光通信 ウォーターダイレクトの買収 中小企業向け営業チャネルに水・保険・電力を載せ替える多品目化

更新:

時期 2014年12月
当時の社長 重田康光
論点 多角化と営業チャネルの活用
何をなぜ決めたか
概要

2014年12月から2015年2月にかけて、光通信は保険比較サイトのウェブクルーと宅配水のウォーターダイレクトを相次いで子会社化した。ウェブクルーは公開買付けで議決権90.87%を得て、取得原価13,920百万円に対し10,353百万円ののれんが生じた。ウォーターダイレクトは2015年2月に子会社化し、宅配水事業に配分されたのれんはIFRS移行日で1,960百万円だった。連結子会社は前期末の134社から174社へ増え、総資産はのれんの計上等により前期末比54,536百万円増の393,352百万円となった。

背景

光通信はOA機器と電話機の販売から出発し、中小企業層への訪問販売を軸に商材を重ねてきた。2015年3月期の法人事業は、OA機器や法人向け携帯電話に加え、LED照明・業務用空調機器・太陽光発電システム・ウォーターサーバーといった環境関連商材を訪問販売で扱っている。取次ぎの手数料に頼る販売代理店モデルだけでは収益が積み上がらないため、自社開発商材やMVNO、契約後の継続収益の一部を受け取るレベニューシェア型の獲得を増やし、顧客契約数から生まれるストック利益を積み増していた。宅配水と保険比較は、この積み増しに載せられる商材だった。

内容

ウェブクルーの企業結合日は2014年12月26日、みなし取得日は同月31日で、公開買付けによる株式取得により、結合前に持っていた22.11%へ68.76%を積み増して90.87%を握った。取得原価13,920百万円は、対価13,737百万円に新株予約権の取得費用116百万円とアドバイザリー費用等66百万円を加えた額で、段階取得に係る差益984百万円が生じ、のれん10,353百万円は10年の均等償却とした。受け入れた資産は9,964百万円、引き受けた負債は5,771百万円。ウォーターダイレクトは2015年2月に子会社化し、2017年3月31日現在の議決権所有割合は76.2%、うち間接所有が59.2%である。

含意

宅配水は法人事業に置かれ、資金生成単位としての㈱プレミアムウォーターホールディングスへ配分されたのれんは、IFRS移行日の1,960百万円から2017年3月期に3,951百万円へ増えた。同社を完全親会社、光通信子会社のエフエルシーを完全子会社とする株式交換を実施したためである。

2019年4月からは報告セグメントを法人サービス・個人サービス・取次販売に改め、宅配水は個人サービスへ移った。2020年3月期の個人サービス事業は売上収益105,824百万円、営業利益19,941百万円。回線・電力・宅配水・保険という長期的に安定した収益が期待できる事業の並びに、宅配水は残り続けている。

いつ何が起きたか 8件
筆者の見解
筆者の見解

商品ではなく、営業チャネルを資産と見る

この多角化の核心は、光通信が売る対象を商品ではなく営業のチャネルそのものととらえた点にある。多くの会社は主力商品を軸に事業を組み立て、その商品の需要が細れば業績も細る。光通信は逆に、中小企業や個人へ直接届く訪問販売とテレマーケティングの網を動かない資産と見て、その上に載せる商材をOA機器や通信回線から水・保険へ差し替えた。しかも新しい商材を一から立ち上げるのではなく、事業会社ごと公開買付けで取り込んだ。ウェブクルーの取得原価13,920百万円のうち10,353百万円がのれんだったことは、買ったものが設備でも在庫でもなく、契約から毎月入る収益の源だったことを示している。

もっとも、この型は買った先を作り変えるものではない。宅配水のウォーターダイレクトは社名をプレミアムウォーターホールディングスへ改めたあとも、水を作って届ける会社のまま光通信の議決権76.2%の下に置かれ、光通信が担ったのはその商材を中小企業と個人の玄関先まで運ぶ工程だった。買収は事業を取り込む行為に見えて、実際には自社の営業網に載せる荷物を仕入れる行為に近かったのだろう。何を動かない資産とみなすか——その答えを、光通信は商品ではなく販路に置いている。だからこそ、水が売れなくなっても次の商材を載せ替えれば済む構えが保たれている。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
取り込んだ2社の条件

