ロート製薬 「肌ラボ」でスキンケア参入 医薬品の発想の化粧品への持ち込みと、大衆薬への依存からの脱却
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何をなぜ決めたか
- 概要
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2001年、1999年に社長へ就任した山田邦雄氏のもとで、ロート製薬が機能性化粧品への参入を本格化させた。同年にビタミンCにこだわった「オバジ」を発売し、2004年にはヒアルロン酸に徹底的にこだわった「肌研(ハダラボ)」を投入する。
掲げたのは、有効成分を患部に届けるという医薬品の発想をスキンケアで実現することだった。大衆薬に偏っていた収益構造は化粧品との両輪へ移り、スキンケア関連の販売高は2006年3月期に44,391百万円と、全社85,854百万円の52%を占めるまでになった。
- 背景
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1990年代後半、胃腸薬・目薬・外皮用薬といった大衆薬は国内市場の成熟により成長余地が細り、価格と販促の競争が激しさを増していた。ヘルスケア市場そのものは高齢化と健康志向の高まりで重要度を増す一方、業種業態を越えた新規参入で競争環境は一層激化する見通しにあった。医薬品の枠に留まらず「ヘルス&ビューティ」分野で高付加価値製品と新ブランドを育て、その分野でトップあるいは主要なブランドを築くことが課題となっていた。
- 内容
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2003年4月、上野テクノセンター内に第2工場棟を新設してスキンケア関連の生産を開始した。翌2004年に発売した肌研は、無駄なものを徹底してそぎ落とす「パーフェクトシンプル」を掲げ、ヒアルロン酸の保湿力と使用感だけで押した。2005年には化粧水の詰め替えパウチを出している。
ドラッグストアの棚に乗せた効果は数字に出た。スキンケア関連の販売高は2006年3月期に前期比23.0%増の44,391百万円、2007年3月期も15.8%増の51,425百万円と伸び、連結売上高は同じ2期で73,331百万円から95,619百万円へ拡大した。
- 含意
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製薬会社が成功例を持たなかった化粧品参入を、機能性と低価格の設計で成立させた。肌ラボは基礎化粧品5カテゴリーの販売個数で15年連続の首位となり、2022年3月期には日本だけで12,156百万円を売る。海外でも40か国以上へ広がり、海外売上は日本国内売上の1.2倍に達した。目薬と外皮用薬で積んだ皮膚と成分の知見が、そのまま化粧品の訴求へ組み替わった格好である。
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筆者の見解
畑違いを、強みの延長に変える
この判断の核心は、医薬品への依存から抜け出す道を、まったくの畑違いにではなく、皮膚科学という自社の強みの延長に見いだした点にある。製薬会社が化粧品に手を出して成功した例は乏しかったが、ロート製薬は成分の効きに焦点を絞り、無駄をそぎ落として高い機能を低い価格で差し出す設計で参入した。それはドラッグストアという伸びる販路とも合致していた。目薬や外皮用薬で積んだ皮膚と成分の知見を、そのまま化粧品の訴求へ組み替えた——冒険というより、持ち場を横へずらす判断だったとみるほうが正確だろう。
もっとも、少品種に絞って広告を厚く投じ、市場を取るというロート流のモデルは、市場が成熟すればコモディティ化の圧力にさらされる。実際、2017年3月期には競争激化が続くなかで肌ラボは減収に転じ、次の主役を育てる課題が残った。医薬品から化粧品への転換が成功であったことは間違いない。だが、その化粧品もまた、いつか次の主力事業に道を譲る時が来る。強みをどの事業に映し替えていくか——この十年がかりの多角化は、成熟企業が問われ続けるその問いを、化粧品という形で一度うまく解いてみせた事例である。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
業績の推移
参入の条件
参入の条件
| 科目 | 概要 | 備考 |
|---|---|---|
| 参入した市場 | 機能性化粧品 | 有効成分を患部に届けるという医薬品の発想を、スキンケアで実現することを掲げた |
| 先に出したブランド | オバジ(2001年発売) | ビタミンCにこだわり、機能性化粧品の草分けとなるビタミンCブームを起こした |
| 主力に育てたブランド | 肌研(ハダラボ)(2004年発売) | ヒアルロン酸に徹底的にこだわった保湿力と使用感で、瞬く間にトップブランドとなった |
| ブランドのコア | パーフェクトシンプル | 無駄なものを徹底してそぎ落とす考え方。2005年に化粧水の詰め替えパウチを発売 |
| 生産の手当て | 上野テクノセンター第2工場棟 | 2003年4月に新設し、スキンケア関連の生産を開始 |
| スキンケア関連の販売高 | 44,391百万円(2006年3月期) | 全社85,854百万円の52%。前期比23.0%増で、翌期は51,425百万円 |
| 国内での位置 | 基礎化粧品5カテゴリーで15年連続の販売個数首位 | 2007年6月〜2022年5月のシリーズ別販売個数に占める肌ラボの割合(インテージSRI・SRI+) |
| 国内のブランド売上 | 12,156百万円(2022年3月期) | 日本セグメントの商品別売上。コロナ前の2020年3月期を8.7%上回った |
| 海外展開 | 40か国以上 | 海外の肌ラボ売上は日本国内売上の1.2倍。2013年にHada Labo Tokyoとして米国から欧米へ |
出所:ロート製薬 有価証券報告書 第70期(2006年3月期)【沿革】【生産、受注及び販売の状況】/HEALTH VALUES REPORT 2019/ROHTO Well-being Report 2021・2022/2022年3月期 通期決算説明会資料
連結業績とスキンケア関連の推移
ロート製薬:連結業績とスキンケア関連の推移
| (百万円) | 売上高 | スキンケア関連販売高 | 経常利益 | 当期純利益 | 総資産 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2002年3月期 | 62,941 | − | 3,709 | 2,291 | 83,643 | 第66期。2001年4月に始まる期。スキンケア関連の販売高は開示がない |
| 2003年3月期 | 65,923 | − | 6,160 | △1,306 | 78,016 | |
| 2004年3月期 | 67,378 | − | 5,866 | 3,743 | 81,236 | |
| 2005年3月期 | 73,331 | 36,076 | 8,294 | 5,475 | 97,353 | スキンケア関連は有報の逐語で照合できていない(第70期の前期比23.0%増と整合) |
| 2006年3月期 | 85,854 | 44,391 | 9,766 | 6,523 | 112,825 | 肌研の白潤シリーズとオバジが伸び、スキンケア関連が全社の52%に |
| 2007年3月期 | 95,619 | 51,425 | 10,301 | 6,617 | 125,320 | 第71期。スキンケア関連は前期比15.8%増 |
出所:ロート製薬 有価証券報告書 第70期(2006年3月期)・第71期(2007年3月期)【主要な経営指標等の推移】【生産、受注及び販売の状況】
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参考文献
- ロート製薬 株主通信(2009年度)
- ロート製薬 決算説明会資料「2022年3月期 通期決算説明会資料」
- ロート製薬 統合報告書「HEALTH VALUES REPORT 2019」
- ロート製薬 統合報告書「ROHTO Well-being Report 2021」
- ロート製薬 統合報告書「ROHTO Well-being Report 2022」
- ロート製薬 有価証券報告書「第70期(2006年3月期)【沿革】【生産、受注及び販売の状況】【主要な経営指標等の推移】」
- ロート製薬 有価証券報告書「第71期(2007年3月期)【生産、受注及び販売の状況】【主要な経営指標等の推移】【対処すべき課題】」
- ロート製薬 有価証券報告書「第81期(2017年3月期)【業績等の概要】」