックネット26万株(2億円)、日本テレホン31万株(1億円)の3銘柄を、保有目的を純投資目的以外から純投資目的へ変えている。上場株を持つ理由は利益を得ることだ、という整理が数字の上で完結した期にあたる。
- 背景
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携帯電話販売の崩壊から法人営業へ回帰した光通信は、通信回線・電力・水・保険など契約後に継続収入が積み上がる商材へ広げ、本業から潤沢な資金を生む体質になった。獲得コストを投じて事業を伸ばす基準は5年で200%、つまり今投じた費用が5年後に倍になって戻ることを目安とし、この利回りを下げてまで規模を追うことはしない。その規律のもとで手元の事業に投下できる獲得コストは年間5〜600億円が限界で、それを超えた資金には置き場が要る。上場株の長期保有は、その余剰資金の運用先として選ばれた。
- 内容
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選別の物差しは、投資先の営業利益に持株比率を掛けた持分営業利益を投資簿価で割ったEarnings Yieldである。事業が安定してキャッシュを生むこと、現金比率が高く借入が少ないなど財務基盤が堅固であること、株価が割安であることの3つを満たす銘柄に限り、余剰資金の範囲で買う。投資額の目標は置かず、割安な銘柄が出たときだけ動く。事業側と同じハードルレートで律し、基準を大きく下回るならコストも資金も投じない。
- 含意
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純投資目的の株式は、提出会社ベースで2019年3月期の1,771億円が最大で、2020年3月期からは持株会社である提出会社と、株式を最も多く持つ子会社に分けて開示される。両社を合わせた計上額は2024年3月期に6,449億円、受取配当金は148億円、評価損益は2,124億円に達した。連結の投資有価証券は2019年3月期の2,343億円から2024年3月期の9,141億円へ増え、資産合計に占める比率は29%から44%へ上がっている。事業会社の資産の4割強が上場株という姿になった。
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筆者の見解
取引のために持つ株から、利益のために持つ株へ
この判断の核心は、上場株を持つ理由を光通信が全面的に置き換えた点にある。多くの事業会社にとって上場株は取引関係を支える政策保有が主で、純投資はその残りにすぎない。光通信は逆で、2019年3月期の純投資目的は1,771億円に対し、純投資目的以外は非上場株だけの17億円しかない。上場株は1銘柄も政策保有に残っていない。余った資金の逃げ場としてではなく、事業と並ぶ資金の使い道として上場株を選んだろう。
もっとも、この構えは事業の利回りを守り抜いた結果でもある。獲得コストを投じて伸ばせる範囲は年間5〜600億円で頭打ちになり、そこから先の資金は行き場を失う。利回りを下げて事業を広げる道を封じたからこそ、余剰資金は別の利回りを探しにいくほかなかった。連結の投資有価証券が資産合計の4割を超えた今、光通信の損益は投資先の業績と株価にそのまま連動する。事業会社の顔と投資会社の顔のどちらが本体なのかは、次の下げ相場が答えを出すのかもしれない。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
業績の推移
純投資と純投資目的以外の区分
純投資と純投資目的以外の区分
| 科目 | 概要 | 備考 |
|---|---|---|
| 純投資目的である投資株式の基準 | 株価の変動または配当による利益 | これを目的とする株式を純投資目的とし、それ以外を純投資目的以外の目的である投資株式に区分する |
| 純投資目的の銘柄数 | 452銘柄 | 前事業年度は372銘柄。すべて非上場株式以外の株式で、非上場株式の保有はない |
| 純投資目的の貸借対照表計上額 | 177,114百万円 | 前事業年度は108,805百万円 |
| 純投資目的の受取配当金 | 2,261百万円 | 当事業年度の合計額 |
| 純投資目的の売却損益 | 1,423百万円 | 当事業年度の合計額 |
| 純投資目的の評価損益 | 47,859百万円 | 含み損益。ほかに減損処理額を331百万円計上している |
| 純投資目的以外の銘柄数 | 225銘柄 | すべて非上場株式。非上場株式以外の株式は1銘柄も保有していない |
| 純投資目的以外の貸借対照表計上額 | 1,687百万円 | 取引の性質や規模、保有に伴う便益とリスクを定性・定量の両面から検証して保有を判断する |
| 純投資目的以外で増やした銘柄 | 3銘柄 | 取得価額の合計は2百万円。増加の理由は信頼関係の構築のため |
| 純投資目的以外で減らした銘柄 | 13銘柄 | 売却価額の合計は273百万円 |
| 純投資目的へ変更した銘柄 | 3銘柄 | 当事業年度中に保有目的を純投資目的以外の目的から純投資目的へ変更した |
| ㈱フルキャストホールディングス | 4,850,600株 | 純投資目的へ変更。貸借対照表計上額は11,447百万円 |
| ㈱パシフィックネット | 266,200株 | 純投資目的へ変更。貸借対照表計上額は280百万円 |
| 日本テレホン㈱ | 315,900株 | 純投資目的へ変更。貸借対照表計上額は144百万円 |
| 連結の投資有価証券 | 234,374百万円 | 非流動のその他の金融資産の内訳。前連結会計年度は163,396百万円 |
| 連結の資産合計 | 804,207百万円 | 前連結会計年度は685,681百万円 |