取り込んだ2社の条件

科目 概要 備考
買収した会社(宅配水) ㈱ウォーターダイレクト 宅配水事業。のちに㈱プレミアムウォーターホールディングスへ改称した
宅配水の子会社化 2015年2月 同じ期に株式の取得で新たに連結子会社となった会社ののれんは合計16,011百万円
宅配水事業に配分されたのれん 1,960百万円 IFRS移行日(2015年4月1日)現在。2017年3月期には3,951百万円へ増えた
宅配水の議決権所有割合 76.2% 2017年3月31日現在。うち間接所有は59.2%で、法人事業に属した
買収した会社(保険比較) ㈱ウェブクルー及び同社子会社9社 インターネット比較サイトの運営、保険代理店業など
保険比較の企業結合日 2014年12月26日 みなし取得日は2014年12月31日。それまでの業績は持分法による投資損失
取得の法的形式 公開買付けによる株式取得 異なる販売チャネルを獲得して相互補完を図ることを、結合の理由に挙げた
保険比較の取得した議決権比率 90.87% 企業結合前に22.11%を所有し、企業結合日に68.76%を追加取得した
保険比較の取得原価 13,920百万円 対価13,737、新株予約権の取得費用116、アドバイザリー費用等66の合計
段階取得に係る差益 984百万円 取得原価と、取得するに至った取引ごとの取得原価の合計額との差額
保険比較で生じたのれん 10,353百万円 取得原価が時価純資産額を上回った差額。10年間にわたる均等償却
受け入れた資産 9,964百万円 流動4,465・固定5,498。引き受けた負債は5,771(流動3,085・固定2,686)
総資産 393,352百万円 ウェブクルーの連結によるのれんの計上等で、前期末から54,536百万円増えた

出所:光通信 有価証券報告書 第28期(2015年3月期)【企業結合等関係】【沿革】 / 第30期(2017年3月期)【関係会社の状況】(のれん及び無形資産)

宅配水事業に配分されたのれん

光通信:宅配水事業に配分されたのれん

(百万円) プレミアムウォーターHDエフティグループ保険見直し本舗 備考
2015年3月期 1,9604,0858,073 IFRS移行日(2015年4月1日)現在の残高。のれん合計は24,216
2016年3月期 1,3794,0858,073
2017年3月期 3,9514,6368,073 エフエルシーとの株式交換により、宅配水ののれんが増えた
2018年3月期 3,9514,6458,073 第32期の比較情報。第31期の有価証券報告書で逐語照合できていない
2019年3月期 3,9514,6458,073
2020年3月期 4,0174,6388,073 セグメントの区分変更により、宅配水は個人サービスへ移った
宅配水事業ののれん
プレミアムウォーターHD(百万円)

出所:光通信 有価証券報告書 第30期・第32期・第33期(のれん及び無形資産、のれんの資金生成単位への配分額)

連結子会社数と持分法適用関連会社数

光通信:連結子会社数と持分法適用関連会社数

(社) 連結子会社持分法適用関連会社 備考
2010年3月期 12193 第23期は連結子会社ではなく「子会社121社」として記載
2011年3月期 117129
2012年3月期 127105
2013年3月期 11684
2014年3月期 13483
2015年3月期 17485 ウェブクルーと同社子会社9社の連結等により、1期で40社増えた
2016年3月期 183101
2017年3月期 195124
2019年3月期 175137
2020年3月期 150129
連結子会社数
連結子会社(社)

出所:光通信 有価証券報告書 第23期〜第33期【事業の内容】

同じ問いに直面した会社
参考文献
出典・参考
  • 光通信 有価証券報告書「第28期(2015年3月期)【企業結合等関係】【沿革】【事業の内容】」
  • 光通信 有価証券報告書「第30期(2017年3月期)(のれん及び無形資産)【関係会社の状況】」
  • 光通信 有価証券報告書「第32期(2019年3月期)・第33期(2020年3月期)(のれん及び無形資産)【事業の内容】」
  • 光通信 有価証券報告書「第23期(2010年3月期)〜第27期(2014年3月期)【事業の内容】」

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