上場子会社を完全子会社化してグループに取り込む資本政策
集めた会社を上場させたまま持つのか、非上場化して束ねるのか——親子上場をどう整理したか
更新:
- 概要
- 2022年以降、光通信が自ら過半を持つ上場子会社を、TOBや株式交換で相次いで完全子会社化した資本政策。2022年に家賃決済代行のシック・ホールディングスをTOBで100%とし、2025年にはザッパラスを株式交換で非上場化した。集めた会社を上場させたまま持つのではなく、本体へ束ねる段階に入った。
- 背景
- 光通信は買収と純投資で多くの会社を傘下に収め、そのなかには自身も上場を続ける連結子会社が並んだ。親会社が過半を握りつつ子会社も上場する親子上場は、少数株主との利益相反やガバナンスの面で批判を受けやすく、上場維持の費用もかさむ形だった。
- 内容
- 2022年1月、光通信は完全子会社HCMAアルファを通じ、保有51.85%のシック・ホールディングスへ1株730円(前日終値に44.55%のプレミアム)でTOBを実施して100%とした。2025年7月には、ザッパラスを株式交換で完全子会社化し、同社を上場廃止とすることを決めた。
- 含意
- ザッパラスの非上場化では、上場維持による独立性や信用力のメリットが十分でなく、上場維持費用の負担が過大であることを理由に挙げた。光通信は、会社を集める段階から、集めた会社を非上場で束ねてシナジーと効率を取りにいく段階へ移った。
上場させる会社と、畳む会社
この資本政策の核心は、光通信が会社の持ち方を一律にせず、濃淡で選び分けた点にある。純投資では、外部の優良企業の株を過半に満たない比率で長く持ち、その利益の取り分を得る。一方、営業網や商材と深く組み合わせられる傘下の会社は、上場を外して100%取り込み、グループの一部として磨く。親子上場を整理して完全子会社化する動きは、この後者の極にあたる。集めた会社群を、投資として持つか、事業として束ねるかを、光通信は会社ごとに仕分けている。
上場子会社の非上場化は、少数株主にとってはプレミアム付きで株を買い取られる出口であり、光通信にとってはグループ統合と費用削減の手段である。両者の利害はプレミアムの水準でぶつかるため、完全子会社化は少数株主への価格の妥当性という課題を常に抱える。それでも、会社を増やす段階を過ぎた企業グループが、抱えた会社をどう束ね直すかという課題は避けて通れない。光通信の上場子会社の取り込みは、拡大してきたグループが成熟期に向き合う整理の一つの形を示している。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
背景
多くの上場子会社を抱えるグループ
光通信は買収と純投資を重ね、連結子会社と持分法適用会社を合わせて200社を超えるグループを築いた。そのなかには、光通信が過半の株式を持ちながら、それ自体も証券取引所に上場を続ける会社が並んだ。家賃決済代行のシック・ホールディングスは、光通信が51.85%を保有する連結子会社でありながら上場していた。親会社と子会社がともに上場する親子上場は、集めた会社を独立の器のまま持つ光通信のグループ運営の一面だった[1]。
だが親子上場には弱点がある。親会社が過半を握る以上、上場を保っても子会社の独立性は限られ、少数株主との利益相反が生じやすい。ガバナンスの面から批判を受けやすく、上場を維持する費用も別にかかる。上場によって得られるはずの独立性や信用力が、親会社の支配のもとでは十分に働かない。2020年代に入り、光通信はこの並びを整理し、過半を持つ上場子会社を丸ごと取り込む方向へ動いた[2]。
決断
シック・ホールディングスのTOB(2022年)
2022年1月、光通信は完全子会社のHCMAアルファを通じて、シック・ホールディングスへTOBを実施した。保有比率を51.85%から100%へ引き上げ、完全子会社化する。買付価格は1株730円で、公表前日の終値505円に44.55%のプレミアムを上乗せした水準である。買付期間は2022年1月19日から3月3日までとした。狙いは、光通信グループ内向けに料金回収の収納代行を営むスマートビリングサービスとの相乗効果にあった。過半を握る子会社の少数株主から株を買い取り、グループへ完全に取り込む一手だった[3]。
ザッパラスの株式交換(2025年)
同じ資本政策は、その後も続いた。2025年7月、光通信はグループの経営管理を担うザッパラスを、株式交換によって完全子会社化すると決めた。光通信を完全親会社、ザッパラスを完全子会社とし、ザッパラスは2025年10月30日に上場廃止、株式交換は同年11月1日に効力を生じる予定である。ザッパラスが光通信グループとの連携をより強め、既存事業に集中して成長を図ることが望ましいと判断した。現金を使うTOBに対し、株式交換は自社株を対価に子会社の少数株主を取り込む手であり、光通信は場面に応じて手法を使い分けた[4]。
結果
集めた会社を束ねる段階へ
シック・ホールディングス(2022年)からザッパラス(2025年)まで、光通信は過半を持つ上場子会社を順に完全子会社化し、グループの並びを整理した。買収と純投資で会社を集めてきた光通信が、今度は集めた会社を非上場で束ね、グループ内のシナジーと統合の効率を取りにいく。少数株主から株を買い取る際には、シックの44.55%のように相応のプレミアムを払い、上場を外すことで維持費用の負担も落とした。会社を増やす動きと、束ねて磨く動きが、同じグループのなかで並行して回った[5]。
この整理は、光通信のグループ運営の成熟を映している。かつては会社を買い、上場も生かして資金や信用を得る使い方をしてきた。だが過半を握る子会社を上場させ続けても、独立性は限られ、費用と利益相反の批判が残る。ならば非上場化して完全に取り込み、グループ内の商材や顧客と組み合わせたほうが効率がよい。純投資で外の会社の利益の取り分を得る一方、傘下に深く入った会社は上場を外して束ねる。光通信は、持ち方の濃淡を会社ごとに選び分けている[6]。