出所:光通信 有価証券報告書 第32期(2019年3月期)【株式の保有状況】、連結財務諸表注記「その他の金融資産」
純投資目的である投資株式の貸借対照表計上額
光通信:純投資目的である投資株式の貸借対照表計上額
| (百万円) | 提出会社 | 最大保有会社 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2014年3月期 | 108,656 | − | |
| 2015年3月期 | 109,972 | − | |
| 2016年3月期 | 90,817 | − | |
| 2017年3月期 | 60,267 | − | 窓のなかで最も少ない期。ここから純投資の積み増しが始まる |
| 2018年3月期 | 108,805 | − | 第32期の前事業年度欄。第31期の提出時の数値と照合できていない |
| 2019年3月期 | 177,114 | − | 452銘柄。純投資目的と純投資目的以外を区分する開示が始まった期 |
| 2020年3月期 | 69,636 | 133,517 | 提出会社69銘柄・最大保有会社347銘柄。以降は2社に分けて開示される |
| 2021年3月期 | 97,214 | 290,992 | 提出会社91銘柄、最大保有会社365銘柄 |
| 2022年3月期 | 131,743 | 296,333 | 提出会社112銘柄、最大保有会社386銘柄 |
| 2023年3月期 | 18,753 | 468,032 | 提出会社50銘柄、最大保有会社436銘柄 |
| 2024年3月期 | 21,151 | 623,783 | 提出会社46銘柄、最大保有会社549銘柄 |
出所:光通信 有価証券報告書 第27期〜第37期【株式の保有状況】(提出会社および最大保有会社、非上場株式以外の株式)
純投資目的である投資株式の損益
光通信:純投資目的である投資株式の損益
| (百万円) | 受取配当金 | 売却損益 | 評価損益 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 2014年3月期 | 1,299 | 4,960 | 36,907 | |
| 2015年3月期 | 1,778 | 14,199 | 54,011 | |
| 2016年3月期 | 1,614 | 12,110 | 36,203 | |
| 2017年3月期 | 982 | 7,276 | 27,024 | |
| 2019年3月期 | 2,261 | 1,423 | 47,859 | 評価損益は含み損益。ほかに減損処理額を331百万円計上している |
| 2020年3月期 | 4,245 | 26,158 | 10,845 | 提出会社と最大保有会社の合計。以降の期も2社の合計で並べる |
| 2021年3月期 | 5,714 | 7,352 | 102,793 | |
| 2022年3月期 | 9,357 | 6,982 | 119,580 | |
| 2023年3月期 | 11,814 | 8,908 | 75,444 | |
| 2024年3月期 | 14,898 | 30,834 | 212,453 | 受取配当金は2020年3月期の3.5倍。含み損益は2,124億円になった |
出所:光通信 有価証券報告書 第27期〜第37期【株式の保有状況】(提出会社および最大保有会社、非上場株式以外の株式)
連結の投資有価証券と資産合計
光通信:連結の投資有価証券と資産合計
| (百万円) | 投資有価証券 | 資産合計 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2015年3月期 | 124,596 | 396,916 | IFRS移行日(2015年4月1日)の残高 |
| 2016年3月期 | 117,050 | 408,004 | IFRSの比較情報として遡って作成された期 |
| 2017年3月期 | 96,270 | 511,487 | IFRSの初度適用の期 |
| 2018年3月期 | 163,396 | 685,681 | |
| 2019年3月期 | 234,374 | 804,207 | 投資有価証券は1年で709億円増え、資産合計の29%を占めた |
| 2020年3月期 | 268,307 | 972,075 | |
| 2021年3月期 | 455,986 | 1,256,844 | 1年で1,876億円増加。資産合計に占める比率が36%へ上がる |
| 2022年3月期 | 546,182 | 1,451,310 | |
| 2023年3月期 | 654,454 | 1,691,949 | |
| 2024年3月期 | 914,192 | 2,078,956 | 資産合計の44%。投資有価証券は2020年3月期の3.4倍になった |
出所:光通信 有価証券報告書 第30期〜第37期(連結財務諸表注記「その他の金融資産」、非流動の投資有価証券) / 光通信 有価証券報告書 第32期・第37期【主要な経営指標等の推移】(連結の資産合計)
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参考文献
- 光通信 有価証券報告書「第32期(2019年3月期)【株式の保有状況】」
- 光通信 有価証券報告書「第27期〜第37期【株式の保有状況】」
- 光通信 有価証券報告書「第30期〜第37期(連結財務諸表注記「その他の金融資産」、【主要な経営指標等の推移】)」
- 光通信 決算説明会質疑応答「2025年3月期第1四半期決算説明会」
- 光通信 決算説明会質疑応答「2025年3月期第2四半期決算説明会」
- 光通信 決算説明会質疑応答「2025年3月期決算説明会」
- 光通信 決算説明会質疑応答「2026年3月期第2四半期決算説明会」