筆者の見解
二つの家業が合流した意味
この決断の中心にあるのは、創業家の家業が大正初期に分岐してから60年を経て、なお別会社のまま競い合う体質をどう解消するかという問いであった。花王という共通の追走目標を持ちながら別法人であり続けた期間の長さは、技術やマーケティングの重複という非効率を生んでいたと思われる。
一方で、海外株主による合併反対は、事業の統合と資本市場の論理が必ずしも一致しないことを示す事例でもあった。小林会長が高値買い取りに"一切相手にしない"と突っぱねた対応は当時としては強気の決着だったが、株式の国際化が進むほど同種の摩擦は繰り返されかねない。歯磨と油脂という異なる企業文化を統合し"全商品でトップ"を掲げたこの決断が、その後のライオンにとってどこまで持続的な競争力につながったかは、合併から数年の業績だけでは測りきれない問いとして残っているといえる。
Yutaka Sugiura, 2026年7月